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外国人材を受け入れるなら、「違い」に寛容で、太っ腹な日本人であるべき - 第98回田村耕太郎氏(後編)

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シンガポールを拠点に国内外で活躍する田村耕太郎氏に、入管法の改定による国内の外国人労働者の増加、それに伴う国内における文化や働き方の多様化についてお聞きする後編。田村氏はお互いをリスペクトすることや日本的な文化のあり方を見直す必要性を指摘する一方で、日本の国際競争力も評価する。

取材・文/青山敬子 撮影/公家勇人

アジアの人たちは日本を好きなのに…

みんなの介護 昨秋に入国管理法が改正され、日本政府は移民を事実上認めたと言う人もいます。また、今年の1月1日時点での国内の外国人の数が総人口の2%を超え、過去最高になったと発表されました。外国人の数は今後も増えていくことが予想されます。日本人がさまざまな国の人と共生できる社会を実現するためには、どんなことが必要でしょうか?

田村 これからも国内の外国人は定住者や労働者、留学生、旅行者などさまざまな形で増えていくのは明らかですね。特に世界中のすべての民族と宗教と政治体制があると言われるアジアの人たちが、より増えていくでしょう。

これは、同じアジアで距離が近いというのもありますが、アジアの人たちは基本的に日本をリスペクトしているからです。日本は豊かで良い国だと思われているんですね。確かにインフラは整備されているし、食ベ物はおいしいし、商店のサービスもきちんとしています。

また、工業など、製造業の技術レベルも高いです。これは国際社会でもユニークな「日本の良さ」ですね。

これに対して、日本人の言動となると、どうでしょうか。ネット社会でもリアル社会でも、外国人に対するヘイトや労働者の冷遇が問題になっていますね。

私は、国際社会における日本の最大の課題は、「他者に対するリスペクトのなさ」だと思います。日本はまだ均質的で同調圧力が高い社会であり、「違い」を受け入れにくいのかもしれません。違いを認めず、異質なものを排除するのが「いじめ」です。

このリスペクトのなさによって、いろいろと残念な事態が起こる気がします。

みんなの介護 それは、どういうことでしょうか?

田村 外国人をリスペクトせずに「労働力」としてだけ見るなら、日本で働こうと思う人が減ります。アジアの人たちは日本に憧れて来るのに、冷遇されたらガッカリしますよね。

日本では少子高齢化によるビジネスの縮小と労働者の減少を受けて、新しい働き手をアジアに求めざるを得ないのですが、ブラック企業的な労働環境の報道が目立ちます。

日本に来る外国人の皆さんの日本への期待が高ければ高いほど、嫌いになった時の落差はすごいでしょう。最初は残念な事件が続くかもしれません。それらを通じて日本人や日本社会が学んでいけば良いですが…。

それがSNSなどで世界に拡散されれば、日本政府や日本企業が来て欲しい人材が望む数だけ来てくれないケースも考えられます。それでは日本の経済や社会が立ち行かなくなります。

日本の中に「入れてやる」というようなリスペクトのない意識ではなく、日本に「来てもらう」と思って、お互いにリスペクトし合うべきでしょう。「上から目線」で接するのをやめることです。

また、イスラム教など日本に馴染みのない宗教についてもっと知ることも重要です。日本人は神社にお宮参りに行き、教会で結婚式を挙げ、お寺でお墓に入る、くらい宗教に対して寛容というか無頓着というか、そういう状況ですよね。

みんなの介護 言われてみれば、そうですね。

田村 しかし、アジアでのイスラム回帰の方向性などを見ても、アジアの方々の信仰への真剣さは日本人には理解しがたいほど。ですから、ジョークやパワハラで彼らの信仰心へのリスペクトのない行為は絶対にやってはならないことなんです。

問題を未然に防ぐためには人への先行投資がカギ

みんなの介護 文化や信仰は尊重されなければいけませんね。ほかにはどういうことが必要でしょうか?

田村 日本語要件も、もっと現実的にすべきだと思います。職種に応じて必要な日本語能力は変わりますし、テクノロジーが語学力を補い始めるでしょうから、日本語検定に執着するのもどうかと思います。

実習生に関して言えば、自由に出戻りできるようにしてあげた方がいいと思います。期間が来たら退去させて戻ってこられなくするから、地下に潜るのです。

みんなの介護 実習生が行方不明になる事態は既にあちこちで起きているそうですね。

田村 出戻りを自由にしてあげれば、愛する家族がいる故郷と働きたい日本の間を、堂々と行き来することができます。

「実習生」という偽装的な制度や「移民ではない」という言い回しは、政治的な配慮からでしょうし、その背景や理由も理解できますが、今後は堂々と「外国人材」として受け入れるべきだと思います。

そして、問題をできる限り未然に防ぐためには、日本政府や日本企業が、外国人材の入国前バックグランドチェックやトレーニングに投資すべきです。

コストカットばかり考えていると、後で企業や社会に深刻な問題を引き起こします。そうなる前にバックグランドチェックやトレーニングに投資しておくほうが、結局はコストを抑えられるんです。

みんなの介護 確かに、外国人が増えることで治安が悪くなるのではと、心配する人も少なくありませんから、双方にとって意義のあることかもしれません。

田村 人口減少や高齢化により衰退不可避の日本企業や社会には、「先行投資」という余裕があまりないですが、コストカット優先のビジネスは行き詰まるだけです。

一般論として、外国人材を登用するかどうかは別として、今、日本で上手くいっていないビジネスは、人に投資していないことが原因だと思います。

みんなの介護 人に投資をしていないのは、太っ腹さがないからでしょうか。

田村 そうですね。縮小する日本自体が太っ腹さを失っている気がします。リスペクトの背景には太っ腹さが不可欠です。「自分さえよければ良い」「自分たちと同じにしろ!」。その調子で外国人を都合よく利用するだけでは後々深刻な問題が起こるばかりでしょう。

世界にはいろんな意見や常識がある。「違い」に対するリスペクトを持って欲しい

みんなの介護 外国人材の流入は止めることのできない流れですが、職場の仲間として付き合うときに気をつけるべきことは何でしょうか?

田村 日本人に穏やかで礼儀正しく良い人が多いのは事実だと思います。一方で、「答えは一つ」「みんな同じであるべき」みたいな風潮がまだまだあると思います。

いろんな議論があっていいのに、議論にすらならず、「私の答えだけが正しい」となってしまいます。別の意見に対するリスペクトがない人が多い気がします。自分でインテリと思っている人ほど「論破」などという人がいるのも狭量さの裏返しだと思います。

世界にはいろんな意見や常識があるのです。日本の中も多様化せざるを得ないので、早く「違い」に寛容になり、リスペクトを持つ人が増えてほしいです。もっと「太っ腹」になるべきですね。

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