- 2019年09月26日 08:23
出戻り社員、リファラル採用…「縁」を積極的に活用する人事戦略 新ビジネス創出のキーマンとなるか? - 濱崎陽平 (Wedge編集部員)

新たな価値を創造するための働き方が模索されているが、同時に人材の採用や運用の見直しも行われている。大手企業でも注目されはじめたのが、「縁」を生かした採用戦略である。他社に転職した元社員を「出戻り社員」として受け入れる企業が増えている。
クラレは退職者へのアプローチを通じ、出戻り社員獲得に向けて今まさに動き出そうとしている。その背景には離職者の増加がある。かつては1割にとどまっていた入社10年時点の離職率が、ここ数年は「新たな環境で挑戦したい」などの理由から2割を超えるようになっていた。人事部長の石川智章氏は、研修など時間をかけ育てた社員が流出することに危機感を抱いていた。
一方で石川氏は、「もし戻れるならまたクラレで働きたい、力を発揮したい」と現社員との懇親の場などで話す退職者が多いことも耳にしていた。特に、ベンチャーや外資系に転ずる社員が多いため、石川氏は「クラレをよく知っている上に、全く異なる場で培った企業文化や知識を持ち帰って活躍してもらいたい」という思いから、9月から元社員を対象とした「カムバック制度」導入を決定した。
また、出戻ることに対する心理的なハードルを下げる仕組みとして、退職者同士、また退職者と人事担当者が情報交換できるシステムも完成させる。まずは人事部門を中心に、社内で退職者とのつながりを多く持つ社員に協力してもらい、プライベートでの飲み会などで元社員の同期らにカムバック制度や退職者コミュニティーの存在を知らせる。
クラレと退職者のコミュニティー構築を推進した、ハッカズーク代表取締役の鈴木仁志氏は「最近、再雇用を見据えた企業から、退職者とのコミュニケーション構築に関する問い合わせが増加している」と語る。企業と退職者らの関係に変化が起きている。
このように、出戻り社員の受け入れは広がり、企業の期待も大きい。出戻り社員に関してエン・ジャパンが実施したアンケート(表)によると、受け入れ経験のある企業が再雇用した理由として、「即戦力を求めていた」「人となりが分かっているため安心」などの声が多く、退職後の企業での経験や、既存社員への刺激を期待する声も聞かれる。
一方で否定的な声も少なくない。「自らの意思で退職した社員をなぜ戻すのかという反発が非常に強かった」など、退職した事実をよく思わない社員の声も上がる。再雇用する予定はないと回答した企業からは、「退職時に会社や上司に対して何らかの不満があったのだろう。再入社後にそれが解消するのか」と辛辣な声もある。実際、最近出戻り社員を受け入れ始めた企業の人事担当者は、「出戻り社員を『裏切り者』と考える社員も一部いるようだ」と声を潜める。
また、いい人材を獲得するために企業が採用形態を変化させる動きもある。社外の優秀な知り合いを社員に紹介してもらい選考を実施する「リファラル採用」。エン・ジャパンが約500社を対象にしたアンケート、「リファラル(社員紹介)採用について」(2017)によると、実施している企業が約6割に上り、そのうち3割が制度化している。また企業側の考えるメリットとして、「採用コストが削減できる」「ミスマッチのない採用ができる」「紹介者である社員のモチベーションアップ」などが挙げられている。
富士通ではキャリア採用の一環として昨年から導入。そのメインターゲットはエンジニアだ。自動車業界や金融業界などとの熾(し)烈な人材獲得競争においては、従来のようにエージェントに頼り人材の応募を待つだけの形に限界を感じていた。
そこで頼ったのが、社員の人脈だ。「いいエンジニアはいいエンジニアを知っている」(人材採用センターマネージャーの黒川和真氏)。社員が紹介した応募者が面接を経て入社すると、その社員に10万円のインセンティブが支払われる。昨年度は約2000人の社員が活動に関わり、約20人が入社した。優秀な人材が採用できたという。
Wedge10月号誌面では、活躍する出戻り社員の声とともに、受け入れに当たっての課題などを、日立、三井物産、森永乳業の事例から読み解く。三井物産では、退職者とのつながりを重視、数年前からは会社幹部自ら退職者らと接する機会を持つ。その経緯についても誌面で紹介。前述のクラレはこの三井物産の取り組みに注目し、制度設計に至ったという。
またリファラル採用で約20人の入社に成功した富士通だが、反面、思わぬ課題も見つかったという。その課題とは。また、社員の半数がリファラル採用を通じて入社したメルカリ。メルカリ流の「リファラル採用成功の秘訣」とは。ともに、Wedge10月号で紹介する。
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