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樹木希林さん"祝儀不祝儀は3000円"は非常識か

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法事の香典はいくら包めばいいのか。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「昨年亡くなった女優の樹木希林さんは祝儀も不祝儀も一律3000円と決めていたそうです。香典の場合、地方では3000~5000円、首都圏では1万円が一般的。都市部では世間体を気にした上乗せが生じやすいようです」という——。


2018年9月30日、都内で樹木希林さんの告別式が営まれた - 写真=アフロ

樹木希林さん「祝儀・不祝儀は3000円と決めています」

彼岸入り前の9月15日は、女優の樹木希林さん(享年75歳)の一周忌だった。公に一周忌法要は実施されていないようだが、テレビや雑誌が特集を組むなど、樹木さんの存在感はいまだ健在だ。

彼女の語録を収めた本も売れ続けている。『一切なりゆき』(文春新書)は今年6月に120万部そこそこだったが、一周忌のタイミングで150万部を突破した。本書の読者の多くはシニアの女性だという。編集部に話を聞くと、「病気や夫との関係など、さまざまな逆境を自然体で受け止め、肯定的に明るく生きた点が支持されているようです」。

その樹木さんの生前の言葉で、興味深いフレーズがあったので紹介しよう。

「祝儀・不祝儀は3000円と決めています」

生前、樹木さんは結婚式や葬式に呼ばれた際、「袋の中身」は誰であっても、3000円に決めていたという。樹木さんからすれば、「世間体を気にして、いちいちご祝儀や香典の中身に苦心するのはバカバカしい、だったら一律3000円にすればいいじゃないか」という意図らしい。実に樹木さんらしい立ち振る舞いだ。


樹木希林『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文春新書)

香典「一律3000円」は妥当な金額なのか

野暮(やぼ)ではあるが、葬式の香典が一律3000円というのは妥当な金額と言えるかどうかを見ていきたい。結論からいえば葬式の香典の金額として3000円は常識の範囲内と言えるだろう。

「香典(奠)」という言葉は、本来は霊前にお香を手向ける代わりとして、金銭をお供えすることに由来する。したがって、お香の代金を基準にするならば、香典の金額はたかが知れているのだ。

そもそも香典の金額は地域性でほぼ決まる。地縁が残っている地方都市では「3000円」か「5000円」がおおかたではないだろうか。

いっぽうで首都圏の場合は「1万円」がスタンダードな金額のようだ。これは都市部では地縁の結束がもろく、個人単位で葬式に参列するケースが多いからである。

ムラ社会では江戸時代からの檀家制度や、慣習に基づく暗黙知によって香典の額がそれとなく決まっている。

しかし、「個の社会」になっている都市部では、金額を決めるよりどころがない。そのため、世間体を気にした「心理的な上乗せ」が生じるのである。


お彼岸の季節に合わせて咲くヒガンバナ - 撮影=鵜飼 秀徳

東京は「1万円が相場」だが3000円でも差し障りない

これは、前回のコラムで触れた通り、葬式の布施相場と同じ構造である。だから、樹木さんのように世間体さえ気にしなければ、東京でも3000円でも差し障りない。とはいえ、喪家から頂く香典返し以上の金額は包んでおくのが好ましいと、私個人的には思う。

香典は数千円で済むが、葬式の布施は万単位になる。このところ、葬式の布施の金額を巡って住職とトラブルになるケースをしばしば耳にする。

「あなたの家は前回のお葬式で500万円のお布施だった。今回も同様の金額で」

とか、

「院号居士が欲しければ100万円以上」

などと、法外な金額を提示する寺もあるそうだが、とんでもないことである。布施は喜捨(払う側が布施することに喜びを感じて金額を決め、差し出すもの)であり、僧侶側が金額を決めることではない。だから、布施は非課税とされているのである。

高級外車を乗り回すが「葬式の布施1万円」

とはいえ、あえて言えば、布施をする側も常識的な感覚は必要だと思う。

最近では、ブランド品を身に着け、高級外車を乗り回しているのに「葬式の布施1万円」などというようなケースもあると聞く。「故人を供養したい」と願う心がけはそっちのけで、「なるべく安く済ませたい」とのコスト意識ばかりが優先するのであれば、布施の意味そのものが失われてしまう。

お寺に対しても失礼だ。人が亡くなった際には、住職は日時を問わずに枕経に駆けつけなければならない。仮に旅行の予定があったとしても、キャンセルして通夜・葬式をつとめるのが通例である。布施を出す際には一般通念上、金額が妥当かどうかを吟味する必要があるだろう。

生活に余裕のある人は、布施も多少は多めに包んでいただき、一方で、生活に困っている人は1000円でも1万円でも問題ない。僧侶は金額の多寡にかかわらず、きちんとおつとめをしなければならない。寺檀関係は相互にフェアでなければ、将来的に寺院や墓を維持していくことは難しくなるだろう。

もっとも、「お経も適当で、ろくに説法もしない。お寺も荒れ放題で、夜は銀座のクラブで遊びほうけている。こんな住職に布施を出したくない」というケースもあるかもしれない。そんな菩提寺ならさっさと、檀家をやめたほうがよい。

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