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睡眠不足大国の日本! 秋の夜長にぐっすり眠るためのポイントは“就寝時間”よりも“起床時間” 寝不足のときは「早く寝る」よりも大事なことがあります - 鳥集 徹

 春眠ならぬ、秋眠暁を覚えず。秋の足音が聞こえ始め、だんだん日が短くなってきました。夜が明けるのが遅くなり、朝起きるのがつらいという人も多いのではないでしょうか。

 世界的に見て日本人の睡眠時間は短いのですが、それが近年はますます顕著になってきています。厚生労働省の調査によると、1日の睡眠時間が6時間未満の人は、2007年には3割未満だったのが、2015年には約4割に増えました(平成27年「国民健康・栄養調査」)。

 その要因の一つがスマホの普及だと考えられます。深夜までSNSやオンラインゲーム、ネットサーフィンに没頭する人が多いのではないでしょうか。しかし、眠る前に明るい光を浴び続けると入眠時間が遅れ、眠りも浅くなってしまいます。

©iStock.com

 睡眠不足が続くと日常生活や仕事に支障をきたすだけではありません。病気の発症や悪化とも関連すると言われています。ですから、秋の夜長を楽しむのもほどほどにして、質のいい睡眠をとるよう心がけてほしいのです。

睡眠不足の人には肥満が多い

 たとえば、睡眠不足が引き起こす病気に、糖尿病や高血圧があります。以前取材した睡眠障害の専門医によると、睡眠不足が続くと、血糖値を調整するホルモンであるインスリンの働きが弱まり、血糖値が上昇しやすくなるそうです。

 また、睡眠不足の人には肥満が多いという研究結果もあります。これは、食欲を抑制するホルモンである「レプチン」が低下する一方で、空腹を促すホルモンである「グレリン」の分泌が増加することが一つの要因として考えられています。

 さらに、眠たいと昼間の活動性が落ちて運動不足になりがちなうえに、睡眠不足によって生じるストレスを解消しようと食欲が増します。それによって太りやすくなって、糖尿病や高血圧を引き起こしやすくなるのです。実際、睡眠不足があると糖尿病や高血圧のリスクが1・5~3倍高くなるという研究結果が複数あります。

 このように、睡眠不足は糖尿病や高血圧を引き起こす原因となるのですが、これとは逆に、糖尿病や高血圧が睡眠不足の原因になるという研究結果もあります。

高血圧の人が“眠りにくい”理由とは?

 糖尿病になると、口が渇く、夜間頻尿になる、神経の合併症で足に痛みやしびれが起こるなどの症状が出てきます。そのため、夜、眠れないと訴える人が増えるのです。糖尿病患者は健常な人に比べ、2倍も不眠を訴える頻度が高くなるという研究があります。

 また、自律神経は夜になると体をリラックスさせ、眠りに誘う「副交感神経」が優位になるのですが、高血圧の人は昼間の活動性を高める「交感神経」が亢進するため、眠りにくくなります。さらに、降圧薬を飲んでいると、その副作用で眠りにくくなることもあります。

 このように、睡眠が十分にとれていないと糖尿病や高血圧になり、今度はそれらの病気が不眠を悪化させるという悪循環に陥ってしまう恐れがあるのです。もしかすると眠れないで困っている人は、こうした病気が隠れている可能性もあります。不眠で医療機関にかかる人は、糖尿病や高血圧の可能性もないか、医師に診てもらったほうがいいでしょう。

「早く寝る」は必ずしも正解ではない

 では、睡眠不足に陥らないためには、どうすればいいのでしょうか。ネットなどを検索すると、様々な安眠法が紹介されていますが、専門医の多くが第一に勧めるのが「寝る時間」より「起きる時間」を決めることです。なぜなら、朝、目覚めて光を浴びることで、睡眠覚醒リズムをコントロールしている体内時計がリセットされるからです。

 人は、目覚めてから16~17時間後に睡眠のスイッチが入ります。たとえば、朝6時に起きたとしたら、夜の10時か11時頃には眠たくなります。このリズムを狂わせないためにも、寝不足のときには早い時間に眠ることよりも、決まった時間に起きることを意識したほうがいいのです。

 平日に睡眠不足が重なった場合は、休日に1~2時間朝寝坊してかまいませんが、体内時計を狂わせないためにも、できれば同じ時間に起きるよう心がけましょう。また、光をほとんど通さない遮光カーテンを使っていると朝日が入らず、リズムが整いにくくなるので、10センチほど開けて眠るようにしてください。

 夜眠る前は、前述の通り強い光を浴びてはいけません。入眠の1時間前までには、スマホやテレビのスイッチを消しましょう。室内の灯も電球程度の明るさに落とし、リラックスして過ごすようにしてください。専門医によると、夜寝る前のテレビやスマホをやめただけで、ぐっすり眠れるようになる人も多いそうです。

睡眠時間にこだわり過ぎないことが大事

 もう一つ大事なのが、睡眠時間にこだわり過ぎないことです。04年に名古屋大学の研究グループが日本人11万人を10年間追跡した調査で、平日の睡眠時間は7時間(6.5~7.4時間)の人が最も長生き(死亡リスクが低い)という結果が出ています。また、かつて「理想の睡眠時間は8時間」などと言われました。

 そのため、専門医の元には「8時間も眠れない」と訴えて受診する患者、とくに高齢者が少なくないそうです。しかし、睡眠時間はエネルギー代謝と関係しています。15歳くらいまでの成長期にある子どもは8時間以上眠り、深く眠る時間も長いのですが、年を取るほど代謝が落ちて睡眠時間が短くなり、65歳以上になると平均6時間ほどしか眠れません。

 年をとってあまり眠れなくなるのは、人として自然なことなのです。にもかかわらず、高齢者は早い時間から床に入りがちです。すると、夜中にトイレに行ったきり眠れないとか、早すぎる時間に目が覚めて、朝まで身を持て余すということになります。朝ちょうどいい時間に目覚めるためにも、むしろ高齢者ほど少し夜更かしをしたほうがいいのです。

 また、高齢者の中には、テレビを見ながら昼間にウトウトして、気が付いたら夕方という人もいます。もちろんこれも、夜に眠れない原因になります。昼寝をするとしても、強い眠気が出る午後2時頃に、30分までにとどめることが大切です。

「眠れない」という焦りが不眠の原因に

 そして、「きょうよう」と「きょういく」と言うのですが、「今日、用事がある」「今日、行くところがある」という具合に、昼間に外出をして、心地よい疲れを感じるような活動をすることが、いい眠りにつながると言われています。

 そうした心がけをしても、十分な睡眠時間がとれないことは誰でもあります。しかし、「眠れなかった」と心配し過ぎるのは、かえってよくありません。眠れないと焦ることが、不眠の原因にもなるからです。

 人によっては体質的に長く眠らなければ満足できない「ロングスリーパー」がいれば、眠らずしゃべり続けていると言われる明石家さんまさんのように、「ショートスリーパー」もいます。専門医によると「朝起きて疲れがとれていて、昼間の活動に差支えがなければ、睡眠時間は十分足りている」とのこと。その人によって、必要な睡眠時間は異なるのです。

 あまり眠れずに、何日も何週間も疲労感が取れないといった場合は専門医の受診をおすすめしますが、1週間に3~4日以上「よく眠れた」と思える日があれば、よしとすべきでしょう。

 とはいえ、睡眠不足が続いてしまうと病気を招きます。いい睡眠がとれるよう心がけつつ、秋の夜長を楽しみましょう。

◆◆◆

 より詳しい睡眠不足の原因と解消法については、鳥集徹「寝る時間より『起きる時間』を決める」(「文藝春秋」 2018年 2 月号)をご参照ください。

(鳥集 徹)

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