- 2019年09月25日 17:49
タピオカドリンクに燕の巣? 一流ホテルによる中国料理のコラボレーション3選
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中国料理のフェア
中国料理はフェアを行うのが難しいジャンルのひとつです。
なぜならば、中国料理は「日本人が最もよく知り、馴染みのある外国料理」であるだけに、フェアの企画を考案するのが難しいからです。
イノベーティブな中国料理であれば、日本人は中国料理を熟知しているだけに、食べ慣れていない中国料理を簡単に受け入れることができません。しかし反対に、あまりにもオーソドックスであれば、メディアに注目されたり、リピーターをはじめとするゲストに印象づけたりすることができないでしょう。
そのような状況の中で、目を引くコラボレーションを行っているホテルの中国料理店がこの時期にもあります。
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それぞれの詳細や背景を紹介していきましょう。
唐宮(ヒルトン東京お台場)

ヒルトン東京お台場の中国料理「唐宮」では2019年9月1日から10月31日にかけて「中国料理唐宮 新料理長 東郷裕之 就任記念特別コースメニュー」が提供されています。
「中華とフレンチの饗宴」として、新料理長である東郷裕之氏と「ミシュランガイド京都・大阪」で2012年から7年連続で1つ星を獲得しているフランス料理「Restaurant MOTOI」の統括シェフ前田元氏のコラボレーションが行われているのです。
中国料理とフランス料理が一緒になったコースはなかなかありませんが、どういったものなのでしょうか。
コース内容

このコラボレーションのディナーコースは次の通り。
饗宴 ~晩餐~
- アミューズ
グジェールとウニのタルト
- 前菜
皮付き豚ばらの焼き物 広東式チャーシュー
- スープ
きのこのフラン 焼き栗のスープ
- 揚げ物
北京ダックとフォアグラのポワレ 無花果のコンフィチュール
- 海鮮
旬魚と金針菜の自家製XO醤炒め
- 肉料理
和牛のロースト 豆鼓のソース 農園直送野菜と共に
- ご飯物
オマール海老のおこわ 蓮の葉包み
- 麺物
鮮魚の清湯麺
- デザート
杏仁豆腐とマンゴーのヴェリーヌ
フランス料理と中国料理の皿が交互に提供されるという、面白いコースになっています。
最後を御飯や麺でしめていることから、中国料理の流れであることが分かりますが、御飯と麺の2種類用意されているのは珍しいことです。
注目料理

「きのこのフラン 焼き栗のスープ」は香りのよい焼き栗のスープで、底にはなめらかなキノコのフランがあります。二層になっているので、下まですくって食べると複雑な香りと食感を楽しめてよいでしょう。
「北京ダックとフォアグラのポワレ 無花果のコンフィチュール」は、巻かれていないので自分で好きなように巻きます。北京ダックにフォアグラのポワレを合わせるのは、新しい試みです。
「旬魚と金針菜の自家製XO醤炒め」は、金目鯛が適度に油を含んでいるのでリッチな味わい。自家製XO醤の香りが素晴らしく、金針菜や黄ニラが添えられています。

「和牛のロースト 豆鼓のソース 農園直送野菜と共に」は脂がしっかりとした黒毛和牛のランプ肉をロースト。重厚感はありますが、農園から届いた20種の野菜が付け合わされているので、バランスはよいでしょう。
「オマール海老のおこわ 蓮の葉包み」は、洋中折衷のアメリケーヌソースを用いたおこわ。蓮の葉もしっかりと香ります。
「鮮魚の清湯麺」は鯛の頭を出汁に使っているので、品のよい滋味が感じられ、添えられた松茸とユズのスライスがよいアクセント。
背景

中国料理とフランス料理のコラボレーションが行われることになったきっかけは何でしょうか。
実は、東郷氏と前田氏は、15年前に「唐宮」で共に働いたことがあります。東郷氏が三代目の料理長に就任するのを祝し、京都を代表するフランス料理のシェフの一人である前田氏に協力してもらって実現したフェアであるということです。
2019年6月末に企画が持ち上がり、京都と東京を行き来しながら、二人で試行錯誤しました。そして、旬の食材を巧みに使用し、伝統的な広東料理を礎にしながらもフランス料理と調和した、新たな中国料理を完成させたといいます。
特にこだわっているメニューは、東郷氏が「旬魚と金針菜の自家製XO醤炒め」、前田氏が「和牛のロースト 豆鼓のソース 農園直送野菜と共に」。
東郷氏のこだわりは、自家製XO醤に塩漬けのイシモチ「ハムユイ」ではなくアンチョビを使ったことです。
中国料理では通常さっと火を通しますが、塊肉にじっくりと低温で火を入れ、最後に高温で香ばしく仕上げたのが、前田氏のこだわり。農園直送の野菜のおいしさを引き出すために、種類ごとに火入れする手間をかけ、今までの中国料理にはない味わいとテクスチャを楽しめるようにしたのも、特筆するべきところでしょう。
コラボレーションの苦労として、東郷氏は京都と東京で前田氏が指定した食材や機材を集めるのが大変であったこと、前田氏は約15年ぶりに「唐宮」の調理場に立ったことを挙げています。
これから

前田氏と東郷氏の先輩後輩という関係性があり、そして、互いにリスペクトし、信頼し合っているからこそ、フランス料理と中国料理の饗宴が実現しました。
異なるジャンルなので、食材や調理方法および器具が違っており、苦労もあったといいますが、2回目以降はよりスムーズに進められるはずなので、今後もこの実力ある料理人のコラボレーションに期待したいところです。