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働き方改革に抱く「疑念」、先進企業が打つ次の一手 - 川崎隆司 (Wedge編集部員)


(WESTEND61/GETTYIMAGES)

時短、育休延長、テレワーク、フレックスタイム……。日本企業は今、働き方改革の真っただ中にある。政府も「一億総活躍社会」の実現に向け、企業の改革を後押しする。4月には「働き方改革関連法」が施行され、残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務化などが始まった。NTTデータ研究所の調査によると、日本企業の働き方改革実施率は49・3%と、この5年で2倍以上に増え、従業員規模1000人以上の企業に限ると74・5%に達している。

しかし、改革を進める一部の企業からは、働き方改革を疑問視する声が上がる。「改革自体が目的になっていないか。本当に生産性は上がっているか不安だ」(人事担当役員)、「残業代のつかない課長に自分たちの仕事を肩代わりしてもらって、早く帰らされるのに違和感がある」(若手企画職)、「時間削減のためにやれることは全てやったが、新しいビジネスに繋がる仕事ができていない」(中堅営業職)などさまざまだ。

なぜこうした「疑念」が芽生えるのか─。そこで、時間や場所にとらわれない自由度の高い働き方を早くから導入し、改革の先頭を走ってきた企業が抱える改革に伴う諸課題と改革の深度化に向けたヒントを探った。

残業削減の”優等生”に立ちはだかった壁

「所定労働時間(1日)7時間、一人当たりの総労働時間(年間)1750時間」を2020年度までの目標と定め、大幅な労働時間の削減を行ってきた味の素。17年度には1日の労働時間を20分短縮して7時間15分とし、終業時刻を16時30分に前倒しした。その結果、15年度に1947時間あった一人当たりの年間平均総労働時間は、18年度には1804時間まで減少した。

1カ月10時間以上の労働時間を削減し、目標達成がみえてきたところだったが、同社は今年に入りこの目標を突然撤廃した。その理由について人事部労政グループ長の隈部淳二氏は「手元の仕事ばかりに追われ、従来の仕事以外の新たな仕事にチャレンジする余裕がなくなってしまった」と語る。

新しい価値を生み出すためには、トライ&エラーを行う時間が必要だ。味の素は今年度、年間総労働時間1800時間を維持したまま、社内チャットの導入によるコミュニケーション強化を図る。連絡や情報共有の手段を、会議やメールからチャットへ移行させることで業務の速度感を高め、議論を活性化させる狙いだ。

味の素と同じく、働き方改革をリードしてきたのがカルビーだ。前会長兼CEO(最高経営責任者)・松本晃氏の指揮の下、「新しい発想を生み出すための学習や、家族と過ごす時間を与える」(松本氏)ことを目的に、残業時間の削減に力を入れ、時間や場所にとらわれない働き方を推進してきた。

この柔軟な働き方と業績向上を両立させるため、社員の目標設定の数値化を徹底し、シビアな評価制度を導入した。その効果もあり、評価制度を導入した09年から6年間で営業利益率は3.2%から10.9%へと急上昇した。

しかし、同社は今、この評価制度の「見直し」をはかっている。コーポレートコミュニケーション本部長の福山知子氏は見直しの理由をこう語る。

「“成果主義”のみでは短期的な目線が強くなり、着実な目標ばかりを設定する社員が増えた。当初は目の前の課題に取り組んでいれば結果がついてきたが、それも枯れてきた。今後は中長期的な課題に取り組むことが社員へのインセンティブになる評価制度に改善する必要がある」

同社は、社員の中長期的な目標や新たな課題への取り組みも査定することで、プロセスを踏まえた人事評価を復活させることを検討している。

その他にも、社員が業務外で様々な経験得るために週休3日制導入した日本マイクロソフト、育児休業者に対して「休みながら働く」というハイブリッドな制度を導入した三井住友海上火災保険、社員を個人事業主化し、政府の進める働き方改革へ一石を投じたタニタ、「いつでもどこでも働ける」環境整備と社員の健康管理の両立を目指すユニリーバ・ジャパンなど、働き方改革先進企業が抱える問題認識や悩みは様々だ。9月20日発売の本誌特集では、自身の経営戦略として働き方改革にチャレンジし、付加価値向上を模索しているこれら企業の『今』を追った。その中で見えてきた働き方改革の諸課題とは...。(以下、本誌特集ラインナップ)

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