記事

極超音速兵器開発の現状 2019年版

2/2

ロシア

1980年代から極超音速兵器技術の研究を手掛けていたが、加速したのは米国がミサイル防衛を米欧に配備したこと、2001年にABM条約から米国が脱退することに反応したところからである。

次の極超音速兵器計画がある;
  • 「アヴァンガールト(Avangard)」
  • 「3M22 ツィルコン(Zircon)」
  • 「Kh-47M2 キンジャール(Kinzhal)

アヴァンガールトは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)から極超音速滑空体を発射する。現在まだ開発中であるが、2016年と2018年12月に試験を成功させ、報告によると速度はマッハ20+に達した。米国情報筋によると、2020年までに運用される見通しはない。

ツィルコンは艦対艦・艦対地極超音速巡航ミサイルで、速度はマッハ6〜8。米国は2023年には運用開始と見ている。射程は約400〜965kmで、巡洋艦、コルベット、フリゲート、潜水艦に搭載される。

キンジャールはイスカンデルを改良して空中発射型弾道ミサイルと報じられている。2018年7月の試験ではMiG-31から発射され、約800km離れた標的を攻撃している。2020年までに配備されると見られる。ロシアはMiG-31とSu-34に搭載する計画である。Tu-22M3戦略爆撃機に搭載するよう取り組んでいるが、速度の遅い爆撃機がキンジャールを正確な発射範囲へ届けることは困難かもしれない。ロシアメディアはキンジャールの最高速度をマッハ10、MiG-31から発射される際の射程は1930kmまで到達すると報じている。機動的に飛翔して地上および海上目標を攻撃し、核弾頭も搭載できる。しかし、こうしたキンジャールのパフォーマンスに対しては懐疑的な意見が多い。

中国

中国が極超音速兵器を追及するようになった動機は、ロシアと同様に、米国の極超音速兵器が中国の核戦力や支援設備を先制・斬首攻撃を行うかもしれないという懸念を反映したものだ。米ミサイル防衛が中国の報復能力を制限しうる、というのもその一つである。

中国は通常弾頭極超音速滑空体(HGV)の研究、試験を継続しており、DF-21やDF-26といった弾道ミサイル戦力群とHGVを組み合わせてA2AD戦略を支援すると見られる。中国は極超音速兵器を核搭載型にするか、通常弾頭搭載型にするか、デュアルユースにするかを最終決断をしていないと伝えられる。

計画
HGV発射用に設計された準中距離弾道ミサイル「DF-17」の試験を多く成功している。DF-17の射程は1600~2415km。中国はICBM「DF-41」も試験しており、こちらには通常弾頭型と核弾頭型のHGVが搭載される。

「DF-ZF HGV(以前はWU-14と呼称)」を2014年以降少なくとも9回実施。射程は約1930kmで、極端な機動力("extreme maneuvers")を持つとされる。早ければ2020年には運用開始と見られる。

また、核搭載可能な極超音速体「Starry Sky-2 (or Xing Kong-2)」のプロトタイプの実験も2018年8月に成功した。DF-ZFとは異なり、Starry Sky-2は“waverider”であり、発射後に推進力が加えられ、自身の衝撃波から揚力を得る。中国航天空气动力技术研究院(CAAA)では、Starry Sky-2は最高速度マッハ6、2025年までに運用開始されるとも報じられている。

その他の国

オーストラリアは米国と共同して極超音速技術開発のためHypersonic International Flight Research Experimentation (HIFiRE) programを進めてきた。「HIFiRE」の試験は2017年7月にも成功を収めている。マッハ8の極超音速滑空体で、スクラムジェットエンジン技術で推進する。ウーメラ試験場にてオーストラリアは7回に及ぶ極超音速風洞実験を行い、マッハ30に達する実験能力がある。

インドはロシアと、マッハ7の「ブラモス2」極超音速巡航ミサイルを共同開発している。2017年に配備予定だったが、現在では2025年から2028年の間あたりに初期運用能力(IOC)を獲得するとみられる。インドは独自でも極超音速巡航ミサイル開発に着手しており、Hypersonic Technology Demonstrator Vehicle programの一環として2019年6月にスクラムジェット技術でマッハ6の試験に成功している。

フランスもロシアと共同して極超音速技術の開発をしてきた。 V-max (Experimental Maneuvering Vehicle) programの下、2022年までに「ASN4G超音速空対地巡航ミサイル」を改良して極超音速飛行をさせる計画だ。V-max programはフランスの戦略核兵器に含まれると見られている。

ドイツは2012年に試験的極超音速滑空体「SHEFEX II」の実験に成功しているが、報告ではすでに計画資金を引き揚げたとされる。ドイツ航空宇宙センター(DLR)が欧州連合のATLAS II projectの一環としてマッハ5〜6の極超音速体の研究開発を継続している。

日本は島嶼防衛用に「高速滑空弾(Hyper Velocity Gliding Projectile (HVGP) )」を開発中。FY2019で1億2200万ドルを当該計画にあてた。FY2026に高速滑空弾ブロックIが、FY2023には高速滑空弾ブロックIIが配備予定。

他にも、イラン、イスラエル、韓国などが極超音速技術の基礎的な研究を行っているが、現時点で兵器化する能力はない。

あわせて読みたい

「軍事」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。