- 2019年09月26日 10:39
【読書感想】諦める力~勝てないのは努力が足りないからじゃない
2/2努力がすべてだと言われて僕は育っていたから、僕に敗れ去っていった選手に対してどこか努力が足りなかったんだろうという目で見ていた。でも、引退近くになり自分の実力が落ちていくなかで、努力量と実力は比例しないのを知った。スポーツはまず才能を持って生まれないとステージにすら乗れない。僕よりも努力した選手も一生懸命だった選手もいただろう。でも、そういう選手が才能を持ち合わせているとはかぎらない。
そもそもこの勝利が自分でつくり上げたものでないなら、自分の役割は何なのだろうか。現役の最後は、もう自分の身体が自分のものだけではない感覚で競技を続けていた。自分が自分であることに理由はなく、ものごとにも因果なんてなく、真面目な人に災害が降りかかり、何も考えず平穏無事に暮らしている人もいる。世の中は不条理で、それでも人は生きていくしかない。
一方で、理屈ではどうしても理解できない、努力ではどうにもならないものがあるとわかるためには、一度徹底的に考え抜き、極限まで努力してみなければわからない。そして、そこに至って初めて見えてくるものもある。
為末さんは、以前は「「努力至上主義者」であり、自分に敗れた人たちは「努力が足りなかったのだ」と思っていたそうです。
それが、年齢にともなう自分の身体の変化や災害に遭った人たちのことを知って、「初めて見えてきた」のだと仰っています。
「あなたはオンリーワンだからそのままでいい」という考え方の落とし穴は、社会に存在する物差しで自分を測ることを諦めなさい、というところである。どんなに恵まれている人でも、自他ともにオンリーワンと言いきれるほど特徴がある人間なんてほとんどいないから、「あなたはあなたのままでいい」という言葉を疑いなく受け入れられるほどの自己肯定感は、「社会側から自分は一切認められなくてもいい」という諦めと一体なのだ。
僕は人間なんてみんな一緒で個性なんてないのだから、何者かになる必要なんてないと言われたほうがほっとする。
あなたがオンリーワンかどうかは他人が決めている。「誰もが特別なオンリーワンなのだから自信を持とう」というロジックは、「悲しみも脳の勘違いにすぎないのだから気にするな」というのに似ている。そう言われても悲しみがなくならないように、いくらオンリーワンと太鼓判を押されても、自信が持てるわけではない。
自分らしくあればいいと言われても、自分らしさとはいったい何かということがわからないから人は苦悩しているのだ。そんな人に「そのままでいい」と言ったところで、むしろ「自分らしさを持たなければならない」とさらに追い詰めていることになりはしないか。
究極的には、誰にも自分らしさなどないのではないかと思う。
まあ、「それぞれ特別なオンリーワン」って歌っていた人たちは、誰もが知っている国民的グループでしたし、この本だって、トップアスリートの為末さんの本だから手に取るのであって、書いているのが、どこの馬の骨だからわからないオッサンだったら、あんまり説得力はないんですけどね。
諦めるのは、ネガティブなことではなく、「選ぶ」ことのひとつの形なのだ、ということが丁寧に語られている本です。
為末さん自身も、この心境に至るまで、いろんな葛藤があったのだということも、伝わってきます。
諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉
作者: 為末大
出版社/メーカー: Audible Studios
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逃げる自由 〈諦める力2〉
作者: 為末大
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限界の正体 自分の見えない檻から抜け出す法
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