- 2019年09月22日 06:15
政治家がツイートで一般人を口撃していいのか
2/2ところが8月26日、柴山氏はツイッターで、「わめき散らす声は鮮明にその場にいた誰の耳にも届きました」などと応酬したのです。自らを苛烈に批判する言葉であったとしても、政治家が国民の声を「わめき散らす声」と表現するのはいかがなものでしょうか。
少なくともわめき散らす声は鮮明にその場にいた誰の耳にも届きましたけどね。 https://t.co/yPZFRdNQOv
— 柴山昌彦 (@shiba_masa) August 26, 2019
しかも文科相は、8月27日の会見で、「『柴山辞めろ』とかですね、『民間試験撤廃』とかですね、そういうことを大声で怒鳴る声がわーと響いてきたんです」と述べています。こうした言動や姿勢に共通することは何か。それはあからさまな「対話の拒否」です。
■受験生には「対話力」を求め、自分たちは「対話拒否」
少数派の意見にあまり耳を傾けない、といった姿勢は「政治家あるある」であり、今回の柴山氏のような対応も特に珍しいわけではありません。しかし、文科相と文科省がそうした姿勢であることは決して看過できるものではありません。
なぜか。
文科相と文科省は今、「対話」の重要性を現在の高校2年生以下の子供たちに強く求めようとしているからです。2020年度に始まる大学入学共通テストは現在のセンター試験に代わる仕組みで、その柱のひとつが「対話」の重視です。
対話を重視する具体的な教育手法の例として挙げられるのが、アクティブ・ラーニング(以下、ALと表記)です。ALとは、「先生の話を受動的に聞くのではなく、問題に対して、生徒が自分で考えたことをアウトプットするスタイルの授業」。そこでの代表的な方法が、「生徒たちが自らの意見を発表、交換し合い、議論を重ねていく」というものです。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/daruma46
■前文科相はなぜ「対話的な学び」をしないのか
当初、こうしたALのような学習スタイルに異論を唱える教育関係者は少なくありませんでした。僕もそうです。「そんな勉強やって、何か意味あるの?」と。しかし、僕の出講する予備校でAL型授業を導入してみると「これはアリ! 大いにアリ!」と確信したのです。
僕の指導科目は現代文ですが、この科目においては、「自分がある出題に関してひとつの答えを選び、あるいは作成した理由をしっかりと説明できるようになる」ことが重要なポイントとなります。
AL型授業(5日間完結)の現代文講座では、初日はいい加減な解き方しかできていなかった生徒が、最終日の段階ではそれができるようになったのです。何より目を見張ったのは、「予習の質の格段の向上」でした。初日の予習ではただ単に解いてきただけの生徒が、2日目、3日目あたりから、「自分の解答プロセスをノートにまとめてくる」といった作業ができるようになりました。しかもかなりの精度で。
これらの成果は、間違いなく「対話的な学び」がもたらしたものでしょう。
■「対話の拒否」は民主主義の否定である
繰り返しになりますが、大学入学共通テストは「主体的・対話的で深い学び」の成果を試す試験であるはずです。しかし、今、冒頭で述べた英語民間試験の導入を含む試験内容の決定プロセスにおいて「対話の拒否」が堂々と行われているのです。これこそ自己矛盾の極致ではないでしょうか。せっかくの新しい教育理念を有名無実にしてしまう暴挙です。
9月10日、全国高校長協会は、大学入学共通テストで導入される英語民間試験について、試験の衆知に計画性がなく、詳細が明確になっていないという考えのもと、導入延期と制度の見直しを求める要望書を文科省に提出しました。
しかし、柴山氏は「かえって受験生の地域格差、経済格差が拡大して、大きな混乱を招く」と述べました。切なる要望を容赦なく突っ返したも同然の行為と言えるでしょう。
今回のような政治家による「対話の拒否」は、端的に言って民主主義の否定です。そしてそれは今後、「教育」以外のカテゴリーにも起こる可能性があります。
このたび新しい文科相に、萩生田光一氏が任命されましたが、果たしてどのような考えを持ち、「対話」の精神があるのかないのか、国民は目を光らせていかなければなりません。
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小池 陽慈(こいけ・ようじ)
予備校講師
早稲田大学教育学部国語国文科卒、同大大学院教育学研究科国語教育専攻修士課程中途退学。現在、大学受験予備校河合塾、および河合塾マナビスで現代文を指導。7月末刊行予定の紅野謙介編著『どうする? どうなる? これからの『国語』教育』(幻戯書房)で大学入学共通テストに関するテキストを執筆。
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(予備校講師 小池 陽慈)
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