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人を不幸にして動くお金も「GDP」にカウントされるなら、GDP成長に意味はあるのか?/イベント「GNHとGPI(真の進歩目標)~タシ・コールマン博士を迎えて」レポート

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各国の政府はGDP(国内総生産)の数字を重視しがちだ。しかしたとえば森を伐採し環境が破壊されても、戦争のための武器を販売して死者が増えようともGDPの数字は上がるということは、残念ながら重視されていない。つまり、GDPという指標は、「お金の動いた総量」を示すだけで、決して地球全体や人々の幸せ度を示すものではないのだ。

GDPではなく「GPI(Genuine Progress Initiative)」(真の進歩指標)の研究を続けてきた、タシ・コールマン博士(GPI指標考案者、カナダ)が2019年5月に来日し、講演した。


GDPは「お金が動いた」ということしか示さない。
それがいいことに使われようと悪いことに使われようと。

経済学者サイモン・ クズネッツがGDPという指標を考え出した頃、タシ・コールマン博士は当初GDPを重要なものとして捉え、いかにすべてを漏らさずに全体を把握するか、ひとつひとつの産業、ひとつひとつ分野ごとに総生産というのを見極めて、それが全体としてひとつの経済がどういう状況にあるか示そうとしてきた。

しかし、コールマン博士は次第にGDPには大きな欠陥があることに気づくようになる。 まだ木が切られていない森、魚が取られていない海。母から子への授乳や、親による子どもの養護。地域活動やボランティア。そういった「経済行為とは関係のないこと」は、GDPの中に“価値”として存在していないのだ。

一方で、戦争、病人が増えて薬が売れ病院が繁盛すること、タバコなどの体に悪い商品が売れることは、経済行為としてGDPが上がる。
また貧乏な人がより貧しくなり、富裕層にお金が集まる状態-巨額が富裕層間でのみ流通し、格差が広がれば広がるほど、GDPは上がり続ける。
お金がいいことに使われていても、悪いことに使われていても、GDPには関係ないことなのだ。

「“だからといってGDPの何が悪いんだ”と言う人がいるかもしれません。GDPという指標を設計した人が意図した点においては、確かにGDPは素晴らしい働きをするわけです。GDPという道具が悪いわけではない。問題はその道具というのは、ある目的を持っているわけだけれども、その目的以外のことはできないということなんです。

つまり、GDPが測る経済行為が人々に幸せをもたらすのか、不幸をもたらすのか、害をもたらすのか、益をもたらすのか、という点になると、GDPはまったく機能しなくなるということなんです。でもそれはGDPとう指標のせいではないんです。」とコールマン博士は言う。


「それなのに、世界中の政府はGDPと言う道具を使い、GDPによって測れないこと、つまり私たちが今、幸せかどうか、私たちの状態がいい状態であるかどうかまでも測ったつもりになっているのではないでしょうか。」

実はGDPを考案したサイモン・ クズネッツは、GDPが計測できるものは限られており、私たちの状態が幸せかどうか、社会が健全かどうかを測るものではないと警告していた。しかし、世界の大半の人はその事実を見て見ぬふりし続けている。

様々な心ある経済学者たちも、GDPが測ることのできなかった「社会の健全さ」「社会の幸福度」をどうすれば判断し、測ることができるのかを考えてきた。しかし博士には「自分たちの社会が幸せだという指標があるのなら、なぜどの政府も使ってないのか」が長く疑問だった。

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