- 2019年10月01日 19:15
なぜ各国の代表は16歳の少女に圧倒されたのか
1/2「すべての未来の世代の目はあなた方に向けられています」
あのアメリカのトランプ大統領もたじたじだったし、日本の環境相として国際社会の檜舞台に立った小泉進次郎氏も存在感がなかった。
9月23日、ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」で演説した、スウェーデンの高校生環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)のことである。彼女の演説はほかのだれよりも注目を浴び、各国の政府代表はみな圧倒されていた。

「私たちはあなたたちを見ている」
「すべての未来の世代の目はあなた方に向けられています。私たちを裏切るなら決して許しません」
「もう逃がさない」
各国代表に力強い口調で訴えかけ、早急な温暖化対策を求めた。とても16歳の少女とは思えない。感激屋の沙鴎一歩は仕事場のテレビで演説の様子を見ていたが、彼女のストレートな怒りに思わず涙が込み上げてきた。
「きれいな空気や水を求めている」とボケたトランプ氏
気候行動サミットでは、国連のグテレス事務総長が「77カ国が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする目標を公表した」と明らかにした。
しかし、各国の姿勢には依然、大きな温度差があり、世界全体の排出増は止まらない。主要排出国の動きは鈍く、世界2位のアメリカと5位の日本は気候行動サミット上の問題から発言する機会さえ与えられなかった。
トランプ氏は当初、不参加の予定だった。しかし突然会場に現れ、記者団に「私はきれいな空気や水を求めている」ととぼけていた。会場に用意された席に10分ほど座った後、姿を消した。
来年から本格的に運用が始まる気候変動抑制を目指すパリ協定からアメリカは脱退する。トランプ氏は地球温暖化の問題など、本気で考えていない。トランプ氏の頭の中には、来年11月の大統領選しかないのだろう。
トランプ氏の皮肉に、さらなる皮肉で応戦する度胸
興味深いのが、ロイター通信が配信した写真である。記者団から質問を受けているトランプ氏に対し、背後からグレタさんがにらむような視線を送っている。
グレタさんと地球温暖化対策に消極的なトランプ氏との“戦い”をみごとに象徴しており、この写真が話題になるのはよくわかる。
2人の“戦い”は今後も激化するだろう。トランプ氏は、グレタさんについて「明るく、すばらしい未来を楽しみにしているとても幸せな少女のようだ」とツイッターに書き込んだ。
これを見たグレタさんはツイッターのプロフィールに「明るく、すばらしい未来を楽しみにしているとても幸せな少女」と書き込んだ。トランプ氏が投稿した皮肉交じりのツイートに対して、皮肉で応戦したのだ。16歳の少女にしては出来過ぎだとも思うが、彼女は本物なのかもしれない。

トランプ応援団のFOXテレビもグレタさんに謝罪
アメリカではFOXニュースが23日に放送したテレビ番組で、出演者の男性評論家が「彼女は精神的に病んでいる。両親や左翼に利用されている」と発言し、問題となった。この問題ではFOX側が早々に謝罪している。FOXはトランプ氏に好意的なテレビ局だ。そのFOXが謝罪するということは、“グレタ対トランプの戦い”は、いまのところグレタさんが優勢のようだ。
ちなみにグレタさんは「自分はアスペルガー症候群」と公表し、「アスペルガー症候群は才能であって決して障害や病気などではない」という問題提起も行っている。
アスペルガー症候群とは広い意味での「自閉症」のひとつのタイプで、幼児期に言語発達の遅れがなく比較的わかりにくいが、成長とともに対人関係の不器用さがはっきりすることが特徴だ。あの演説から判断する限り、たしかにアスペルガー症候群が病気だとは思えない。
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