- 2019年10月02日 14:33
半径5メートルの違和感を声に出したら、社会のデザインにつながった。
2/2子連れ乗車を経験した人たちを中心に1000件を超える回答が寄せられました。
都内なので、人が多く、利用者のマジョリティである「健康で五体満足な成人」をベースに作られている駅構内のデザインや、歩くスピードに、幼児たちを適合させるのに本人も親も苦労する。(アンケートの回答から)
子供が2才になりたてのとき車両内で騒いだら、初老の男性に頭ごなしに怒鳴られたのがトラウマになっています。(同)
アンケートをもとに、東京都知事に「通勤ラッシュの時間帯の電車・地下鉄での(障害を持つ人も含む)子育て応援車両の設置」を求める要望書を提出しました。都の対応は早かった。私たちが要望してから半年ほどで、都営大江戸線で通勤時間帯でも子連れで利用できる「子育て応援スペース」のある車両が走り出しました。

子育て応援スペースのお披露目の際、息子たちと一緒に試乗する平本さん(中央)=本人提供
ものづくりから、社会づくりへ
子どもを産んでからいろんな人たちとつながって、私なりのやり方で社会デザインを作る活動をしてきました。その前の自分と比べたら、ずいぶん変わったように見えるかもしれない。でも、よく考えたらつながっている。
新卒で入った製造コンサルティングの企業で、たまたま3Dプリンタの法人営業を担当していたのがきっかけで、自分で3Dプリンタを動かして小物やアクセサリーをデザインして作るようになった。私みたいにものづくりと縁なく生きてきた人でも、デジタル工作機械で自分が欲しいと思うものを手に入れられたら素敵じゃないか、と。
そこから「ものづくり系女子」という自主活動を走らせてきました。全国の200人の女性たちとデジタル・ファブリケーションを広げたり、3Dプリンタのハンドブックを書いたり、総務省の「異能vation」プロジェクトに採択されたり。

「ものづくり系女子」の活動をしていたころから「思いを言葉にして、言葉をカタチにする」と言い続けてきました。デジタル工作機械という道具なら私の思いは「モノ」になったけれど、SNSなど、人と人をつなげる道具が普及したら、組織に属さない個人でも、思いが社会をデザインできるようになった。
例えばTwitterの140字に自分の思いを綴って「この指とまれ」と呼び掛けて、共感が広まれば志を同じくする人たちとすぐにつながれる。ポチっとクリックすれば電子署名もできて、ネットアンケートで多くの人の実情がすぐに集まってくる。そうやって思いが言葉になって、社会のデザインにつながる。スケールは違うけれど、ある意味プロダクト(モノ)を作るプロジェクトみたいに、ソーシャル・アクションを進めている感覚がしっくりきます。
プロダクトはやはり「かたち」が求められますが、ソーシャル・アクションは最終的に、限りなくインフラに近付いて、人々には意識されなくなるのがゴールなんだと思います。

企業勤め、共働きという文脈で「女性の活躍」が語られている。暮らし方も働き方も、私はほとんど当てはまらない「はずれ値」です。だから今の私にはぴったりハマるロールモデルがいない。
いろんな価値観があるなかで、少しずつ社会が変わっていく。私がこんなふうに活動し、生きていくことが、もしかしたら誰かの「つぎはぎ」の一部になり、パッチワークみたいなロールモデルになれるのかもしれません。
取材・文: 川崎絵美、錦光山雅子 撮影:川しまゆうこ

平本 沙織 ひらもと・さおり=日本女子大学家政学部家政経済学科卒業。女子大生から丸の内OL、2度の転職と夫婦起業を経てソーシャルアクティビストとして活動。2016年生まれの息子がいる。3Dプリンタ専門家、拡張家族実験プロジェクト「Cift」メンバー。「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」発起人、「子連れ100人カイギ」実行委員長、「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」代表。
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