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Nスペ「2019ラグビーW杯」シリーズ・“世界最強”神髄に迫る 新しい映像システムと科学が強豪チームを裸にする - 田部康喜 (コラムニスト)

2019年ラグビーW杯が9月20日に開幕して列島に熱狂が広がっている。NHKスペシャルはこの大会をきっかけとして、ラグビーの魅力をシリーズで取り上げようとしている。第1回「“世界最強”神髄に迫る」(22日)は、史上初の3連覇に挑戦する、ニュージーランドのオールブラックスと、ライバルのオーストラリアチームを中心にすえて、最強チームの強さを掘り下げた。

Matrosovv / gettyimages

前回大会で、世界ランキング3位の南アフリカを破って「史上最大の番狂わせ」をもぎ取った日本は、今大会で予選リーグを勝ち上がってベスト8の期待がかかる。これまでのオリンピック・パラリンピックやサッカーW杯の報道を顧みれば、日本の勝ち負けにこだわるあまり、歓喜と落胆ばかりが目立ったのではなかったか。

競技自体のルールや基本的な技術、競技が持っている精神について、ていねいに報道した番組は少なかったように思える。その意味では、今回のNスペのシリーズは異彩を放っている。

ラグビーは、試合が終了する「ノーサイド」となると、対戦チームがそれぞれをたたえ合う。互いに握手を交わす。「リスペクト」の精神が根底に横たわっている。発祥の地であるイングランドで、紳士のスポーツあるいは、かつては上流階級のスポーツといわれた由縁である。

番組のなかで、前大会で正確なキックの成功率を誇った、五郎丸歩が南アフリカを破った直後のことを振り返った。

「南アフリカは、負けたのに彼らのほうから(日本チームに)歩み寄ってきて、勝利を讃えてくれた。はしゃぎ合っていた我々は、恥ずかしかった」

今大会の報道では、前回大会の対南アフリカ戦の最後の劇的なトライが、繰り返し映像となって流れている。勝利後のシーンで、もうひとつのドラマがあったのである。

シリーズ第1回において、世界最強のチームの神髄に迫った武器は、ラグビー場にすえた最新鋭のカメラ100台による「自由視点映像」の力である。通常の中継映像ではとらえきれない、3Dによる360度の映像は、さまざまな角度から選手の動きや視線などについて、映像を止めたり、巻き戻したり、進めることによって分析している。

優勝候補の筆頭にあげられる、オールブラックスは「変幻自在の攻撃」でライバルを撃破してきた。変幻自在とは、キックからもパスワークからもトライにつなげることができる。それも瞬時のキックとパスワークを変えてくる。

チームの司令塔である、スタンドオフのボーデン・バレットのインタビューに1年越しでこぎつけた質問者が「どのようにして変幻自在な攻撃ができるのか」とたずねた瞬間に、立ち会っていたスタッフが「戦術にかかわることなので答えられない」という。

バレット自身もユーモアたっぷりに次のように答えるのだった。

「いい質問ですね。でも(質問に答えたら)W杯に出られなくなります」

最新カメラ技術で迫る選手の視線

今回の番組は、昨年10月のオールブラックスとオーストラリア戦において、撮影した「自由視点映像」から、秘密に迫った。まず、オーストラリア陣地の奥まで迫った、バレットが迫る敵陣に対して、体を前に倒して自分の股の間から味方にパスしたトリッキーなスーパープレーの分析である。次に、守備から攻撃に移る「ターンオーバー」の瞬間に、全員が一瞬にして攻撃に移る巧みさである。

前回大会の日本チームで、エディ・ジョーンズコーチの片腕となって、戦略、戦術を組み立てた、沢木敬介は自由視点映像のオールブラックスの動きを見て「選手の視線のクセがみてとれて面白い」という。

オーストラリアの15回にも及ぶ連続攻撃をしのいだ、オールブラックスは敵がパスミスしたボールを奪った瞬間に攻撃に出る。この直前のスタンドオフのバレットの視線を自由視線映像で追っていくと、彼はチームの後方に位置して、攻撃に移った場合に味方にパスがしやすいスペースを探して、視線を縦横に走らせている。オーストラリアチームが連続攻撃によって披露して、視線がうつむいている瞬間に、バレットは味方の選手ともアイコンタクトなどによってスペースの位置について、情報共有している。

オールブラックスの強さの秘密は、相互の信頼と瞬間の情報共有にあったのである。チームのモットーとして、マオリ語の「ファーナウ(家族)」がある。

チームのなかには、マオリを祖先に持っている者、入植した欧米系の者、隣国の島諸国からきた者など、多様性に富んでいる。「ファーナウ」に一致団結する厳しい練習と連帯がある。

筆者は、日本と同じ予選プールのアイルランド対スコットランド戦を観戦した。スコットランドに1トライも許さないアイルランドの攻撃と守備に死角はないように、素人目には見えた。

第2回は「日本代表 “奇跡”の先へ」(9月27日)である。大会の進行とともに、ラグビーの魅力を伝えるシリーズに期待したい。

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