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自分の人生を主体的に生きるためには、まず「自分自身」として存在すること - 第98回田村耕太郎氏(前編)

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ベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな―人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法』(朝日新聞出版、2014年)の著者であり、現在はシンガポールを拠点に国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授や、米中のユニコーン企業への投資家やグローバル企業のアドバイザーなどとして国内外で幅広く活躍する田村耕太郎氏に、国内で進む高齢化と国際化・多様化、それらを踏まえた働き方などについて伺った。

前編では経済的に縮小し続ける日本での働き方への提言を紹介しよう。

取材・文/青山敬子 撮影/公家勇人

将来を嘆くよりも現在を見つめる

みんなの介護 「人生100年時代」と呼ばれる昨今、多くの企業が導入している「60歳定年制」の見直しも進められています。政府は5月に70歳定年制を努力義務化する方針を示しました。寿命とともに就労年齢が延伸する一方で、企業の寿命はより短くなってくると言われています。かつては最初に入社した会社で定年まで勤めあげるのが一般的でしたが、こうした働き方はむしろ珍しくなりつつあります。こうした日本人の働き方について、どのようにお考えでしょうか?

田村 国内では、「2025年問題」や「2040年問題」など未来に関するいろいろな問題が指摘されていますね。同じ会社で定年まで働く人も減っています。

でも、先のことを心配し過ぎて暗くなるのが一番いけません。人間は幸福を感じられないと、ストレスから不健康になりがちです。暗くなる暇があったら自分になりに対策を考えて実行に移しましょう、と言いたい。

みんなの介護 田村さんと言えば、証券マンから政治家、そして現在は研究者と、華やかなご経歴をお持ちです。田村さんが思う、これからの働き方とはどのようなものでしょうか。

田村 そうですね、人生には、常にバックアッププランが必要だと思います。「何か」や「誰か」に依存して思考停止に陥らずに、自分で考えていくべきです。頼りきって依存しているだけでは、何かトラブルがあった場合に対処できませんから。そのときに「裏切られた」と思っても、もう遅いのです。

自分の人生を主体的に生きるためにも、自ら主導権を取るようにオプションを持って行動していくべきです。心配して落ち込むような時間はありません。自分なりに常にバックアッププランを練って行動して、それでもダメだったら後悔はしないでしょう。大丈夫、なんとかなりますよ。

みんなの介護 確かにポジティブに考えて努力していくことは大切だと思いますが、一般の人はどのようなことに気をつければ良いでしょう?

田村 まずは、ある種の「起業家精神」を持つことだと思います。これは、皆がスティーブ・ジョブズのようなカリスマ経営者になって、「世界を変えよ」と言えという意味ではありません。

組織に頼らず、「当たり前」に自分自身や家族を養えるような精神を持って生きていけば、急激な変化にも対応できるでしょう。常に自分が最も役立つ形を考える、つまり自分を高く売ることを、考え抜き実行していきましょう。

将来的に日本の企業のすべてが死滅するわけでありませんが、生き残る会社は事業形態も組織もメンバーも大きく姿を変えていきます。

そうなってくると、組織に残ろうが叩き出されようが、「もっと多くの人の役に立つ存在」であることが求められるようになると思います。

まずは「自分自身」であること

みんなの介護 今すぐに日本人がそういう存在になるためのハードルは高そうです。

田村 千里の道も一歩からです。今世界で大成功している人もすべて一歩から始めたのです。大丈夫です。KFCの創業者のカーネル・サンダースがKFCを創業したのは62歳です。何事も遅すぎることはないのです。まずは自分が何をしたいのか、何ができるのかを考えることでしょうね。周囲の評価ではなく、「自分自身」として存在してください。

私の娘はシンガポールのインターナショナルスクールに通っていますが、学校で子どもたちが最初に教わるのは、「自分自身でありなさい」ということ。「誰かの期待に応える自分を演じないように」と言われるんです。

みんなの介護 日本では、まず「周囲から期待されるような人になりなさい」と教わりますから、真逆ですね。

田村 そうですね。国際社会では、周囲のためではなく「自分自身でいること」が重要視されます。「自分自身として他人の役に立つこと」です。

そして、「自分は何がしたいのか?」「自分の価値とは何なのか?」「どうやったら多くの人の役に立てるのか?」というふうに考えていきます。

娘の通う学校には約80ヵ国 のさまざまな国籍・文化の子どもたちが集まっています。両親の国籍はもちろん、生まれた国と育った国、現在暮らしている国が異なっている子どもも珍しくなく、いわゆる「日本人」というようなくくり方はできません。大半の日本人は日本で生まれて育って、日本人同士で結婚しますが、こうした例は国際社会ではほとんどないんですね。

娘たちには「アメリカ人」とか「白人」とかいう概念もなく、そこにいるありのままの友だちを受け入れます。もちろん子どもだからケンカもしますが、水泳などのチームでは泳げない子どもをフォローする。泳げるようになったら一緒に喜ぶ。そうして他者を祝福できるようになるんですね。

親や子どもの数だけ教育もあり方が違うと思いますが、周囲を気にせずに自分がしっかりしていれば、他者も尊重できるのではないでしょうか。

とはいえ生徒たちみんなが違う方向を見ているから先生は大変だと思いますし、私も親として大変ですよ。宿題をやるように言っても、やらないんです。それで、「これが私なの」って言われちゃいますからね(笑)。

みんなの介護 国際社会で競争力をつけるためには、必要な教育ですね。

田村 日本でも、次世代にはこうした教育が注目されると思います。小さな頃からこうした教育を受けていれば、トラブルがあっても自分でなんとか道を見つけていけるでしょう。

今までの日本の教育とは、偏差値や効率の良さだけを重視するもので、子どもたちは親や教師の意向、世間の評価などで学校や就職先を選んでいました。自分で進路を決められないんですね。

でも、これから既存の、大丈夫だと思われた組織こそ大丈夫でなくなっていきますから、これでは通用しません。生まれてから自分と向き合うことなく、学校や企業に忠誠を誓って頑張ってきた人たちが追い出される日が来るかもしれません。

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