
訪問介護や入浴などの介護保険サービスを受けるためには「要介護認定」が必要だが、介護アドバイザーの横井孝治氏は「介護保険要介護申請書の提出が最初の鍵」と指摘する。
「7段階に区分される要介護度が高いほど介護サービスの支給限度額が大きくなります。例えば最も認定されやすい要支援1の支給限度は月5万30円(※注)ですが、申請しないとサービス受給はゼロです」(横井氏、以下「」内同)
【※注/消費増税に伴い、10月1日から5万320円に改められる。要支援2(10万4730円→10万5310円)、要介護1(16万6920円→16万7650円)なども同様】

手続きにあたっては「主治医の選定」が重要だ。
「主治医が決まっていないと申請書を提出できません。申請しに自治体の窓口に行っても、主治医が決まっていないために書類への記入ができず無駄足になるケースは多い。遠距離に住む親の要介護申請だと、往復する交通費だけでもばかになりません。
認定には『主治医意見書』が必要ですが、実情を知らない医師だと適正な要介護度が認定されず、介護サービスの自己負担が増す怖れがある。
例えば要支援2の支給限度額は月10万4730円で、要介護1は16万6920円です。1段階低く認定されると月6万円(年72万円)以上の差が生じるので、意見書は普段から接するかかりつけ医にお願いすべきです」
介護保険要介護申請書を提出してからも“正念場”はやってくる。
「書類の提出後に、要介護度を測る『訪問調査』がありますが、介護を受ける本人が“まだまだ介護なんて要らない”と主張してしまい、要介護度が低く評価されたり、申請が通らなくなるケースは少なくない。それを避けるためには、家族が立ち会い、普段の生活状況を説明することが重要です」
なお、要介護認定はやり直しができる 原則、要介護認定のやり直しは1~3年に1度定期的に行なわれるが、心身の状況が大きく変化した場合などはいつでもやりなおしの申請を行なうことが可能だ。

親の介護などで仕事を休業する場合は、介護休業給付金を請求できる。
「要介護状態になった家族1人に対し、通算して最長93日分の介護休業が取得できます。雇用保険から賃金の67%が雇用保険から支払われて、30日分の上限は約33万円です」
給付金の申請には介護休業給付金支給申請書の提出が必須となる。
「この申請書には、勤め先が発行する『雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書』を添付する必要があります。
ところが中小企業の人事や総務がこの制度自体を知らないことがあり、『会社に問い合わせても“そんな制度は知らない”といわれ、手続きできなかった』という声は意外と多い。受給する側がきちんと制度を把握しておくことが重要です。会社に断わられても諦めず、正当な権利だと主張することが大切でしょう」
※週刊ポスト2019年10月4日号