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嫌いな相手は、なぜそこまで嫌いになるのか

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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)の著者、ブレイディみかこさんは、イギリス在住のライター・コラムニスト・保育士。アイルランド人のパートナーとの間に生まれた息子さんの中学校生活を描いた本作で、改めて注目を集めている。何代も続く英国人と他国からの移民、中間層と貧困層など、さまざまな家庭の子どもが集まる環境で、息子さんとみかこさんが学んだこととは? そこには多様化が進む日本社会へのヒントが隠されている。

■自分は売れる作家ではないと思っていた

——『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は重版され、ベストセラーになっています。どのような反響が届いていますか?

ブレイディみかこさん

もともと私は“売れる”作家ではないと思っていたので、今回の売れ行きは意外です。これまで私の本は『ヨーロッパ・コーリング──地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)など、政治や社会運動に関心がある人、主に男性が多く読んでくれていたと思いますが、この本の読者は7割が女性だそうです。Twitterに投稿された感想などを見ていても、これまで私の本を知らなかった方や子育て中の女性がつぶやいてくれて、読者層が広がったというか、変わってきたのかなという感覚がありますね。

■子どものまっすぐな質問が社会に投げかけること

——息子さんは中学校に進むとき、ひと昔前は“底辺”と呼ばれていたけれど、現在は多様性を重視しユニークな教育をしている公立の学校を選びます。さまざまな人種や階層の生徒がいる環境で、10代の息子さんがいろんな体験をして発する言葉にハッとさせられます。

うちの子は優等生すぎて、ストリートワイズ(タフで抜け目がない)なところがないので、これから実社会でサバイブしていけるのかと心配しているぐらいですが、まだ中学生ですから、これからですよね。

私たち親はこれまで地べたでいろんな経験をしてきているから、ある意味、曲がっていて、まだ曲がっていない息子がまっすぐに「いじめって勝ち負けの問題なの?」「人種差別は違法だけど、貧乏な人や恵まれない人は差別しても合法なんて、おかしくないかな」などと質問してくると「ああ、本来はそうだったか」と思い出させられるんですよね。そういう気づきはきっと今の社会にとっても大事ではないかと思って、この本を書きました。

■分断を乗り越えられるシンパシーの力

——本のひとつのテーマになっているのが「シンパシーとエンパシーの違い」ですが、この2つの言葉、英語圏ではどのように理解されているのでしょうか?

シンパシー(sympathy)とエンパシー(empathy)と響きが似ているし、英語が母国語の人でもごっちゃにして使いがちです。シンパシーは同情や思いやりのことですが、エンパシーは、例えばフェイスブックやTwitterの「いいね!」ボタンを押せないような相手が何を考えているんだろうと想像してみること。違う立場の人のことを理解できるかということですね。必ずしも「いいね!」ボタンを押さなくていいけれど、想像してみる力が必要です。


例えば現在、イギリスの議会はEU離脱をめぐりたいへんなことになっていますが、単に離脱派と残留派がいるわけではなく、一人ひとりの議員は「この部分では離脱していいけれど、この部分ではEUとの関係を保ったほうがいいよね」というように考えているわけです。一般人でも、いろんな考えを持った人がいろんな立場からものをいう。移民の立場から、富裕層、貧困層の立場から、そして男性、女性それぞれから……。それらの主張の微妙に違うところを誰もまとめられないから、イギリスはもうとんでもない状況になっているわけです。そんなときにものをいうのがエンパシーで、分断されたさまざまな立場の人のことを想像しつつ、うまく落としどころをつくっていく能力が問われます。

現在、日本と韓国の政府が対立していますが、お互いに言いたいことだけ言い合うのではなく、「なぜ相手は強い態度に出てきたんだろう」と考えてみて、落としどころを考えていくような知的能力が必要なのではないでしょうか。

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