10月1日から消費税が現行の8%から10%に上がります。30年前に3%で始まった税率がとうとう2桁に、と思うと感慨深いものがあります。それと同時に軽減税率が導入され、幼児教育と保育の無償化も行われます。
これだけ大きな変化が控えている割には、世間の反応は控えめで、しかも「軽減税率対応レジ」の導入や、「キャッシュレス・ポイント還元制」の登録も準備が遅れがちだとか。来月はいろいろトラブルも起きそうです。
10月からどんなことが起きるのか、消費税の歴史や今後の展望などについて、以下、「ぶっちゃけ話」を展開してみました。われながら不穏な発言も含まれておりますが、税に関する議論を客観・中立・冷静に行う、というのはつくづく難しいものなのであります。
●その商品、税率は10%か8%か?
あと10日たつと、いよいよ消費増税となる。その割に世間の反応は静かだが、いちばん話題になっているのは軽減税率だろう。TVのワイドショーなどで面白おかしく取り上げているのを見かけるが、以下の「軽減税率クイズ」の答えはお分かりだろうか?
Q:以下の商品はどちらが10%でどちらが8%か?
(1)水道水とミネラルウォーター
(2)宅配のスポーツ新聞と日経電子版
(3)牛丼テイクアウトの際の吉野家とすき家
(4)みりんとみりん風調味料
(5)オロナミンCとリポビタンD
(6)いちご狩りの入園料と映画館のポプコーン
まず(1)であるが、水道水は10%であり、ミネラルウォーターは8%である。素朴な実感として「逆じゃないか」と思われるかもしれないが、スーパーなどで売っている飲食料品は現行の8%が据え置きとなり、電気代や水道料は10%となる。
ただしこれらの公共料金は「使った分の後払い」なので、10月に請求される9月分の使用料は8%のままである。税率が10%に変わるのは11月請求分からである。おそらく今後、食堂などでは仕入れの代金を、「食材は8%で光熱費は10%」などと分けて記帳する必要が生じる。
消費税の納税業者にとってはかなりの負担増となるだろう。余談ながら、ときどき「消費税は毎年1%ずつ上げればよい」などという経済学者がいるが、消費税の納税経験があったらとても出てこない発想だと思う1。
続いて(2)だが、宅配の新聞のみが8%となり、コンビニで買った場合は10%、電子版の新聞も10%である。
2014年の消費増税時に購読部数が激減したことで、新聞各社がスクラムを組んで政府に「おねだり」した結果である。そのお蔭で、「軽減税率反対」の議論はほとんど新聞に載らなかった。こういう行為を、経済学ではレント・シーキングと呼ぶ。言論機関として恥ずべき行為と言えよう。
その結果、「宅配のスポーツ新聞の方が日経電子版より優遇される」という妙なことになってしまった。
外食産業では、(3)テイクアウトへの対応が分かれつつある。KFCやマクドナルドは「税込み同一料金」を選択し、それが主流になりそうである。ただしこれらは「売り上げの過半をテイクアウトが占める」業態であり、店内での食事が多い牛丼チェーンの判断はおのずと変わってくる。
吉野家は「同一商品同一料金」(8%)を選択し、すき家は「税込み同一料金」(10%)を選ぶようである。両社はこの業界におけるライバル同士であり、BSE問題への対応も正反対であったことが懐かしく思い出される。
さらに(4)と(5)は、商品の区分けの問題である。「みりん」は酒類に分類されるので10%となり、「みりん風調味料」は普通の飲食料品で8%となる。ビールやワインなども10%となるので、今月中に買い置きしようという人がいるはずである。逆にコカ・コーラやウーロン茶は軽減税率が適用されるので、わざわざ「駆け込み」で買う必要はない。
同様に、「リポビタンD」は医薬部外品なので10%、オロナミンCは炭酸栄養ドリンクなので普通の飲料と同じ8%である。つまり同じ棚に置いてある商品でも、レシートに記入される税率は違ってくることになる。ああ、紛らわしい。
最後に(6)は、いちご狩りはレストランと同様なサービスと見なされて10%、映画館のポプコーンは座席で食べることを「持ち帰り」と見なして8%となる。もっとも最近の大型シネコンなどでは、コンセッションの飲食品が充実していて、その場にイートインのスペースがあったりする。
となれば、そこで食べる場合は10%が適当であるかもしれず、グレーゾーンとなろう。この手のトラブルは、10月以降に頻発するはずである。あと10日ほどでこの制度は始まってしまう。心のご準備はよろしいだろうか?
1偶然ながら本日、9月20日(金)日経朝刊の「大機小機」にも出ている。