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伊勢湾台風から60年

昭和34年(1959年)に伊勢湾岸のエリアに甚大な被害をもたらした伊勢湾台風から60年が過ぎた。
わたしは、昭和33年10月生まれなので、まだ満1歳にならないときのことだ。湾岸だけではなく、山のほうの被害も大きかったらしく、奈良県と県境を接する山間部(三重県美杉村=現・津市美杉町)出身のわたしも近所の家に避難したと、子どものころから何度も聞かされて育った。

わたしの生まれ育った家の上には谷があり、家を避けるように右にカーブしている。そのあたりから水があふれ出て、家の中まで浸水してきたのであろうことは、そののち、小学校2年生か3年生のころの台風でもう一度同じことがあったときにじかに水が氾濫してくる様子を見て記憶しているので、そう想像している。
二度の被害を機にその谷は改修され、その後は同じような被害は受けていないようだ。

一方で、わたしたち家族が二度避難した先の家(そこも海住さん)はわずか200メートルぐらいしか離れていないのだが常に安全な場所だった。谷と谷とのあいだにほんの少しだけだが小高くなっているためだろう。「逃げるのはそこへ」と、2つの家族の助け合い精神による“申し合わせ事項”として決まっていたようだ。

わたしたが育った小さな世界では、伊勢湾台風は川の水が橋のところまで達しそうだったなどと、地域の大人たちからすごい台風だったと語り継がれてきた。ただ、わたしたちのように、逃げ場と逃げる時間的余裕がある場合と、そうではない場合とがある。

四日市など三重県北勢部から名古屋にかけてのエリアでは高潮とも相まって逃げ場がないような大災害をもたらしていたなどとは当時、知る由もなかった。

後年、近鉄名古屋線で名古屋に向かう途中、海抜の低いところを通ると、水害に対する心配を思わざるを得ない。伊勢湾台風を機に堤防などハード面の防災対策は強固なものになったではあろうが、60年前にはまだ市街化していなかったところが宅地や工場になったであろうし、密集化と人口増があっただろう思う。
確か、江戸時代の名古屋城下の地図だったと思うが、入り江は現在の名古屋の市街のほんの近いところまで存在していたことを示していたと思う。わたしは、けっこう、地形は気になる方だ。よく言われることだが、開発等で地形はわかりにくくなっていても、古い時代の地名が水との関係をものがたっていることが多い。わたしの小さな経験より、はるかに多くの体験が語り継がれていることだろう。防災は、身近を見つめることが基本なのだろうと思う。

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