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宮川サトシ ジブリ童貞のジブリレビュー特別編「高畑勲展〜日本のアニメーションに遺したもの〜」

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高畑監督の背広姿はやっぱりカッコいい

入場してすぐ、二面の壁に渡ってジブリ以前からの高畑監督が関わった作品を記した巨大な略年表が張り出されているのが見えました。平日なのにすごいお客さんの数で、年表のある空間は常に人の匂いがしていました。

細かいところまで年表を見ようと人の肩と肩の間から覗き込もうとした時に、後ろの柱の高いところから視線を感じました。…高畑監督の等身大の全身写真でした。優しい表情だけど圧力を感じる写真。

改めて高畑監督って全然アニメに関わってきた感じがしない風貌だなと思いました。ちょっと俳優の渥美清さんにも似てて、「男はつらいよ」の監督って言われた方がしっくりくるというか。

他の写真も、ジャケットとか背広姿のものが多かったのですが、そのアニメ関係者らしからぬ風貌と作品のギャップがカッコ良いんですよね…。前にも書いたかもですが、ラグビーとかサッカーの監督が選手たちと同じユニフォームは着ずに、スーツ姿で腕組みしてるときの格好良さ。

私が高畑監督だったらもう一段階ギャップを狙って、腕にタトゥーを入れてシャツの袖からチラッと見せたりしてしまいそうです。そんなタトゥーを安易に入れないところも、高畑監督の魅力の一つなのかもしれません。(最後のタトゥーのくだり、中川大志さんの声で脳内再生すると不思議と良いこと言ってる感じがするのでやってみてください)

高畑監督の手書きの文字は正直ちっちゃくて読みづらいが可愛くもある

展示の仕方について説明すると、まず超巨大な、ウルトラマンぐらいの高畑監督を想像してみてください。その超巨大監督に飲み込まれて食道から胃を通り、腸へと進んでいくその途中途中の内壁に、時系列に沿って高畑監督が関わった作品に関する棒大な資料が並べられている…といった感じの展示でした。超巨大な高畑監督に飲み込まれるイメージ、そんな必要なかったですね…。

各作品のブースには、高畑監督の手描きの企画書や絵コンテ、メモ書きがガラスケースに入って展示してありました。このガラスケースの高さが絶妙に中腰姿勢を必要とする高さでして、なかなか腰にクるものがありました。

あと監督の手書きの文字が小さくチョモチョモしてて(可愛いんだけど)正直読みづらく、そのせいなのか他のお客さんの回転も悪く、場所取りもなかなか大変。途中グイグイ割り込んでくるグイグイおじさんがいたので、腕組みして読んでるフリをしながらただ踏ん張ってただけってことも何度かありました。何やってんでしょうね…。

強く印象に残っている資料で、わりと最初の方にあったのですが、「ドラえもん」のアニメ化に関する企画書。高畑監督関わってたんかい! と驚いたのもあるんですが、ドラえもんという作品、原作漫画の魅力の本質を一発で射抜くような無駄のない文章で、グイグイおじさんの圧迫にも負けず、つい読み込んでしまいました。

あと、高畑監督の書き損じた部分の修正の仕方が、ずっとクルクル塗りつぶして消すスタイルを通してたのもなんか頑固な感じがして良かったです。





「子供の心の解放」をテーマにした「アルプスの少女ハイジ」のジオラマ(ここだけ撮影可)。

これを一生懸命40過ぎのおっさんが一人で撮影している姿を想像してみてください。

このジオラマの後「火垂るの墓」に続いていくのですが、ハイジや節子を見ていると無性に自分の娘に会いたくなってきて、一瞬だけ家に帰りたくなったりしました…。

終盤に感じたちょっとした恐怖

「ハイジ」や「赤毛のアン」で海外の風景に向いていた監督の興味が、次第に「じゃりんこチエ」や「平成たぬき合戦ぽんぽこ」のような、国内の日常の生活様式に焦点がシフトしていく。それがさらには古い絵巻物へと向かい、余計な物を省いたシンプルな線を動かすことに集結して最終的に「かぐや姫の物語」に辿り着きます。

その変遷の様子がとてもわかりやすい展示で、まさに超巨大高畑監督の体内にある記憶の中を旅してるような感覚が味わえて「来てよかった〜!」なんて思ってたんですが、ふとこれまで歩き見てきた作品展示の数を見て、それが多いのか少ないのか、アニメ1作品にかかる時間は相当なものだとは思うのですが(特に高畑監督は時間をかける監督の印象)、それが具体的に数字となって見えてくると、なんともセンチメンタルな気持ちにもなりました。

めちゃめちゃ当たり前の話なんですが、人が作れる物の数というのは限られていて、改めて人生の短さみたいなものも感じてしまって少しだけ怖くなりました。

高畑監督のやってきた仕事と並べることではないのだけど、自分はあといくつマンガの企画や単行本を残せるだろう…とか、3時間近く中腰で牛みたいな速度で歩いてたからそういう思考になったのかもしれません、忘れてください…。

結論:あの凄さは一緒に働かないと伝わらないかもしれない…でも泣いてしまう展示だった

クリエイターの凄さを伝えるにはやっぱり「絵」なんでしょうね…。高畑監督は絵を描かない監督なので、その演出技法みたいなものが詰まったイメージチャートや手描きの演出メモ、凄まじいその量を見てもあの凄さってなかなか伝わらないような気もしました。

実際大きくスペースが割かれていた(またそれが圧巻でもあった)のは、たぬき合戦や火垂るの墓のために描かれた棒大な作画背景だったりするんですよね。自分みたいな素人からしたら「わ〜っ!(絵だ〜!)」ってなもんですよ。やっぱり一緒に働かないと伝わらない凄みみたいなものも当然あるだろうなと。

ちなみに余談ですが、私が原作を担当している「宇宙戦艦ティラミス」という漫画が今年ありがたいことに文化庁から漫画部門優秀賞をいただきまして、その時にお台場で作品資料や原画を展示していただいたことがあったのですが、その時に提出した私がちゃんとイラストも描いた原作ネーム(マンガの設計図)は、なぜか1枚も飾られていませんでした…チックショー!!(小梅太夫)

遺作となった「かぐや姫の物語」のブースで聴くことができる音声ガイドの中で、こんな感じの語りが入ります。

「この作品は見るに値するものだと断言できる、これはスタッフたち全員の技術の到達点である」

「かぐや姫」を作った後に言い残して高畑監督はこの世を去るんですよね。生きてれば次もまた表現を突き詰めたのでしょうけど、こんなやりきった感のあるコメントを残せる人生って…なんなんでしょうね、実際にあるんですね。

音声ガイドの後ろでは二階堂和美さんの「いのちの記憶」が流れていて、思わず泣いてしまいました。



…と、いろいろありましたが、「高畑勲展」は自分の人生観に影響を与えてくれるほどの素晴らしい展示でした。行ってよかった〜!!

ジブリレビューvol.15『ホーホケキョ― となりの山田くん』

ジブリレビュー vol.14『耳をすませば』

ジブリレビュー vol.13『崖の上のポニョ』

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