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大谷のヒザ手術は二刀流への最終警告だ - 広岡達朗

米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が、9月13日(現地時間)に左ヒザの手術で戦列を離れた。全治8~12週間で、年内には練習を再開できるという。私はシーズン途中で飛び込んできたこのニュースに「またか」と思い、「やっぱり」と感じた。

日本球界の宝だった大谷は昨年、ポスティングシステムを使って渡米した。開幕から投打の二刀流で華々しい活躍を見せたが、同年6月には右ヒジの靭帯損傷で故障者リストに入り、シーズン終了直後の10月1日に靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた。

2年目の今年はDH(指名打者)として打撃に専念し、これまで106試合で打率.286、18本塁打を放っていた。その一方で投手としてのリハビリを進め、球速も138キロまで上がってきた。その矢先のヒザ故障である。

症状は「ヒザの皿」が2つに分かれる二分膝蓋骨(にぶんしつがいこつ、有痛性分裂膝蓋骨)。ビリー・エップラーGM(ゼネラルマネジャー)によると、大谷はキャンプ中の2月に痛みを訴えて精密検査を受け、DHでの出場には支障がないと判断されたが、シーズン中にも何度か痛みがあったという。

8月6日には7度目のブルペンに入り、術後最多の50球を投げたというニュースがあった。打ったり走ったりするには支障がなくても、左ヒザに体重がかかる投球練習が増えるにつれて、分裂したヒザの皿が悲鳴をあげたのだろう。

ケガ体質の懸念が的中

内外の報道によると、通常は3つの骨がひとつになってヒザの皿を形成しているが、まれに上部外側の骨が先天的に離れていることがあるらしい。これは人口比2%未満の珍しいケースだという。

大リーグの公式サイトでは、「スケジュール通りにいけば、大谷はスプリングトレーニング(春季キャンプ)までに本格的な二刀流選手として戻ってこられる」と伝えているが、私が気になるのは、ケガが多い大谷の体質である。

高校時代は2011年、2年生夏の練習試合で座骨関節の骨端線を損傷。日本ハムでは16年の日本シリーズで右足首を痛めて17年10月に手術した。17年4月には走塁中に左太ももの肉離れでも約3か月戦列を離れている。そして昨年はあの右ヒジ靭帯損傷で大手術を受けた。今回の左ヒザで、3年連続の手術である。

私はいまになって結果論を言っているわけではない。そもそも私は、大谷が2017年11月に「ポスティングシステムを使って米大リーグをめざす」と発表したときから、ポスティングによる渡米と二刀流に反対してきた。おもな理由は、大谷には身長193センチの恵まれた体があり、最速165キロの速球を投げる日本球界の至宝だからだ。

2016年、日本ハムでは投打で活躍してリーグ優勝に貢献したのに、規定投球回・規定打席ともに届かず無冠の帝王だった。日本人では誰も投げられなかった165キロの速球を投げ、将来は400勝投手・金田正一と並ぶかもしれない大器が、二刀流で中途半端な成績に終わるのは「才能の無駄遣い」と思ったからだ。

これらの主張は当時この連載で書き、2018年3月に上梓した『日本野球よ、それは間違っている!』(幻冬舎)にも書いた。

そしてこの本では、「大リーグは二刀流が通用するほど甘くない」「日本ハム時代から故障続きの大谷はメジャーで生き残れるか」「二刀流を封印して下半身を鍛え直せ」といったことも書いている。いうまでもなく、才能と人柄に恵まれた大谷が憎くて批判しているのではない。日本球界が生んだ100年にひとりの逸材が大成するために、「こうすればもっとよくなる」と願って書いた忠告である。

骨や筋肉が巨体の成長についていけない"伸び急ぎ"か

大谷のケガ体質といえば、バレーボール全日本男子代表監督だった松平康隆さんの講演で聞いた話を思い出す。「バレーボールは大きな選手がいいので長身の選手を集めたが、日本人の体は180センチまでが一番バランスがとれていることがわかった」という。

その後、プロ野球も180センチ超の大型選手が多くなったが、日本人の体と身体能力を考えると、長い監督体験から生まれた松平理論は興味深い。

大谷は193センチという長身で足も速く、投打ともバランスがとれているが、毎年のように靭帯やヒザを故障するのは体が弱い証拠だ。一部の骨や筋肉が体の成長に追いつかない“伸び急ぎ”なのではないか。そのいびつな成長が、投手の大事な基点であるヒジやヒザの異常を引き起こしたのかもしれない。

そして待望のメジャーデビューから2年連続の手術は、基礎練習の質と量が投打に分散した結果であり、「二刀流は無理だ」という警告だ。

「自分で治す」強い気持ちで復活めざせ

人間は誰でも、生まれながらの自然治癒力があることを忘れてはいけない。病気やケガは、体の悪いところを教えてくれるサインである。大谷も練習や生活に問題がなかったか検証し、悪いところがあれば直せばいい。

手術は終わったが、今後は食事などの生活改善に努めて正しいリハビリに励んでほしい。その場合、「必ず復活する」という信念を持つこと。ヒジもヒザも手術と医者任せにせず、「自分で治す」という強い気持ちを持ち続けなければならない。

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