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韓国人の65.7%が参加……今回の日本製品不買運動が、これまでとは違う理由 - 菅野 朋子

 韓国での「日本製品の不買運動」が粛々と続いている。

【画像】不買運動の対象となっているソウル市内のユニクロ、GU

 続いているというか、どこか“定着”にも似た雰囲気というか。ここでいう日本製品とは一般の人々が日常生活で購入したり、選択できる製品や旅行のようなものに限ってのことだが、ことさら不買というよりは、買わないということが静かに日常に溶け込んでしまった感がある。


ソウル市内ショッピングモールでのユニクロ、GU併設オープンの様子(著者提供

不買運動に参加している人は65.7%

 9月19日、日本製品の不買運動に参加している人は65.7%、参加していない人は25.5%という世論調査結果が出た(世論調査会社「リアルメーター」)。

 9月の第2週、韓国では旧盆の4連休で、例年どおりだと日本への旅行シーズンだったが、今年の予約率は昨年の同時期と比べると82.5%減少したとも報じられた(旅サイト「ヤノルジャ」調べ)。代わって海外旅行で人気となったのはベトナム、台湾、タイだという。韓国国内の旅行も増えて、こちらは昨年同期比143%アップ。人気スポットはソウルやその郊外、そして釜山が上がっていた。

 学生などの就職活動の現場にも、日本製品不買運動の影響が出ているという。

 就業ポータルサイト「インクルート」の調べでは海外での就業地で人気なのは北米・カナダ(33.5%)で、次に欧州(23.9%)が続き、その後に日本(14.1%)が上がっていた。ここで就業国を選択する際、「不買運動の影響をかなり受けた」という学生が7割近くもいた。

東京支社への異動を断った韓国人の言葉

 そんな調査結果を見ながら、知り合いが言っていた話を思い出した。大手企業に勤める知り合いは40代前半の独身女性。学生時代から日本の漫画やアイドルが好きで、日本語は独学から勉強して今では通訳もできるほどに堪能だ。そうした日本語の能力を買われ、会社では日本との事業にもずいぶん関わってきた。そんな実力から、東京支社への異動も勧められていて、行く決心をほぼ固めていた。が、今回の日韓の葛藤から、結局は断ったという。

「年齢もありますし、ラストチャンスかなと思って挑戦してみたかったのですが。今、日本に行ったら、何か良くない経験をしそうで、とても迷いましたが、断りました。好きというか、身内のような存在になった日本ですから、嫌な思いはしたくないですし。日本と関わる事業をやっていると、これまでも歴史や領土問題が韓日で浮上するたびにイベントを遅らせるかどうかなどを巡って苦労してきましたが、今回のは質が違うように感じます。

(韓国への)輸出規制に始まって(日本は韓国を)ホワイト国(輸出優遇国)からも除外しましたが、その理由について何も説得力のある説明がなかった。徴用工問題で適切な対応をしなかった韓国政府にも腹が立ちますが、日本が(韓国の)弱みにつけ込むような措置を突然、突きつけてくるとは思ってもいなかったので、思っていた日本とは違う、裏切られたというか。

 仕事柄、経済産業相(世耕弘成前経済産業相)のツイッターをチェックしていましたから、これは明らかに徴用工問題の報復だと感じました。韓国のほとんどの人もそう思っていると思います。まさか、あの日本がこんな形で報復するなんて、と。ああ、余裕のあった、古き良き日本はもう存在しないのだとあらためて感じました。日本社会も韓国と同じように喘いでいて、韓国と同じように世論を外に向けさせないといけないのだなあと」

 彼女は、これまでどおり月に1度、仕事で日本に行っているが、最近は飛行機のチケットがとりやすくなったと笑い、日本にいる時は韓国語を意図的に使わないように気をつけているなどとも話していた。

 それにしても古き良き日本、とは。

売上が激減しているのは「ビール」と「ユニクロ」

 韓国で売り上げが急減しているといわれるのは日本産の「ビール」と「ユニクロ」だといわれる。裏を返せば、それだけこの2つが韓国に受け入れられていたということだろう。

 日本産ビールの売上は輸入ビールの中でここ10年ほど不動の1位だったが、7月にはあっけなく3位となり、8月には13位にまで転落したと伝えられた(韓国関税庁調べ)。

 代わって海外ビールで台頭しているのが中国産の「青島ビール」なのだとか。サッポロビールが好きだった知り合いも代わりに他のビールを飲んでみたら、「韓国産ビールが意外とイケててびっくりしました。この際、他の味も飲んでみようと思って、世界のビール巡りをしてみるつもり」と話していた。

 韓国内で輸入ビールの需要が広がったのは、若い世代の間でビールが好まれるようになった2010年代からといわれ、その頃には、2000年代に27カ国だった輸入先はほぼ倍の51カ国へと増えた。ビール好きの間ではまずいと認識されていた韓国産ビールも最近では地ビールなども増えて、健闘している。つまり、選択肢が広がっている。

 ユニクロは2005年に韓国に初出店してから、快進撃。あれよあれよという間に店舗を増やし、大型のショッピングモールでユニクロが出店していないところはないといわれるほどだった。ところが、7月11日、ファーストリテイリングの役員が決算報告の場で、「(韓国の日本製品の不買運動の)影響は長くは続かないであろうと思う」と発言したことが韓国の人の怒りに火をつけてしまった。この時ネットでは「ばかにされた」という書き込みが多く見られた。

 ソウル市内では3店舗が閉店となったが、これは、「採算の悪い店舗を閉めて、新店舗に注力しようという戦略のようです」(韓国紙記者)とも聞く。

 売り上げは公表されていないので分からないが、前月と比べて7割減という報道もあった(8月15日、朝鮮ビズ)。

 50代の知り合い(女性)は、ユニクロで買い物をした後、友人とお茶をしたら、「ユニクロの袋、隠さないとだめ、だめ。何か言われるわよ」とたしなめられたという。ただ、集まった友人の中にはユニクロに勤めている娘が無給休職になったと心配していた人もいたそうだ。

 実際にユニクロの店舗に足を運んでみると、客足が減ったかどうかはあまり分からなかったが、同じショッピングモールの中にある、かつて閑散としていた韓国のファストブランドのほうが客足が多いようにも見受けられた。

90年代韓国での日本たばこ不買運動との違い

 90年代、韓国では日本のたばこの不買運動が行われていた。日本のマイルドセブンは当時大人気だったが、店頭からは姿を消した。それでも、在庫を尋ねれば棚の下や奥のほうからこっそり出してくれるような光景が普通にあった。象印の炊飯器も大人気だったし、日本製品は質が良いという認識があり、日本製品を持つことがある種のステータスだった。

 それから20年あまり。

 今や韓国にも世界のモノがあふれている。選択できる分母がすでに大きく異なっている。日本の今回の措置でちくりと刺さった日本への不信という“棘”は、韓国の人からなかなか抜けないかもしれない。

 それでも、モノがよければ顧客はいつかは戻ってくるだろう。

 しかし、戻らないものもある。製品でも旅行でも、選択できる立場の人はいいだろう。この夏休み、韓国のある養護施設のこどもたちが、交流している日本の地方にある養護施設のこどもたちに会いに行くことになっていた。だが、今回の日韓の関係悪化や互いの社会の雰囲気を考慮してとりやめにしたという。モノと違い、その年の夏休みの思い出は返ってこない。こんな話を聞くと、大人である私たちは一体何をやっているのだろうかと、やるせなくなる。

(菅野 朋子)

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