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未だに「かき出す中絶」が行われている日本の謎

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日本で人工妊娠中絶を行うと、約15万円の医療費は自己負担で、手術では、金属製の器具で子宮内をかき出す「掻爬(そうは)法」が行われることが少なくない。だが、海外では真空吸引法と薬剤使用が主流だ。また「中絶無料」という国もある。なぜ日本は女性にばかり負担を押しつけるのか。産婦人科医の遠見才希子氏が解説する——。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Devonyu

■推計では「日本女性の6人に1人」に中絶の経験がある

人工妊娠中絶(以下、中絶)は、さまざまな理由によって妊娠を継続できないときにその妊娠を中断するために行われる。日本には、明治時代(1907年)に制定された「堕胎罪」がいまだに存在しているが、1948年に制定された旧優生保護法(現在は母体保護法)によって、一定の条件を満たした場合の中絶が認められた。したがって、「堕胎」と「中絶」は異なり、中絶は日本では合法だ。

日本の総中絶報告件数は年々減少しているが、それでも年間16万4621件(※1)(1日あたり約450件)で、日本の16~49歳の女性のうち約6人に1人は中絶の経験があると推計されている(※2)。

(※1)厚生労働省保健・衛生行政業務報告(2017年)

(※2)厚生労働省研究班・日本家族計画協会 共同調査報告(2005年)

私はこれまで産婦人科の現場で数々の中絶に携わってきた。中学生カップル、20代の社会人カップル、30代の夫婦間、40代の不倫関係など年代は幅広い。また中絶に至る理由についても、経済的困難、持病の悪化、DV、レイプなど、多様な背景がある。どんな理由や背景であっても、安全な医療を提供し、その人の健康をサポートすることが中絶に携わる医療従事者の役割である。

■金属製の器具で子宮内をかき出す

2013年に産婦人科の専門研修を開始した私が中絶手術としてまず習得したのは、D&C(頸管拡張(けいかんかくちょう)及び子宮内膜鋭的掻爬術(しきゅうないまくえいてきそうはじゅつ))、いわゆる掻爬(そうは)法だ。

これは金属製の細長い器具を子宮口から入れて、正常の子宮内膜を傷つけないように注意しながら、子宮内の妊娠組織を全体的にかき出す方法である。術中は強い疼痛が生じるため、静脈麻酔で眠らせて手術を行う。なお、経腟分娩の経験がない女性は術中に子宮口が開きにくいため、術前に子宮口を開く処置を要する。この前処置は感じ方に個人差はあるものの痛みを伴う。

鋭的な器具を使用する掻爬法の合併症には、子宮内で癒着が起こる子宮腔内癒着症(アッシャーマン症候群)、子宮内膜が薄くなる子宮内膜菲薄化、子宮に穴が開いてしまう子宮穿孔などがある。合併症の発生頻度は低いが、発生すると将来的に不妊を生じる可能性がある。「中絶すると子宮を傷つけて妊娠しづらい体になるかもしれない」という中絶に対して抱くイメージはここから来ているのだろう。

■WHO「掻爬法は時代遅れで、やめるべき」

日本では、妊娠初期の中絶の約33%が掻爬法、約47%が掻爬法と電動吸引法(※3)の併用で行われている(※4)。つまり約80%で掻爬法が行われており、日本で主流の中絶方法といえる。

また、日本では中絶だけでなく稽留(けいりゅう)流産(※5)に対する手術においても掻爬法が行われることがあるため、掻爬法を経験したことのある女性はかなりの数に上るだろう。

(※3)子宮口を開く処置をした上で、子宮内に金属製の吸引管を入れてチューブにつなぎ電動で妊娠の組織を吸引する方法

(※4)Sekiguchi A, et al., Int J Gynecol Obstet 2015; 129: 54-57

(※5)妊娠が継続せず自然に終わり、出血などの症状がなく胎のうや胎児が子宮内にとどまっている状態のこと

産婦人科医として中絶を施術する立場となった私は、とにかく合併症を生じさせないように慎重に、葛藤を抱えながら必死に掻爬法の技術を習得した。

しかし、私が必死に習得した掻爬法は、もはや世界のスタンダードではなかった。WHO(世界保健機関)は「掻爬法は、時代遅れの外科的中絶方法であり、真空吸引法または薬剤による中絶方法(Medical Abortion)に切り替えるべき」と勧告している(※6)。実際、欧米を含む先進諸国では掻爬法はほとんど行われていない(※7)。掻爬法の実施率は、アメリカでは0~4%、イギリスでは0%と報告されている。

(※6)World Health Organization, Department of Reproductive Health and Research, "Safe abortion: technical and policy guidance for health systems" Second edition, 2012

(※7)Cates W, et al., Am J Prev Med 2000; 19(Suppl): 12-17

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