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【映画感想】記憶にございません!

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 三谷さんは、この映画が大好きだと以前仰っていましたし、監督作品の『ステキな金縛り』でも採りあげられていたのです。
 「政治の世界の常識」に染まっていない「普通の人が考える理想の政治」と、「清濁併せ呑むのが政治というものだ」という「政界の常識」との衝突というのは、民主主義社会での永遠のテーマなのでしょうね(『スミス都へ行く』は、1939年の作品です)。

 この『記憶にございません!』に関しては、キングメーカーの官房長官を演じている草刈正雄さんの「えたいのしれなさ」が、ものすごく効いています。
 大衆は、「純心な政治家による、誠実な政治」を求めている一方で、本当に思ったとおりのことを言うと「失言」だとか「国益に反する」と怒り出す。
 悪いことをして責められるのは当然としても、善いことをしても「人気取り」だとマスメディアには批判される。
 みんな、「責めたいから、揚げ足をとって責めている」だけなのに、それを「正しい批判」だと思い込んでいる。
 発信者、表現者としての三谷幸喜という人も、そういう扱いを受けてきたのです(もちろん僕も、そういう扱いをしてきた人間のひとりです)。
 そんな「民衆の心理やメディアの伝え方への違和感」も描かれているのです。

 『スミス都へ行く』が長年愛されている一方で、『ハウス・オブ・カード』が大ヒットしたのも事実で、「政治」というのは、ドロドロしていて、野心に溢れた人間がなりふり構わずのし上がっていく舞台であることに魅力を感じる人も多いんですよね。
 しかも、別々の人が、『スミス都へ行く』と『ハウス・オブ・カード』を評価しているわけではなくて、ひとりの人間が「どちらも好き」なこともある。

 三谷幸喜さんの「ドラマ職人としての仕事」というか、「ま、こういうので良いんだよね、みんなは。『ギャラクシー街道』のあとだから、ヒットさせておかないと、次を作れなくなるかもしれないし」という声が聞こえてきたような気が、僕にはしたのです。
 本人がやりたい仕事、自分にしかつくれないと思っている作品は、たぶん、『ギャラクシー街道』のほうなんだろうけど。

三谷幸喜 創作を語る

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ステキな金縛り

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