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GSOMIA破棄が示した韓国・文政権の野望 西側陣営から離反する韓国、東アジアの地政学的な大変動 - 秋元千明 (英国王立防衛安全保障研究所アジア本部所長)

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韓国が日本と結んでいたGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄したことによって、日本だけではなく米国政府も懸念と失望を表明した。韓国のこの突然の決定は単に日本の輸出管理の強化に対する韓国の報復でしかないのだろうか。その背景には、韓国の文在寅政権が持つ国家的野心が見え隠れしているように思えてならない。

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まず念頭に置きたいのは、GSOMIAは秘密情報を保全することを国と国が保証し合う協定であり、国家が所有する情報を無制限で共有することを決めたものではないということである。情報当局者間で必要と判断された情報に限って、情報を共有するものである。
したがって、通称Five Eyes(ファイブアイズ)と言われる米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの5カ国が結んでいるUKUSA協定のように加盟国がデータベースにアクセスすることによって自由に各国の情報を閲覧できる仕組みにはなっていない。

事実、日本が2016年11月にGSOMIAを韓国と結んで以来、これまでに交換された情報はわずか29件であり、平均して年間10件というのは情報協力関係と呼ぶにはかなり少ない数である。

GSOMIAにかかわらず世界には各国の情報当局同士の協力関係は様々な形で存在しており、特にいわゆる西側各国の情報当局の交流は壮大なネットワークのように構築されている。共通の利益を守るためである。

ところが、この世界の情報コミュニティーの中にあって、韓国の存在感はほとんどない。それは各国が韓国に求める情報が北朝鮮関連に限定されていることや、それ以外の一般的な国際情報を取得したり、分析する韓国の能力はそれほど高くないからである。

それに対して、日本の情報収集能力は通信を傍受して解析する分野ではアジアではトップクラスである。具体的には、1979年2月、中国がベトナムに侵攻した際、中国人民解放軍の越境を真っ先に察知したのは日本の通信諜報であったと言われているし、83年9月、カムチャツカ半島付近の上空で韓国の大韓航空機が消息を絶った事件では、大韓航空機が旧ソビエトの空軍機によって撃墜されたことを最初に確認したのは米国でも韓国でもなく、日本の通信諜報であった。

そして現代、日本は情報衛星という事実上の偵察衛星7基を保有、運用しており、単に通信情報だけでなく、衛星写真など画像情報の収集能力も大きく向上させており、東アジア全域で米国を情報面からも支援している。つまり、日本の情報組織は、朝鮮半島だけを相手にしている韓国とは違って、国際的なインテリジェンス網の一翼を担っている。

そのため、最近では、Five Eyesの枠組みに日本も参加すべきだという意見や、米国と英国と連携し、新たなThree Eyes(スリー・アイズ)を創設すべきだという意見が情報当局者同士の間でしばしば議論されている。

このようにGSOMIAは韓国にとって世界のインテリジェンス網にアクセスできる重要なパイプであったのに、それを自ら遮断するということは合理性を欠いた行為というしかない。

親北、親中、離米、反日
背後にある野望

韓国のGSOMIA破棄について、米国務省報道官は「文政権に対し、協定を破棄すれば米国および同盟諸国の国益に悪影響を及ぼすと繰り返し明確にしてきた。(破棄の決定は)文政権が北東アジアで私たちが直面する深刻な懸案を正しく理解していないことの表れだ」と述べ、これまでになく強い調子で文政権を批判した。

しかし、文政権が徴用工や輸出管理の問題でことあるごとに歴史問題を引っ張り出して日本を非難し続ける背景には、歴史問題を利用してなにかを成し遂げようとする別の意図があるように思える。

それはおそらく、韓国をこれまでとは別の国家に変貌させようとする野望、良く言えば野心的な国家戦略のように思える。米国がこれまでにない強い調子で韓国を批判するのもそれを感じ取ってのことのように思える。

文政権の外交姿勢は日本の輸出管理強化の問題が起きる前から、明らかにこれまでの韓国の政権とは異なっていた。一口に言えば、親北、親中、離米、反日である。

米国に対しては、文政権は日米が中心になって推進しているインド太平洋戦略にいまだに消極的な姿勢を取っている。それが中国の推進する世界戦略「一帯一路」を牽制するものであるからだろう。
また、米国が韓国に配備した迎撃ミサイルTHAADに対して中国が反発し、韓国に様々な経済報復をしたことに対しては、文政権は、ミサイルの配備規模を拡大しない、ミサイル防衛に参加しない、日米韓の連帯を軍事同盟化しないなどと、米国の方針とは相いれない合意を中国と結んだ。

最近では米国がロシアとのINF(中距離核兵器)全廃条約を破棄し、将来の中距離核の配備先について打診したところ、文政権は全く関心を示さなかったと言われている。

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一方、文政権は中国に対しては極めて寛容である。THAADに反発した中国による経済制裁で韓国の企業が大きな打撃を受けても有効な対抗策を取ることはなかった。また、歴史的に中国は朝鮮戦争に介入して南北を固定化させた責任があるのに、中国に対して反省や謝罪を求めたということは聞いたことがない。

そして、文政権の外交で最も注目されるのが北朝鮮との融和姿勢である。今回の日本の輸出管理の強化に対抗して、文大統領は、2045年に南北を統一して、新国家が日本を追い抜くと明言した。文大統領は政府内部の会合で「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、日本を一気に追い抜く」と発言したという。南北が一体となれば日本の経済力を凌駕できるなどと考えるのは科学性を欠いた発言である。

東西冷戦後、旧東側陣営では最も豊かと言われた東ドイツを吸収した西ドイツでさえ、統一後20年以上、EUの協力があったにもかかわらず財政負担にあえいできた。それなのに、ただでさえ経済が悪化している韓国が多くの国民が飢餓に苦しむ北朝鮮を吸収することが可能なのだろうか。日米が相当な協力をしたとしても難しい。中国からの莫大な援助を期待しているのかもしれないが、それは中国に朝鮮半島を事実上売り渡すということになる。

このように文政権は、日本に対しては徹底して威嚇や非難を行って敵対し、米国に対しては機嫌を損ねないよう少しずつ距離を置き、反対に北朝鮮や中国とはこれまで以上に良い関係を築こうとしているように見える。そこから文政権のめざす新しい国家像が透けて見えてくる。つまり、日本や米国とは一線を画し、中国やロシアに近い経済大国を朝鮮半島に作ろうとする野望である。

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