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オンエア素材の人物チェックに顔認識。日テレ参院選報道の現場はAIでこう変わった

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2019年7月21日に投開票された参院選。山本太郎氏率いる「れいわ新選組」や「NHKから国民を守る党」が議席を獲得するなど、話題が飛び交った選挙戦だった。

テレビでは開票速報によって誰が当選したのかリアルタイムで伝えられた。

日テレで2019年7月21日の地上波で放送された番組「NNN参院選特番 ZERO選挙2019」と「日テレNEWS24×参議院選挙2019」。その裏で、AIの顔認識技術を使った実験が行われた。映像内の人物と名前の間違いによる誤報を防止するための、確認作業の工数を大きく削減させたという。

プロジェクトを指揮した、日本テレビ放送網株式会社技術統括局の加藤大樹さんに話を聞いた。

誤報は人の人生を変えてしまう

参院選からさかのぼること1年前、日テレの技術統括局(社内の放送技術を統括する部署)に所属する加藤さんは最新技術の動向を調査していた。

技術動向を追うなかで、「AI顔認識」という技術の存在を知った。

加藤さんが以前所属していた「CVセンター(送られてくる素材を編集し、オンエア用の映像を作成する部署)」では、オンエア素材に映っている人物が本当に意図したとおりの正しい人物か確認するのに時間と労力がかかること、そしてごくまれに、取り違えて誤報が発生してしまうことが課題だったという。


――加藤
「正確性が命のニュース番組で誤報が起きれば、視聴者からの信頼を失います。それ以上に、誤報の対象となった当事者の人生を大きく変えてしまう可能性もある。その『ごくまれ』をゼロにしたいという思いがありました」

殺人事件の犯人とされた写真がもし間違っていたら?選挙で当選確実と表示された候補者が、実は違う人だったら?

すべての誤報がこのような深刻なケースではないものの、どうしてもまれに発生してしまうことがあったという。

参院選を想定し準備。紙資料で人物の顔と名前と照らし合わせる作業が大きな負荷に

加藤さんは誤報を削減する手段としてAI技術が使えるのではないかと思いつき、実験の場として、1年後に予定されていた参院選の報道を想定し準備を始めた。

――加藤
「選挙特番を選んだのは、テレビ局の番組の中でも最高ランクの正確性と迅速性が求められる番組であり、AI顔認識の効果を検証する場としてふさわしいと考えたからです」
CVセンターと呼ばれる、世界各地からの伝送素材を収録する場所。スタッフが画面を見て目視で素材をチェックしている

――加藤
「リアルタイムの会見などで人違いが起こると大変なことになるわけです。スタッフ一同、血眼になって画面を睨みつけ、間違いがないかチェックしています」

現場では編集スタッフ以外にも、ベテラン記者やディレクターなど100名体制で映像制作を行い、間違いが起きないよう二重三重にチェックをしている。

チェックの際は画面を目視し、オンエアされる人物の顔と名前をチェックする。名前と顔を紙資料にまとめておき、それを参照してチェックしたり、人物が所属する事務所のサイトを検索して調べたりなど、膨大な負荷がかかっていた。

選挙には多くの候補者がいる。有名な候補者ならまだしも、マイナーな候補者であればあるだけ参照には時間がかかる。ましてや報道現場は戦場のように忙しい。一刻も早く映像をオンエアしたいが「誤報を防ぐための確認作業の時間を減らすわけにはいかない」というジレンマがあった。

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