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キングオブコント2019を制した「大きなイチモツ」 巨根ネタは時代の経済を映す鏡

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「キングオブコント2019」で優勝したのは、シモネタなミュージカルで「♪おおっきな、イチモツを、く・だ・さ・いっ~」と連呼したどぶろっくだった。お笑い界屈指の賞レースを100%のシモネタが制するという結果に唸った。

シモネタのバカバカしさは大好きだ。だが、一般人の会話に含まれる無節操なシモネタとは違い、プロの、商業的エンターテインメントの、ビジネスとなる場でのシモネタは、とくに笑いのジャンルにおいて節操を有するものと考える。

シモネタは笑いのドーピング

BLOGOS編集部

基本的に日常から隠されているものを露わにすることで成り立つシモネタには、人前で口にすることの「はしたなさ」「背徳感」のようなものがあり、それを用いるという「反則性」が笑いを醸す装置になっている。ゆえに正道ではない邪道、それを暗黙にわきまえた上で成り立っているのが、プロの、商業的エンターテインメントの、ビジネスとなる場での、シモネタであると考える。

もう少し強引に括れば、老若男女の誰でも笑う(可能性が高い)カンフル剤であり、笑いのジャンルにおいてはドーピングをしているようなものだ。笑いへの距離が近い分、中毒性も高い。ゆえに、この反則性を自覚した上で、適度な節度をコントロールできることが、職業としてのシモネタにとって必須条件になる。

どぶろっくはそれらを踏まえて爆笑を起こし、キングオブコントの頂点に立った。のだけど、それにしても審査員が幾度か発していた「後半に爆発的な笑いがあれば」という理想を満たしたのが、反則性込みのシモネタで、シモネタであることがさほど評価の足枷とならず、その他のシモネタではないコントを蹴散らしてしまった結果に唸った。なるほど、そうなったか、と。

そうして唸りつつ、どぶろっくのネタに重なり見えたのが、若き日(1985年)のとんねるずが繰り出していたキャラクターコント「角田さん」だった。

「大きなイチモツ」で浮かんだとんねるずの記憶

Getty Images

「角田さん」は石橋貴明が演じる巨根の持ち主・角田さんが、木梨憲武が演じる様々な女性をこれといった理由もなく手籠めにして、巨根による妄想プレイを展開し、木梨が十八番のウラ声で「それそれ~」とあえぎ、スタジオにいるオールナイターズ(女子大生達)をキャーキャー言わせた、80年代深夜カルチャーの断片に記憶されるシモネタだ。

石橋は両手のマイムで巨根を表現。その巨根はあまりに大きく身長も身幅も凌駕し、石橋本人は自らの巨根の裏側に隠れていて見えない・・・という設定だ。石橋が木梨に声をかけると、木梨は「おかしいわ、声はするけど、誰もいない、誰なの?」とわざとらしく戸惑い、石橋が巨根をつかんで斜に傾げ、大樹の陰からひょいと姿を現し「俺だ!」と、(今から思えばひょっこりはん的に)登場するのがツカミだった。

どぶろっくの江口も両手を掲げる仕草で巨根のサイズ感を表現し、2本目のネタの中では巨根の影から姿を見せる仕草を見せていた。が、あれは、あの頃のとんねるずを知る世代にとっては紛うことなく角田さんそのものだ。

その記憶のせいで、若き日の(約35年前の)とんねるずがこのキングオブコント2019を制してしまったような感覚を抱いてしまった。

このアングルが妄想を連れてくる。審査員を見てみると、バナナマンもさまぁ~ずもとんねるずを見上げてきたリスペクト世代だ。ゆえに彼らがあの巨根ネタに最高評価を与えたことは腑に落ちる。そして松本人志――、松本もあの巨根ネタに最高点を与えた。つまり、ダウンタウンがとんねるずを優勝であると評価した、そんな妄想にかられた。

浜田雅功が「キングオブコント2019、優勝はどぶろっく!」と甲高くコールすると、映し出されるのは感涙のどぶろっくではなく、巨根を傾げ「俺だ!」と顔を出す石橋貴明。とんねるずとダウンタウンが時空を超えて巨根ネタで認め合う妄想的瞬間、それがもうひとつのキングオブコント2019だった。

2つの「巨根」ネタにみる世界観の違い

いらすとや

さて、どぶろっくととんねるず、それぞれの巨根は見た目こそ同じ、両手でつかんでそそり立つモンスタービジュアルだが、その実体はまったく違うものだ。

どぶろっくの巨根はメルヘンだった。ネタの世界観も手伝い牧歌的で絵画的、巨根はメルヘンに覆われていた。

一方でとんねるずの巨根はアクティブだ。石橋は巨根を使っていかに女性を攻めるかを動的なマイムで見せていた。立体的で暴君的。アクティブな石橋の巨根にはとんねるずの体育会系的ワルノリが詰まっていた。

そして、どぶろっくの巨根は物語の中で、江口が演じる男は小さいイチモツへのコンプレックスがあり、それゆえの「(貧しい農夫が不治の病にある母を救う薬よりも)大きなイチモツをください」という切実な願望につながる――、と文脈から読める。

チンコの大小に抱くコンプレックスの問題は、人類史でいつの時代からあったかは知らないが、「お笑い」という文脈の中で世に表面化したのはいつになるのか?

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