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「お酒は少しなら体にいい」がちょっと違うワケ

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水分を摂取しても「お酒の害」はなくならない

「水を飲みながらお酒を飲むとよい」という説もあります。一般的にアルコールには利尿作用があるため、飲酒時には脱水に陥りやすいですから、水分を摂取するのはいいことです。でも、水分を摂取したからといって、お酒の害がなくなるわけではありません。

「お酒の種類によってはアミノ酸やポリフェノールを含んでいて、健康によい影響を与える」とも聞きますが、お酒に含まれる少量の成分を体に効果があるほど摂取しようとすれば、大量に飲むことになり、アルコールの害が無視できなくなります。健康を気にしてお酒の種類を選ぶのではなく、楽しく美味しく飲むために選んだほうがいいと個人的には考えます。

「ウコンが二日酔いの予防や治療に有効」というのもよく聞く説です。私が探した範囲内では明確なエビデンスは見つかりませんでした。もしも食品や栄養素がアルコールの分解を助けることがあったとしても、その効果は小さいと個人的には考えます。ただ、経験的にウコンが効くと感じている人が使うのは別にかまわないと思います。

「糖尿病」「膵臓の病気」でもお酒を飲んではいけない

では、お酒を飲んではいけないのは、どういう場合でしょうか。

まずは重い「肝臓病」の場合です。アルコール性肝障害はもちろん、肝炎ウイルスや自己免疫といったアルコール以外の原因による肝臓病でも、アルコールが病状を悪化させます。軽いうちであっても、できれば禁酒したほうが望ましいです。

血糖コントロールが悪い「糖尿病」の場合も、お酒を飲んではいけません。アルコールがインスリンの効きを悪くして血糖が上昇したり、逆に薬が効きすぎて低血糖になったりします。合併症がなく、血糖コントロールが良好なら、適量の飲酒はしてもよいとされています。ただし、指示された食事療法は守ってください。

アルコールと強い関係のある急性膵炎や慢性膵炎といった「膵臓の病気」の場合も禁酒です。飲酒が原因で急性膵炎になったことがある人は、少量の飲酒でも再発する恐れがあります。重症の急性膵炎は命にかかわる病気ですし、命が助かっても強い腹痛といった苦痛を伴います。飲酒が原因の慢性膵炎も、禁酒以外に治療法はありません。慢性膵炎は糖尿病を合併することが多く、その点からも禁酒が必要です。

妊娠中、あるいは妊娠の可能がある場合も禁酒をおすすめします。妊娠中の飲酒は、流産や死産、胎児の先天性異常のリスクを高めます。アルコールによって生じる胎児の先天性異常を「胎児性アルコール症候群」といいますが、「これ以下の飲酒量であれば胎児に影響がない」という安全な量はないとされています(※6)。

(※6)CDC Basics about FASDs ’https://www.cdc.gov/ncbddd/fasd/facts.html

ただ、ちょっとでも飲んだらアウトというわけではなく、妊娠に気づかず飲んでいたとか、お祝いの席で1杯だけ飲んだとかで、不安になったり、罪の意識を感じたりする必要はありません。いずれにしても一定の割合で流産や先天性異常は生じるものです。子どもの障害や病気を母親の責任とみなす風潮が一部にありますが、病気の多くは誰のせいでもありません。

「アルコール依存症」には専門家の診療が必要

名取宏『医師が教える 最善の健康法』(内外出版社)

世の中には、体に悪い、飲んではいけないとわかっていながら、どうしてもお酒がやめられない人もいます。これは「アルコール依存症」という病気で、意志が弱いわけでも性格がだらしないわけでもないので、本人を責めても解決しません。専門家による診療と家族の協力が必要です。アルコール依存症の診療を行っている精神科などの医療機関を受診していただくのがいいのですが、ご本人が受診を嫌がるようであれば、まずはかかりつけ医にご相談ください。

国際的にみて日本社会はお酒に寛容です。コンビニでは24時間いつでもお酒を買えますし、テレビではお酒のCMをやっていますし、「酒の上でのこと」として酔っぱらったときの失敗は許容されがちです。医学的なリスク以外にも飲酒運転やハラスメントなどの問題もあります。もっと広告規制や酒税の増税などの対策を行ってもいいのではないかと個人的には考えます。

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名取 宏(なとり・ひろむ)
内科医
医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、現在は福岡県の市中病院に勤務。診療のかたわら、インターネット上で医療・健康情報の見極め方を発信している。著書に『新装版「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)。
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(内科医 名取 宏)

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