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悪徳政治家と"出稼ぎ留学生"をつなぐ利権の闇

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8月に厚生労働政務官を辞任した自民党の上野宏史氏は、外国人労働者の在留資格を1件2万円で口利きしようとした疑惑が報じられた。ジャーナリストの出井康博氏は「外国人労働者の急増に伴い、政治家たちの利権も膨らみ続けている。今回の疑惑は、氷山のごく一角が露呈したにすぎない」と指摘する――。

厚生労働政務官を辞任する原因となった口利き疑惑について記者の質問に答える自民党の上野宏史衆院議員=2019年9月11日 - 写真=毎日新聞社/アフロ

■外国人のビザ審査をめぐり、疑惑が浮上

『週刊文春』のスクープで、厚生労働政務官を務めていた上野宏史・自民党衆院議員の“口利き疑惑”が発覚した。外国人の在留資格審査に関して法務省に口利きをし、見返りとして民間の人材派遣会社からカネを受け取ろうとしたとの疑惑である。1件の口利きにつき「2万円」といった秘書らとやりとりの録音まで暴露された。

国会議員や秘書が公務員への口利きによって報酬を受け取れば、「あっせん利得処罰法」に問われる。また、口利きに効果があったように装ってカネを取った場合は、詐欺罪の対象となる。上野氏は疑惑を否定したが、政務官を辞任することになった。

問題の案件は、人材派遣会社とコンサルティング契約をしていた女性経営者から上野氏に持ち込まれたという。文春の取材に対し、人材派遣会社は在留資格を申請した外国人のリストを上野氏に送ったことは認めたうえで、口利きの依頼はしていないと強調している。

一方、同誌に載った上野氏と女性経営者の会話からも、2人にはこの会社からカネを取る目的が明らかにあったと思われる。

■口利きの“余地”がある入管行政の実態

在留資格の申請をしていたのが人材派遣会社であることから、案件は外国人の就労ビザ取得に関するものだったのであろう。人手不足の深刻化によって、日本で働く外国人は急増中だ。厚生労働省の調べでは、外国人労働者は2018年10月時点で146万人を超え、過去5年間で倍増している。

就労ビザの発給基準も大幅に緩んでいるが、審査する入国管理当局に一律の基準があるわけではない。現場担当者の裁量で、発給の可否や審査期間が左右されることも少なくない。そこに口利きの“余地”が生まれる。

政治家による口利きが、実際に効果を発揮するのかどうかは不明だ。だが、外国人労働者の受け入れ現場を取材していると、政治家の陰が見え隠れすることはよくある。外国人の就労ビザ取得の現場で何が起き、いったいどんな外国人たちがビザを得ているのか――。

外国人労働者の受け入れに着目し、利権にしようと試みる政治家は上野氏に限ったことではない。多くの政治家はもっと巧妙に、合法的なやり方で利権を手にしている。例えば、外国人技能実習制度を通じた実習生の受け入れ事業である。

法務省によれば、外国人実習生の数は18年末には32万8360人に達し、やはり過去5年で2倍以上に増えている。実習制度に関しては、実習生の職場からの失踪をはじめ、数々の問題がメディアで頻繁に報じられる。同制度の根本的な見直しを求める声も多いが、逆に制度は拡大していく一方だ。その背景には、政治の利権が関係していることは間違いない。

■実習生を仲介するだけで「毎月3万~5万円」

政府は実習制度の問題に関し、実習生から多額の手数料を取っているような「悪徳ブローカー」の排除が必要だと強調する。だが、政治家自身がブローカーの役割を果たしている実態については、政府、そして大手メディアも全く触れない。

実習生の受け入れは、送り出し国と日本の双方に存在する仲介団体を通さなければならない。日本側では「監理団体」が、中小企業や農家といった受け入れ先への仲介を担う。監理団体は営利目的の仲介が禁じられていて、民間の人材派遣会社などの参入も認められていない。「事業組合」といった、一見公的な看板を掲げる団体しか監理団体にはなれないのだ。

しかし実際には、実習生の仲介はビジネスそのものだ。監理団体は「監理費」として、実習生1人につき月3万~5万円程度を受け入れ先の企業から徴収できる。仲介するだけで継続的に手数料が入るわけだ。その運営には、人材派遣会社や日本語学校などの経営者が関わっていることもよくある。

さらには、落選・引退した政治家の関与も目立つ。実習制度は1990年代初めにつくられたが、当初は「中国人実習生の受け入れは社会党、その他のアジア諸国は自民党」という利権の棲(す)み分けもあったほどだ。利権は何も自民党関係者だけが独占しているわけではない。

■元閣僚や現職議員などが監理団体を統括

実習生の受け入れは、問題が起きれば入管当局とのやりとりが生じる。また、送り出し国側との交渉においても、「元国会議員」といった肩書が威力を発揮する。

実習生が急増しているあるアジアの国からの受け入れでは、つい最近まで監理団体を統括し、収入を得ている組織もあった。監理団体はこの組織にカネを払わなければ、実習生の仲介ができなかったのだ。

この組織のトップは閣僚経験もある元国会議員で、理事には与野党の現職議員から関係省庁の事務次官経験者、元大使まで名を連ねている。関係者の間では知られた組織だが、錚々(そうそう)たる理事たちの顔ぶれを前に、監理団体は従うしかなかった。

『週刊文春』2019年9月12号には、上野氏と問題の案件を仲介した女性経営者のこんなやりとりが載っている。

上野氏「(就労ビザの=筆者注)許可も極力速やかに出すようにするので、そこで二万ずつ手数料をもらうだけでも、まあ月に百万でも入れば」
経営者「そう。私ももうちょっと値上げとか取れる所があると思ったんで(後略)」
上野氏「三とか五(万円)にするとか」

人材派遣会社が外国人の就労ビザを取得できれば、彼らを取引先の企業に派遣して定期的な収入が見込める。その一部を上野氏らはハネようと考えたのだろう。しかし、口利きは完全な違法行為である。

そんなことをせず、上野氏も実習生の受け入れに裏で関与していれば、合法的に利権を手にできたかもしれない。だが、知り合いの経営者から持ち込まれた案件に飛びつき、結果として政務官の地位を失うことになった。

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