- 2019年10月02日 06:15
世界から見た日本の"PTA強制文化"の異常性
2/2■運営経費の9割が宝くじの収益金から
お会いしたのは、トゥイヤ・メッツォさんとアンリ・レヴェーラハティさん。スペシャル・エキスパートという肩書のメッツォさんは20年、組織活動エキスパートのアンリさんは8年、「親達の同盟」で働いている。とてもフレンドリーで、エネルギー溢れるお二人である。現在、10人のスタッフがいて、同盟長を含む女性8人、男性2人の構成である。
そのうち6人がパーマネントのポジションで、4人は、3年間のプロジェクトの助成金を得て勤務している、任期付きのポジションである。
「親達の同盟」を運営するための経費であるが、その90%は、宝くじの収益金から来ているという。宝くじの収益は、社会福祉保健関係、文化・芸術・学術、スポーツ、青少年関係、馬術や馬のスポーツ競技などに使われる。また、教育庁といくつかの財団からも少し予算を得ている。毎年、申請する必要があるが、ネットで行うので、手間はかからない。「親達の組織」には、会費を取る所と取らない所がある。会費を取る組織があっても、全額、自分達の活動のために使う。その一部が「親達の同盟」に上納金として流れることはない。会計報告は、毎年出している。
■日本のPTAとの決定的な違い
さっそく、お二人の話に入ろう。「親達の組織」は、保育園から高校まで作ることができる。必要があれば作る任意組織なので、作っていない所も多い。親達の同盟のホームページは、組織を作る際の参考として、モデルとなる規約を掲載しているが、このような活動をすべきというような指示は出していない。親・保護者が、その時点で必要と考えること、関心のあることを行っている。親が学校に関心を持ち、学校と関わることが重要で、それをどう行うかは自由である。
現在、フィンランドの約78%の小中学校で、定期的に「親達の組織」の活動、あるいはそれに相当する活動があるという。つまり、「親達の組織」はないが、親が何らかの活動を行っている学校もある。
「親達の組織」がある学校に子どもが入学しても、親は自動的に組織の会員にはならない。加入できることは知らされるが、勧誘はなく、まして強制されることはないという。私は、会員だったことは1度もないが、会員になれと言われたことはない。
■加入率は10%程度
「親達の組織」の約40%は、法人として登録され、組織法に準拠している。それは、会員名簿の作成を義務づけているが、情報を渡したくない親もいるため、必ずしも作られていなかったり、作られていても会員全員を記載していなかったり、情報が欠けていたりする。また会員名簿は、「親達の同盟」には来ないので、個々の組織の会員数は、わからない。組織によっても異なるが、会員数は多くて30人位だろうとのことである。フィンランドの学校の生徒数は、学校によっても異なるが、多くて30人位というのは、割合にすると恐らく10%程度の加入率になると思われる。PTAの発祥の地・アメリカでも、入会率は約20%と言われる。
名簿はなくても活動できるので、実際には問題はないという。また、親が会員かどうかで、子どもを差別したり、子どもへの対応に影響したりすることはない。フィンランドでは、いかなる理由であっても法律で差別が禁じられている。まして、保護者組織は、関心のある親が任意で子どものための活動を行うので、親も子も全員歓迎である。関心のある催しやイベントだけに参加して、他のことはしない人も多いが、それも問題ないという。私も、会員だったことはないが、「親達の組織」の集いやバザーには行っていた。
■活動は強制ではなく「提言」
「親達の組織」は、家庭と学校のコミュニティ的な繋がりを作ること、子どものウェルビーングを高めること、一緒に活動することなどを第一の目的とする。学校は、学習のためだけにあるのではない。子ども達が、快適に過ごせるような環境作りが大事である。校庭でバーベキューをしたり、スポーツや音楽のイベントを開いたり、クラスで、近場への遠足に行くこともある。フィンランドでは、学校行事が少ないので、親がボランティアでこうした活動を行うことで、良い環境作りに加わることができる。

岩竹美加子『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』(新潮新書)
保護者向けの活動としては、「親達の夕べ」がよく開かれている。仕事を終えて帰宅した夕方、親が学校に集まって、関心のあること、気になることなどについて話し合う。講師を呼んで話を聞き、その後、話し合うこともある。問題があって、何かを変えたり、影響を与えたりしたい場合も、「親達の夕べ」から始めることができるという。
最近は「親達のチーム」を提言している。「親達のチーム」は、クラスでの活動で、先生や学校の様子を知り、関心を持ち、親同士が知り合い、家庭と学校の間の繋がりを作ることができる。クラスが、小さなコミュニティになり、安心と安全のネットワークになるという考えである。
「親達のチーム」として構想しているのは、1クラス(20~25人)の中から、3~6人の親を中心に、活動を行うアイデアである。任意でいろいろな活動を企画、主催する。具体的には、物語を子ども達と一緒に読む「お話クラブ」、料理、自転車の手入れや修繕、遠足などがあるという。そのための、役割分担と定期的なミーティングを行う。
「親達のチーム」は、移民の子どもにも配慮している。異なる環境での学校生活の支援、フィンランドで学校と家庭の間の連絡に使われているネットシステムの使い方の支援、移民の親支援などを行っている。アルバニアのお話クラブなど、移民の子どもの出身国に関するものもある。
「親達のチーム」のような活動は、日本でもされているだろう。しかし、フィンランドでは、これがクラスで提唱されている活動で、他に活動や動員はなく、ややこしいことは何もないという点が異なる。
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岩竹 美加子(いわたけ・みかこ)
ヘルシンキ大学非常勤教授
1955年、東京都生まれ。早稲田大学客員准教授、ヘルシンキ大学教授を経て2019年6月現在、同大学非常勤教授(Dosentti)。ペンシルベニア大学大学院民俗学部博士課程修了。著書に『PTAという国家装置』、編訳書に『民俗学の政治性』など。
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(ヘルシンキ大学非常勤教授 岩竹 美加子 写真=iStock.com)
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