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関電は理不尽な"時限爆弾"にどう対応すべきだったのか?~ビジネスパーソンの言語学64


最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座64、いざ開講!

「先生は地元で大変な有力者で、とても返せるような状況でなかった」ーーー関西電力の役員ら20人の高浜町元助役からの金品授受問題について語った八木誠会長

もしあなたが同じ立場だったら、毅然と断ることができるだろうか? 

福井県高浜町にある高浜原発をめぐり、関西電力の役員ら20人に13年間にわたり計約3億2000万円分の金品が渡されていた問題。渡していたのは、高浜町の元助役で地元の実力者。高額の商品券や現金、ゴールドやスーツの仕立て券などを役員への就任祝いなどとして渡し、地元の関係企業への受注を促したという疑いが持たれ、批判が高まっている。

受け取った関電役員たちもリスクは承知していたが、断るに断れなかったというのが実情のようだ。

「受け取りを断ると、激高された」「原子力を動かすには地元の協力が欠かせない。先生は地元で大変な有力者で、とても返せるような状況でなかった」(関電・八木誠会長)

「対応する人間としてはご本人との関係が悪化した場合、原子力事業に影響があるのではと、受け取ったときに逡巡(しゅんじゅん)したという認識」(関電・岩根茂樹社長)

あくまでも単純計算だが、3億2000万円を20人で受け取っていたとして、一人当たり1600万円。これを13年間にわたって受け取っていたとすると、年間100万円強だ。その程度の金額で高額報酬の関西電力の役員が自らの座を危うくするとは考えづらい。もちろんその資金の元手が原発工事の受注業者であり、そこに電気料金はもちろん税金まで投入されていたことを考えると許されることではない。

関電は便宜をはかったことについては否定しているが、当該企業の受注額がこの数年でうなぎ登りに伸びているのも事実だ。無理矢理に恩を押し付け、暗に報恩を強いる高浜町元助役のやり口はヤクザ的で、あまりにも理不尽だ。関電側も「返せるタイミングで、返していく努力をしてきた」「持ち帰らず金庫に保管した」「直接受け取ったが、中身は確認していない。開封していない」(岩根社長)というから、扱いに苦慮していたのだろう。だが、その金庫にしまい込んだ理不尽な“時限爆弾”は、税務調査によって爆発することになってしまった。

東日本大震災以降、原子力発電に対する風当たりは強い。そんななかで発覚したこの問題が引き起こす波紋は、決して小さくないだろう。

「関電と同じことをやっていると思われ、怒りを感じる」(大手電力会社幹部)

元助役がすでに故人となっているため、全容解明は難しいだろう。だが、たった3億2000万円で、関電、高浜原発、そして高浜町は、信頼というあまりにも大きなものを失った。役員個人に対する株主代表訴訟になれば、個人的な資産で補償しなければならない可能性もある。もし関電役員と同じ立場だったら……やはり爆弾を手にしたら、すぐに処理すべきだろう。多少のやけどは負うかもしれない。それでも数年後に大爆発を起こすよりもずっと賢明かつ安全な処理方法であることは間違いない。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images

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