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悪徳政治家と"出稼ぎ留学生"をつなぐ利権の闇

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■人材派遣会社がビザ申請をしていた謎

さて、今回の案件では、人材派遣会社が外国人のビザ申請をしていた。一般の企業ではなく、なぜ人材派遣会社だったのか。

外国人労働者の増加は、人材派遣業界にとって大きなビジネスチャンスとなっている。今年4月から始まった新在留資格「特定技能」による受け入れ制度では、人材派遣会社は「登録支援機関」として、実習制度の監理団体に似た役割を果たせる。

「特定技能」は実習制度と同様、人手不足の職種に外国人労働者を供給するためにつくられた。介護や建設、外食、農業などの14業種において、当初の5年間で34万5000人の受け入れが見込まれる。人材派遣業界が色めき立つのも当然だ。

そして、すでに同業界の参入が目立つのが、ホワイトカラーの仕事に就く外国人の就職斡旋(あっせん)である。ホワイトカラーの外国人が日本で就労ビザを得る場合、経営者や医師、大学教授などを除き、多くは「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(通称・技人国ビザ)を得る。技人国ビザは原則、日本で専門学校か大学を卒業、もしくは海外の大卒以上の学歴がある外国人に限って発給される。

今回、上野氏が関わった案件に登場する人材派遣会社の場合、海外の人材をリクルートしていたのだと思われる。就労や留学で新たに入国する外国人のビザ取得に必要な「在留資格認定証明書」を申請していたからだ。一方、人材派遣業界が海外人材にも増して注目しているのが留学生である。

■「口利き疑惑」は氷山の一角でしかない

近年、日本で就職する留学生は増え続けている。法務省によれば、2017年には前年から約15パーセント増えて2万2419人と、過去最高を更新した。5年前と比べて2倍以上の急増だ。安倍政権が16年に発表した「日本再興戦略」(成長戦略)で、留学生の就職率アップを掲げたことが大きく影響した。当時は約35%だった就職率を5割まで引き上げようという政策である。

この政策によって、技人国ビザの発給基準が大幅に緩んだ。前回の拙稿「外国留学生急増の裏で進む“偽装就職”の闇」(5月24日)で詳しく書いたように、技人国ビザで認められるホワイトカラーの仕事に就くように見せかけ、実際には弁当工場などでの単純労働に従事する“偽装就職”も横行している。

そもそもホワイトカラーの仕事では人手不足は起きていない。外国人労働者を欲しているのは、日本人の嫌がる単純労働の職種なのである。そうした“偽装就職”の斡旋に、人材派遣会社が関わることが少なくない。留学生から数十万円の手数料を取ってのことだ。

もう一つの「成長戦略」である「留学生30万人計画」達成のため、政府は留学ビザの発給対象にならないはずの外国人の入国を認め続けてきた。結果、ベトナムなどアジア新興国から、出稼ぎ目的の“偽装留学生”が大量に流入した。そんな彼らを底辺労働者として都合よく利用してきた日本は、今度は留学生の就職率アップという政策を通じ、この国へ引き留めたいのだ。

外国人労働者急増の裏には、民間業者から政治家、官僚まで“オールジャパン”で加担する数々のインチキと利権の闇が広がっている。上野氏の“口利き疑惑”は、氷山のごく一角が露呈したにすぎない。

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出井 康博(いでい・やすひろ)
ジャーナリスト
1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『The Nikkei Weekly』の記者を経て独立。著書に、『松下政経塾とは何か』『長寿大国の虚構―外国人介護士の現場を追う―』(共に新潮社)『年金夫婦の海外移住』(小学館)近著に『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)がある。
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