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穴を掘って、それを埋めれば実績ができる

 さて私の勤務先では、これまで外注していた業務を内製化する「改革」が進められています。事業部における今期の最重要課題として部門長肝いりのプロジェクトではあるのですが――同時に前年度からは、これまで内製していた業務を外注化する改革もまた進行中だったりします。

 外注と内製、どちらが有利かは状況により変わるものですから、内製化と外注化が並行して進められるのは、必ずしも笑い話ではないのかも知れません。もっとも、内製していた業務を外注化するのも、外注していた業務を内製化するのも、その移行のプロセスは簡単なものではないわけです。

 いずれにせよ、本当に必要なことであるならば、内製化であろうと外注化であろうと、それは進められるべきと言えます。ただ、この「必要」というのがどこから発しているのか、往々にして現場とは遠いところからのニーズが起点になっているのは、決して私の勤務先に限ったことではないように思います。

 現場に近い人間ほど当然ながら、それが不可能である理由を知っています。しかし会社で偉くなる人ほど、「できない理由を言うな」と、アメリカとの開戦に突入した軍首脳のごとき勢いで否定的な意見を一蹴するわけです。そして毛沢東の農業指導を彷彿させる専門知識を駆使し、こうすれば上手くいくのだと指令が飛ぶのですね。

 現場は「いらない」と思っていても、偉い人は「こういうのが必要だろう」と思い込んでいる、それはよくあることです。現場は「今まで通りのやり方で十分」と考えていても、偉い人は「こうすればもっと上手くいくのだ」と独自理論を持っている、実によくあることではないでしょうか。かくして私の勤務先では内製していたものを外注へ、外注していたものを内製へ切り替えようとしているのですが……

 諸悪の根源として、改革や変革そのものが評価の対象になりがちなところがあるように思います。結果として好転するか悪化するかは別問題、とにもかくにも変化こそが評価に繋がる、とりあえず私の勤め先は、そういう会社です。皆様のお勤め先は、いかがなものでしょうか。隣の芝生は青く見えがちですが、ヨソも大差ないのではないかとも。

 現状が上手く回っていたとしても、そのやり方を「変えよう」と声を上げれば、偉い人からは評価されます。反対に今までのやり方を続けようとすれば、偉い人からダメ出しを食うものです。結果がどうなろうと、変革に反対した人は「やる気がない」と烙印を押され、現場を引っかき回した人は「変革した」という実績が認められる、よくある話ではないでしょうか?

 現代日本の能力主義・成果主義が悲惨な結果しかもたらしていない理由としては、改革・変革ばかりを重視し、業務を「維持する」ことを軽視する風潮も大きいように思います。世の中そう都合良く右肩上がりで進んでいくことはできないもの、むしろ日本のような経済情勢では、現状を維持するのだって本来は大変なことなのですが。

 しかし、現状を維持する働きを、我々の社会と会社は、どれだけ評価しているのでしょうか。現状をキープする上で重要な役割を果たしている人を「ただ会社にいるだけ」みたいに軽んじ、あれやこれやと単に「今までとは違うだけ」のことを唱える人をチヤホヤし昇進させる、そういう組織は己の屋台骨を自ら脆くしていくものです。

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