
【「理屈じゃ無いですね、これは」】
これが彼の全てだった。「理屈じゃ無いですね」
18分間の記者会見の締めくくり、ついに、あの言葉が進次郎大臣の口から出た。
「(原田前環境大臣の発言は)率直に申し訳ないと。野崎さん(福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長)は昨日(9月11日)言ったように前から知ってますし、どれだけ素晴らしい方か知ってるし、その方が、本当にいろんな方の声を聴きながら歯食いしばって立ってるの分かってますから、その方を苦しめるような事があって、いくら私が大臣になる前の事とはいえ、大臣として、その想いを伝えなければいけない。まさにそれこそ信頼にかかわる事で、今日も知事も8年前の出会いのところからお話が出来るのもすごく大事な事だし、吉田栄光議長とも『はじめまして』じゃ無いところから始められる。私が福島県の課題に取り組む中で自分の中で財産だと思っている事は、いまこうして環境大臣として就任のあいさつに廻っていても、『はじめまして』と言う事の方が少ないです。そのスタートが切れるというのは課題解決に向けて、理屈じゃ無く大切な事だと思っています。なのでまず、岸会長(全漁連の岸宏会長)に会う。そして小名浜に行く。行く事に意味がある。理屈じゃ無いですね、これは。信頼というのはそういうものだと思っています」
汚染土壌の県外搬出も汚染水の処分方法も「理屈じゃ無い」という事か。それまで饒舌だった進次郎大臣も、具体策について問われると、途端に言葉が少なくなった。
「住民の皆さんの理解というのは最も大切。その事に変わりはありません」
「あらゆる声に耳を傾けて、良く考えていきたいと思います」
2045年までに最終処分場を福島県外に用意するという「約束」。これも「必ず守る」と述べるにとどまった。
「この原発事故に伴う汚染土の課題も、中間貯蔵搬入を安全にやっていく事も、そして、今おっしゃった『30年』という福島の皆さんとの約束も、全てにおいて大事なのは『地元の方の理解無くして実現無し』。その事が最大、一番忘れちゃいけない事だと思いますので、それを忘れずに一つ一つの課題が前に進み、復興が前に進んでいく事を考えて取り組んでいきたいと思います」 「まず目の前の課題を着実に進める事。そのためにも中間貯蔵が今年度は搬入量が昨年度よりも増えますし、それに伴う安全に進めてもらいたいという県民の皆さんの想い。これを裏切る事無く、ちゃんと進めていくようにしっかりやる。これも、約束を守るという意味においてはとても重要な事ですから、中間貯蔵を含め、課題となっているものすべてに対して、着実に進めていきたいと思います。30年の約束。この約束も必ず守れるように取り組みを進めます」


大勢の取材者が見守る中、福島県知事と会談した小泉進次郎環境大臣。内堀雅雄知事からは「苦渋」、「信頼」の2文字を忘れぬよう求められた=2019年9月12日、福島県庁