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認知症の親が見違える「有効な声かけ」実例

▼「ちょっと散歩に…」といって、真夜中に散歩に行こうとする

中等度以上に進行した認知症の人には、真夜中に限らず、散歩も含めて突然外に出たがる方がいます。


写真=iStock.com/bee32

時間の感覚がなくなっているようであれば、「今は、夜中だからお茶でも飲んでまた横になりましょう」と伝えて、ノンカフェインの温かい飲み物などを出してあげ、注意を外出から違う方向へと向けてあげるのがいいでしょう。

せん妄などの意識障害がある場合もあり、それに対しては適切な薬物療法が有効な場合があります。

また、こうした外出によって生活リズムが昼夜逆転している場合、それを元に戻す指導も必要になってきます。

▼ひとりでトイレに行けず、失禁してしまう

軽度の認知症であれば、廊下などに矢印を書いた紙を貼ってトイレの場所へ誘導してあげることで、改善するケースがあります。

また、トイレの時間帯などが決まっているのであれば、前もってトイレに誘導してあげることも有効な場合があります。

ただし、突発性正常圧水頭症や過活動性膀胱といった身体疾患が背景にある場合には、薬物治療を含めた適切な処置により改善する場合もありますので、きちんと医学的な評価をすることも大切です。

このケースに限らず、BPSD(認知症の周辺症状)の発生メカニズムには、身体疾患が背景にあることも多いのです。例えば便秘が続いており、うまく苦痛を表現できず気持ちが荒れていた方が、便秘を解消してあげたとたん穏やかになった、というケースもあります。

▼常に無表情で元気がなく、何にも興味を示さない

最初に体の病気がないかを調べることは、いうまでもありません。ご高齢の方は難聴や白内障など聴覚や視覚の低下のために、元気がなくなっている可能性もあり、注意が必要です。

血管障害を合併しているようなケースでは、さらに意欲が低下している場合があり、体操や散歩などの体を動かすリハビリが有効な場合があります。アルツハイマー型認知症による意欲低下が主体であるのなら、できるだけ声をかけてあげることが必要でしょう。話題は過去に働いていたときのエピソードなど、本人にとって興味がありそうなテーマがいいでしょう。

聞き手のほうは、「話し相手から学びを得たい」という心構えで接することが大切です。もちろん、人生の先輩としてこちらが学びを得られることも多くあります。

認知症の方は、相手がどのような聴く姿勢を持っているかを敏感に感じとります。また、いろいろな人が関わる中で、関わってくれる多くの人たちが、本人に対してポジティブなフィードバックをすることで、徐々に明るくなっていくケースをしばしば経験します。

人は、人間関係に悩むものですが、人間関係により励まされることもまた事実です。

▼「薬を飲みたくない!」とごねる

注意が必要なケースです。単なる拒絶ではなく、頭痛や便秘、悪心といった副作用を嫌がり、薬を拒否するという行動に出ている場合があります。

うまく副作用などを表現できず拒薬になっている場合は、「どうして飲みたくないのか」を本人に聞き、主治医にあらためて相談するのがいいでしょう。

また、漢方薬や口腔内崩壊錠など、普段内服している形と違う薬剤を嫌がる場合もあります。この場合、通常の錠剤に変更することで内服できる場合があります。

逆に、薬を飲みたくないという表現が、本人と薬をすすめる介護者との人間関係の中で起きている場合、第三者の方にすすめてもらうと、すんなり飲むこともあります。また薬を飲む理由を忘れてしまっているケースもあります。この場合は毎回、理由を丁寧に説明すると飲んでくれることもあります。

▼夏なのに、冬物のセーター、ダウン等を着ている

自然な口調で「今日は暑いね、ブラウスに着替える?」などと普通に声をかけ、できれば洋服を脱ぐ動作などを手伝ってあげるのがいいでしょう。

嫌がるようであれば、時間を置いて声をかけてあげましょう。

その際、「なんでこんな冬みたいな格好しているの!」と、季節はずれの格好をしていることを咎めるような言葉や、口調を使わないよう、注意をしなければなりません。あくまで自然な会話の中で、誘導できるように心がけましょう。

▼「家族に迷惑をかけるくらいなら、もう死にたい」と漏らす

どのくらい深刻に、死にたいという気持ちを表出しているかによります。

アルツハイマー型認知症などでも併存症として大うつ病が合併する場合もあり、その場合は大うつ病に準じた精神療法、薬物療法を行う必要がありますが、深刻度が高くない様子のときには、「あなたが生きているだけで、私は嬉しいよ」とごく当たり前のメッセージを伝えるのがいいと思います。

また、迷惑をかけるという言葉の裏に、家族と一緒に過ごしたいという気持ちが隠れている場合があります。この場合は、家族と一緒に過ごす時間を増やしてあげるのもアリですね。

また、ご高齢の方の中には、「もうそろそろおしまいにしたい」といったことを口癖のようにおっしゃる方がいますが、年を重ねて生きづらさを感じている一方で、生きたいという気持ちがせめぎあっているのだと思います。そんな場合「長生きしようね」と優しく声をかけてあげるのがいいかもしれません。

できるだけ身体的な苦痛をとる工夫をしつつ、生きることにフォーカスをしてアドバイスをするといいでしょう。

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内門 大丈
湘南いなほクリニック 院長
いなほクリニックグループ共同代表。認知症の在宅医療推進や認知症情報の情報発信に積極的に取り組む。『認知症の人を理解したいと思ったとき読む本』(大和出版)監修。
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(構成=山野祐介)

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