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ビジネスの目的は「顧客体験の最高化」。それを忘れなければまだまだチャンスはある - 第98回田村耕太郎氏(中編)

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日本の経済力が低迷を続け、国際的な競争力も落ちている中で、日本が生き残るための方向性が模索されている。こうした事態を受けて、田村氏は企業が顧客に寄り添うことが必要だと指摘する。中編では「日本のこれから」について伺った。

取材・文/青山敬子 撮影/公家勇人

顧客に寄り添うことで新たなビジネス展開は期待できる

みんなの介護 世界から見た日本は既に経済大国ではなく、国際競争力が格段に落ちたと言われて久しいです。今後も生産年齢人口の減少によって経済が縮小する一方で、社会保障費も増大していきます。このような状況から日本が復活するためには、何が必要でしょうか?

田村 日本の経済や企業の凋落の背景には、私は「顧客を無視した技術志向」や「顧客が求めない極端なこだわり」や「単なる自己中心的なコストカット」があり、それに驕(おご)る会社が衰退しているだけではないかと思います。

テクノロジーは未来を明るくするためにあると思いますが、それを使ってビジネスにするには、やはりビジネスの原点である「徹底的に顧客に寄り添い、顧客を理解してプロダクトやサービスを創る」ことが最も重要だと思います。つまり、顧客へのリスペクトですね。

例えば、アメリカや中国やインドで注目されている企業を見ると、作業の効率やスピードも大事にしていますが、それらはあくまで手段やプロセスに過ぎないんですね。

彼らの目的は、あくまでも「顧客の体験の最高化」なのです。

そのために、問題を早く正確に把握しそれを実現するためにテクノロジーがあり、だから当たり前にOMO(オフラインとオンラインの融合)が起こっていくわけです。

われわれのようなOMOに出遅れ気味の日本人は、OMOの「先にあるもの」を見失わず、「常に顧客に寄り添い、できるだけ早く正確に顧客の体験の最善化」を目指していかねばならないと思います。

また、ビジネスの原点である「徹底的に顧客に寄り添って理解してプロダクトやサービスを創る」ことも重要ですね。

自分の経験を生かして企業したケアドットコムの創業者

みんなの介護 顧客に寄り添うのはビジネスの基本だと思うのですが、それが今の日本ではできていないのでしょうか。

田村 そういう企業もありますが、縮小する市場でもまだビジネスチャンスはいくらでもあります。本当に成長するビジネスとはたいていレッドオーシャンの中にあったりするんです。

例えば、私の友人のシーラ・マルセロという女性は「ケアドットコム(Care.com)」という、子育てと介護の紹介ビジネスを起業して、世界で成功していいます。

ベビーシッターや介護をしたい人と、来てほしい人をオンラインで結びつける会社です。利便性が受けて16ヵ国で1,000万人以上が使うサイトとなり、ニューヨーク株式市場にも上場しました。

みんなの介護 ベンチャー企業から始めて上場とは、素晴らしいご活躍です。

田村 そうですね。男性優位のシリコンバレーで女性テクノロジー起業家として上場したのは彼女くらいです。彼女とは彼女が成功するだいぶ前にある国際会議で知り合ったのですが、日本へのビジネス進出もお勧めしたほど。今はタイミングを見ています。今も忙しいのに、いつもとても前向きで明るく、私のことも助けてくれます。そういう性格もビジネスの成功を支えていると思います。

もともとケアドットコムは、彼女のニーズから生まれました。

彼女は学生時代に2人の子を授かりましたが、お父さんが心臓発作で倒れてしまいました。育児と介護、家事をサポートしてくれる人のいない彼女は、とにかく勉強させられるアメリカの大学で膨大な課題をこなしながら、2人の子どもたちを育て、父親の介護もしたんですね。

こうした自分の経験から、子育てや高齢者介護、ペットのケア、家庭教師、ハウスキーピングなどについて、必要なときに必要な場所でケアしてくれる人を探し出せる市場のニーズが必要なことに気づき、起業したのです。

ベンチャー業界的には育児や介護は地味なジャンルなので、当初は注目されなかったようですが、今では多くの人の役に立つビジネスとして成功し、グローバルに急成長しているのです。彼女は勉強しながら子育てと介護のダブルケアをやりとげるどころか、さらにそれをビジネスにした「太っ腹母ちゃん」でもあるのです。

日本でも家事や育児・介護はアウトソーシングするようになるだろう

アメリカでは育児や家事のアウトソーシングは一般的で、紹介サイトや関連企業もたくさんあると思います。ケアドットコムは、どういった点で評価されているのでしょうか。

田村 ケアドットコムの場合は、他人を家に入れるのですから、実名と顔写真、自宅の住所のほか年齢や職業の経験年数、関連する資格の有無、そして勤務可能な時間帯などのレビューを会員が見られるようにしています。

また、しっかりとインタビューを行い、犯罪歴などのバックグラウンドチェックもしています。人材トレーニングをフィリピン財閥と一緒にやっていますが、ここの人材トレーニングは素晴らしいんです。掃除、洗濯、料理などプロとして素晴らしい施設で訓練されています。

日本でもベビーシッターによる殺人事件なども起こっていますからね。こうしたところは厳しくチェックしているのです。

みんなの介護 日本でも育児や家事の代行ビジネスの市場は広がるのでしょうか。

田村 今の日本の家は、メイドも一緒に住む設計でないところがほとんどですから、課題はあります。供給側も認可された大企業が正規雇用して顧客に派遣する仕組みとなっていて、今のところはメイド派遣企業の負担が少なくないです。

一方で、子どもと一緒にいる時間を増やすことで、子どもたちが生き生きする社会にするために家事を任せることなどはあり得るのではないでしょうか。そうすれば無駄のないマッチングが行われ、単価も下がって、供給側企業の負担も下がってくるでしょう。

その結果、子育てにも間接的に効果があると思いますよ。フィリピン人のメイドだと英語での会話になりますから、異文化にふれる機会にもなります。

フィリピンのメイドは家事のプロフェッショナルとしてトレーニングされている人も多く、料理はもちろん「このタイプの絨毯にはこの洗剤を使う」などの知識をちゃんと持っています。看護師の資格を持っている人だって多いんです。

日本も若年労働者が減る中で、家事や介護は外国人の手に頼らざるをえなくなりますから、代行サービス市場も徐々に変わってくると思います。

みんなの介護 確かに介護業界でもベトナムやインドネシアなど海外との連携も始まっています。

田村 介護や家事だけでなく、いろんなことに人力が必要です。いくらAIが発達したとしても、外国人に来てもらうことは不可欠です。

もちろん働き手としてだけでなく、観光客として来てもらうことも重要ですよね。これから少子高齢化がさらに進めば空き家も増えますから、外国の方が夏や冬の間だけ過ごす別荘として家を提供するなど、新しいビジネスも生まれてくるでしょう。

働かなくても日本で過ごす人が増えれば、消費も増えます。人間関係が広がって、地域の担い手になってくれるかもしれません。リスペクトを持って海外の人とも接してみてはいかがでしょうか。

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