- 2019年09月19日 11:15
橋下徹「入国厳格化に触れたトランプ氏の真意」
2/2アサド政権、IS、ロシア問題……解決すべき優先順位は?
話を戻すと、アメリカの政治指導者になってテロ対策をするときは、一部の人間たちがイスラム過激主義に走っているという現実を捉えて、その対策を講じていくのは当然のことだと思う。もちろん、イスラム教をすべて否定する必要はまったくないから、「イスラム教徒は全員入国禁止」というトランプの発言はいきすぎだ。
でも、トランプの真意はそこにはないと思う。トランプは「イスラム教徒は全員入国禁止」という発言で衝撃を与えて、彼のほうに目を向けさせたかったんだ。
その後、裁判所から「待った」がかけられたこともあり、政策はどんどん修正され、テロ地域からのイスラム過激主義者とか、経歴がよくわからないイスラム教徒についてはちょっと入国について慎重になる、というところに落ち着いた。イスラム過激主義者がアメリカ国内に入ってこないようにするのは、国家指導者として絶対にやらなきゃいけないことだと思う。
一方、オバマ前大統領は、アサド政権打倒、イスラム国(IS)打倒、ロシアとは仲良くできない、というすべての目標達成にこだわって、結局なんの中東政策も実行できなかった。当時のアメリカは効果のない空爆を「とりあえずしただけ」になってしまったんだ。
トランプは、EUから批判を食らうこと覚悟で、シリアのアサド政権は暫定的に認め、その代わりロシアと手を組んでイスラム国を壊滅させると言い、それを断行した。実際、シリア内のISは抑え込まれつつある。
アサドを倒さなきゃいけない、イスラム国も倒さなきゃいけない、クリミア問題でロシアに対しても制裁を加えなきゃいけないというのは、西側のインテリたちが頭の中で考える理想の目標。でも、こんなのを一度に全部達成できるわけがない。政治で重要なのは優先順位だ。トランプには、一番に優先しなければならないことがわかっている。
「アサドも悪い」 「ロシアも悪い」 「イスラム国も悪い」
国や組織に対して、悪い悪いと言うのは簡単だ。でも、本物の政治家なら、その悪い者たちを一気に成敗する理想を掲げるんじゃなくて、現実の政治問題を解決するために、解決すべき優先順位をまず考えるべきだ。
最優先事項を決めたら、あとは実行するだけ。理想を口で言うだけではなく、実行しようとすれば、綺麗事だけでは済まないこともあるだろう。どこかと手を組んで、ドロドロした駆け引きをする必要も出てくるだろう。
トランプは、「アサド政権を暫定的に認めながら、ロシアと手を組んでイスラム国を壊滅させてテロをなくす」とはっきり言った。「イスラム国の壊滅、テロの壊滅が最優先事項だ」と。そのためには多少の犠牲は甘受する。
この方針には、綺麗事を重視するヨーロッパ諸国からも、日本からも猛反発を食らったけど、僕はトランプを評価する。
トランプのおっちゃん、ほんと大したもんだよ。
----------橋下 徹(はしもと・とおる) 元大阪市長・元大阪府知事 1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。 ----------
(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)
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