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健康食品大手の「やずや」が利益の薄い書店事業に手を出した理由とは?

今年6月、青汁やにんにく卵黄などでお馴染みの『株式会社やずや』が、カフェや会員制の書斎(月額9,800円~)を併設する書店『やず本や』を福岡市南区にオープンした。

なぜ健康食品大手のやずやが、有料書斎スペースを提供するという一際振り切ったスタンスの書店事業を始めたのか?

やず本やを訪ね、店長の臼杵修さんに話を聞いた。

食品で「カラダ」、本で「ココロ」を健康に

店に着くとすぐ目に入るのは、大きな青いロゴの暖簾だ。建物は1階が書店とカフェ、2~3階が会員制の書斎になっている。 以前は本社ビルとして使用していたとのことだ。


やずやが書店事業を選んだ背景には、社内での面白い取り組みが関係しているという。

「”毎朝15分間本を読む”というやずや社内の取り組みから、知識や発見を満たしてくれる本でお客様に豊かな人生を提供したいと思い、本屋のオープンに至りました。

これまで、健康食品でカラダの健康はサポートできていても、ココロの健康にはアプローチできていなかったんです。本を読むという行為自体がとっても健康ですよね。漫画でも、雑誌でもいいんですよ」

やずやが作った書店というと健康専門書ばかりが置いてありそうだが、やず本屋には漫画や絵本、小説やビジネス書までが幅広く揃えられている。都心にある大型書店をギュッと小さくしたような印象だ。

身体にまつわるセクションに青汁を並べるなど、やずやならではの本棚に仕上がっている

「本のラインナップは大きく2つのコンセプトに分かれていて、中央にある棚は一般的な雑誌や新刊を置いています。壁面はNUMABOOKSの代表・内沼晋太郎さんと手を組んで、やず本やならではエッジの効いた本棚をつくりました」

“本のイートイン”ができる環境へのこだわり

カフェスペースは店外にあり、お洒落で座り心地の良いイスがずらりと並ぶ。

「普通は、家に帰ったり、カフェに入ったりしてから読む人が多いと思いますが、本を読んで帰る本屋=“本のイートイン”を目指しているので、居心地のいい環境づくりにはこだわっています。そのために、置いてあるイスやテーブルは国外からセレクトしました。

都会の喧騒から少し離れた南区ならではの開放感と、美味しいコーヒーを味わいながらの読書は最高ですよ。朝はランニングの途中にカフェで青汁を飲んでいかれるお客様もいらっしゃいます」


カフェメニューも充実していて、コーヒーの焙煎大会で優勝した経験があるオーナーが営むカフェ「COFFEEMAN(コーヒーマン)」の豆を使って淹れたコーヒー、九州の高級茶葉専門店「山科茶舗」が手掛けるオリジナルの煎茶、全国誌『おとなの週末』でお取り寄せ日本一に輝いたブランジェカイチとコラボした青汁メロンパンなどが揃っている。

有料書斎の会員になるとコーヒーとお茶が飲み放題になる。テイクアウトもOK。


自分だけの時間を堪能できる贅沢な空間

会員は、会員証でチェックインし、書店の奥にあるエレベーターから書斎スペースに上がる。2階はラウンジ、3階は個室を中心に構成されている。新書はもちろん貴重な古書、洋書を含め置いてある本はすべて読み放題だ。


2階にはお昼休憩や打ち合わせなどに使えるよう、カフェのような席が設けられている。広めのテーブルは、パソコンや資料を広げて勉強するのにも丁度良い。




3階は仕事や読書に集中できるよう、パーソナルスペースを広く取ったデスクや個室が用意されている。周りの音を遮断するイスや高級レザーを使用したイスがセレクトして置いてあり、1脚1脚にこだわりが見える。


個室では人目を気にすることなく読書に集中できる

1席に1つのコンセントプラグが配置されているため、パソコンを使う作業や充電する際に隣の人と取り合いになる心配もない。会員はWi-fiも利用可能。

会員制の有料書斎を設けた理由

しかしなぜ、有料書斎を設けることになったのだろうか。月額9,800円という料金設定も決して安くはない。

「本は利益が出にくいので、町の本屋さんがどんどん潰れていっているんです。例えば、コミックを1冊売っても70円くらいにしかならない。そこで、利益が生まれる本屋を作ろうと思いました。

有料の書斎があれば、本の売上以外のところで利益が生まれます。利益が生まれると、売れ筋商品ばかりではなく、“店主のオススメ”を置いて、売りたい本を売れるようになります。個性のあるラインナップをつくることができればファンが生まれる、ファンが会員になってくれると利益が生まれて、継続的に営業していくことができるんです」

店長の臼杵修さん

臼杵さん自身も大の読書家で、本社勤務をしていたころは毎日本をオススメする社内報を書いていたそう。「『やず本や』で新しいビジネスモデルを確立し、町の本屋が増えていって欲しい。南区を東京の本の街、神保町のようにしたい」と野望を語ってくれた。

栄養を効率的に取ることができる健康食品と、買い物を効率的にする通信販売を極め尽くしたやずやが、利益の出にくい本を店舗で売るというところにも面白みがある。今後の展開にも、期待が高まるばかりだ。【中田凌子】

やず本や
・住所:福岡県福岡市南区大楠1丁目34−16
・TEL:092-534-0828
・営業時間:7:30~21:00
・休日:不定休
・席数:約100席
・会費:月額9,800円(税抜)~
・公式サイト https://www.yazuhonya.com/

*本の購入金額に応じて書斎のビジター利用も可能
1000円~ 1時間
3000円~ 3時間
5000円~ 1日

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