記事

【東電刑事裁判】告訴団長・武藤類子さんが都内で講演。「全員無罪なんて本当に悔しい、納得出来ない」。控訴期限の10月2日に向け、ネット署名は1万2000筆超える

 福島第一原発事故を巡る東電旧経営陣3人への刑事裁判で、東京地裁(永渕健一裁判長)が19日に無罪判決を言い渡してから1週間余。
 事故発生直後から刑事責任を問い続けてきた「福島原発告訴団」団長の武藤類子さんが26日午後、都内で講演し、判決の悔しさや控訴への想いを語った。法廷では、我慢出来ず「この判決は間違ってる!」と叫んだという武藤さん。「指定弁護士が控訴を決断するよう、世論の後押しが必要」と署名への協力を求めた。
 控訴期限は10月2日。ネット署名は1万2000筆を超えている。


【法廷で叫んだ「間違ってる!」】

 「本当に悔しい、納得出来ない。そういう判決でした」
 武藤類子さんは19日の判決日を振り返った。「無罪判決を受けて、様々な声が私の耳にも聴こえてきました。やっぱり納得出来ない、認められない、悔しい、司法は全く独立していない…。多くの言葉を聴きました。私も同感です」。

 東京地裁では普段からX線検査装置などを使った手荷物検査を行っているが、この日は特に厳しかったという。
 「私たちは傍聴人に対して、非常に厳しいチェックがありました。ノートの一枚一枚まで中を見られて、財布の中まで覗かれて、身体に触れてのチェックまでされました。さらに驚いたのが、衛視が普段の3倍くらいに増やされていた事です。いつもは四隅に立っている程度なのに、判決日は傍聴席を取り囲むように配置されていました。全員がこちらをじっとにらんでいる。その数の多さにびっくりしました」

 「13時15分に開廷しまして、すぐに永渕裁判長が3人の被告人を前に立たせて『いずれも無罪です』と非常に軽々しく言った事を今でも覚えています。『え?』と。本当に『え?』という感じだったんです。法廷はザワザワとし、『酷い』とか『信じられない』とかの声があがったのですが、あっという間に衛視が飛び出してきて抑えるような状況でした」

 冒頭の写真は、武藤さんが団長を務める「福島原発告訴団」役員の人見やよいさんが描いた永渕裁判長のイラストだ。

 「永渕裁判長は本当に長々と判決の理由を述べました。3時間半にわたって、だらだらと続いたんです。永渕裁判長はほとんど顔をあげずに読み上げていました。必死に耳を傾けてメモを取ったのですが、裁判長の言葉など心の中には入って来ませんでした。私は『もう良い』、『もう聴きたくない』と何度も叫びたくなりました。我慢しましたが、閉廷直前に『この判決は間違ってる!』と大きな声が口をついて出てきてしまいました」


講演で「本当に悔しい、納得出来ない。そういう判決でした」と語った武藤類子さん。海渡雄一弁護士は「指定弁護士が控訴を決断するには世論の後押しが必要」と署名への協力を求めた=衆議院第一議員会館

【「控訴へ世論の後押しを」】

 武藤さんは最後に、集まった人々へ署名への協力を求めた。
 「ぜひ控訴をしていただきたいという署名運動を展開しています。なぜこのような事をしているかというと、控訴をする権限は私たちにはありません。検察官役の指定弁護士だけに与えられている権限です。私たちはぜひ控訴をして欲しいとお願いをしています。控訴期限は判決日から2週間後の10月2日です。ぜひ、多くの方に指定弁護士の背中を押していただきたいです」

 控訴について、代理人を務める海渡雄一弁護士がこう解説する。
 「指定弁護士は少なくとも公式の場では控訴すると表明していないし、先日会った時も、控訴するとは言われなかった。5人集まって控訴をするか否かの会議を開く事はどうやら決まっているようです。署名を集めている事も伝えてあります。署名に添えられた意見も印刷して手渡しました。控訴審での課題もあるし、双葉病院に入院していた方の遺族にも意見を聴いているはずです。最終的な判断は10月2日の控訴期限ギリギリになると思います」

 控訴が正式に決まっても、再び指定弁護士の選任手続きがある。海渡弁護士は「ぜひ控訴審も5人の指定弁護士に担当してもらいたい」と話す。

 「『くたびれたから控訴審は別の弁護士に引き継ぎたい』と言われてしまう可能性もあります。判決直後の記者会見でも『疲れた』とおっしゃっていましたから。私たちとしては、他の弁護士に引き継いでまともな訴訟活動が出来るとは思えないし、あの5人のチームに引き続きやってもらいたいです。現時点での課題は2つあるんです。控訴をするかどうか。控訴をしたとして、誰が指定弁護士になるか。推薦するよう求められたら、弁護士会はあの5人に再度引き受けるか否かの意思確認をするはずです。引き続きやってもらうためにも、強い想いを指定弁護士に伝える事が大事です。あと何日もありません。もう少し危機感を持って欲しい」

 ネット署名は1万2000筆を超えた。


2012年6月11日、福島地検に告訴状を提出してから7年余。2度の不起訴処分、強制起訴を経てようやくこぎつけた判決は「全員無罪」。武藤さんたちは同じ指定弁護士による控訴審を望んでいる。控訴期限は10月2日=福島県福島市

【「絶対的安全、前提で無かった」】

 武藤さんたち1324人は2011年6月11日、原発事故に対して国や東電旧経営陣ら40人余りを業務上過失致傷罪に問うべく、福島地方検察庁に告訴状を提出した。2013年9月には、東京地検が全員の不起訴を決定。旧経営陣に絞って申し立てた検察審査会で2014年7月、「起訴すべき」と議決されたが東京地検は再び不起訴処分。2015年7月、検察審査会による2回目の議決を経て、2016年2月、3人が強制起訴された。2017年6月の初公判以来、これまでに37回の公判が開かれた。

 求刑は禁固5年だったが東京地裁は今月19日、勝俣恒久被告(元会長)、武黒一郎被告(元副社長)、武藤栄被告(元副社長)の3人全員に無罪の判決を言い渡した。判決要旨の「結語」の中で、このように綴っている。

 「本件事故の結果は誠に重大で取り返しのつかないものであることはいうまでもない。そして、自然現象を相手にする以上、正確な予知、予測などできないことも、また明らかである。このことから、自然現象に起因する重大事故の可能性が一応の科学的根拠をもって示された以上、何よりも安全性確保を最優先し、事故発生の可能性がゼロないし限りなくゼロに近くなるように、必要な結果回避措置を直ちに講じるということも、社会の選択肢として考えられないわけではない」

 「しかしながら、これまで検討してきたように、少なくとも本件地震発生前までの時点においては、賛否はあり得たにせよ、当時の社会通念の反映であるはずの法令上の規制やそれを受けた国の指針、審査基準等の在り方は、上記のような絶対的安全性の確保までを前提としていなかったとみざるを得ない。確かに、被告人ら3名は、本件事故発生当時、東京電力の取締役等という責任を伴う立場にあったが、そのような立場にあったからといって、発生した事故について、上記のような法令上の規制等の枠組みを超えて、結果回避義務を課すに相応しい予見可能性の有無に関わらず、当然に刑事責任を負うということにはならない」

 「以上の次第で、被告人らにおいて、本件公訴事実に係る業務上過失致死傷罪の成立に必要な予見可能性があったものと合理的な疑いを超えて認定することはできず、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、被告人らに対し刑事訴訟法336条によりいずれも無罪の言渡しをする」

(了)

あわせて読みたい

「福島第一原発事故」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    森ゆうこ氏の「圧力」に応じない

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  2. 2

    JESSE被告 大麻はフジロックでも

    阿曽山大噴火

  3. 3

    日本へ謝罪求め続ける韓国に疑問

    諌山裕

  4. 4

    大嘗祭反対集会? 朝日記事に疑問

    和田政宗

  5. 5

    又吉直樹の新作に直木賞作家驚き

    BLOGOS編集部

  6. 6

    桜を見る会予算を国民向けに使え

    柚木道義

  7. 7

    衆院解散で追及をかわす安倍首相

    早川忠孝

  8. 8

    「山本太郎都知事」はあり得るか

    PRESIDENT Online

  9. 9

    朝日のがん治療本PR見直しを称賛

    中村ゆきつぐ

  10. 10

    嵐の公式LINEペナルティで消滅?

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。