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司法試験合格者の水準 再び受験者の平均点を下回る合格者が出るようになった

今年の司法試験合格者数は1502人、受験者数が減少の一途のため、合格率は上がる一方です。

 当然のことながら合格水準は下がります。一定の水準に達したから合格させたというのではなく、上から1500人を合格させているからです。

 以前も同様に上から何名を合格させるという方法がとられていましたが、以前と今般の状況の違いは受験者数が格段に違うということです。

 司法試験は資格試験であると同時にそれだけで資格を得られるものではなく、あくまでも司法研修所に入所するための前提としての試験であり、何名を養成するのかという政策的な判断もあり、これまで500名であったり1000名だったりもしたわけです。

 但し、この司法研修所での養成は司法試験合格者数の影響をもろに受けていたために従来は2年間だったものを1000人を超えた時から1年半、さらなる増員により現在では1年にまで短縮されました。

 司法修習のあり方そのものが大きく変更され、現在に至っています。
札幌弁護士会「司法修習のあり方についての提言」

 上から何人を合格させるというのは、こうした養成制度と不可分の関係にあるのですが、それ故に受験年度によっては昨年であれば合格水準に達していたのに今年は水準が高かったので不合格ということもあり得ることでした。年度毎のばらつきがあるのは当然で、これ自体が悪ではありません。医師になるための医学部受験と同じです。

 ところで合格水準が高すぎたために合格できなかったという弊害があったのは合格者数が500名までのことです。600名、700名と合格者数が増員される中で、そうしたことは解消されていきます。

 500名時代は、「対流組」と言ってAランク(1000番以内がAランク)で不合格が続いていたという話も残されていましたが、100名、200名と増員する中でそうした「対流組」は一掃されていきますので、従前の合格水準にありながら不合格になるという状況はなくなります。

 その後も合格者数の増員政策は続きますが、合格者数を増員するということはさらに合格水準を下げるということを意味します。
 もっとも法科大学院の開校により、増員だけでは下がる水準を一定の水準に引き上げるということを制度的に担保するという建前になっていました。

 しかし、現実は法科大学院制度は失敗、到底、目標とした3000名にまで到達することなく、2000名強に止まり、今や1500人が「目標」とされるような状況です。
 しかもその「目標」としての1500人を無理やり確保させているというのが、今の現状です。

 そのような中で、今年の司法試験受験者の平均点に達しないのに合格者が出るという珍事になっていたことを知りました。日弁連の理事会の中でこういった指摘があったということです。こういった視点は私には新鮮でした。

 法科大学院課程修了者が最初に受験したときは合格率48%という高水準であったこともあり、受験者の平均点に達していなかったということも過去にはありましたが、今年はいよいよ制度が動き出し、本来であれば軌道に乗った状態でなければならないにも関わらず、受験者の平均点を下回るという状況に陥ったことは今の司法試験の現状を示す極めて象徴的なことだと思います。

 これの意味するところは上位を合格さたというよりは、文字通り上から1500人まで合格させていったら、かなり下位まで来てしまったということです。

 司法試験の持つ選抜機能の低下ももはやいかんともしがたいところまで来ているということなのですが、法科大学院の志願者激減がもたらしたものは、いよいよ将来の職業としての魅力の低下と人が集まって来なくなったことの裏返しです。

 法科大学院制度の下では修了者のみが受験資格を得る(例外は予備試験)ということでしたが、そこには一定の水準に達したということを前提にしていました。前段で述べたとおり、だから合格者数を増員することを正当化していたはずなのです。

 その前提を欠く状態に陥った中では、もはや上から何名を合格させるといことは政策判断としても誤りです。

 しかし、法科大学院関係者や法曹人口激増論者は未だに司法試験の合格率が低い(合格者数が少ない)からだということにその原因を求めています。

 要は、法科大学院課程修了者は基本的に全員を合格させよというのがその主張の中核になっていますが、そうすれば法科大学院志願者が増えると考えているところに一番の問題があります。

 そしてそれを正当化するために、新規法曹の質は下がっていないということを強調するのですが、全く根拠がありません。逆に、「質が下がったということの根拠を示せ」と逆切れするのがいつものパターンです。そういった質の違いを絶対基準によって比較するものなど存在していないことを承知の上で食って掛かる姿勢は、見苦しいものです。

 驚いたのは、司法研修所の終了のための試験である考試(通称、2回試験)の不合格者が一時期は多かったのに、それが今では減った、弁護士会は不合格者数が減ったらいつの間にか問題にしなくなった、などという意見です。

 これとて政策的に試験のあり方を変え、合格させているということくらいわかりそうなものなのですが、「根拠を示せ」という逆切れパターンになるのですから、品もありません。

 政策的に合格せているという誰が見ても明らかなことをとにかく否定したがるのですが、そうでもしなければ法科大学院制度を正当化できないし、ださらに合格者数を増員せよなどと口にできるないからです。

 今の法科大学院がそこまで信用に足るものなのかどうか、今一度、考え直す必要があります。

読売新聞社説
進む法曹離れ 司法の基盤が揺らぎかねない」(読売新聞2019年9月29日)

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