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韓国議員が米紙で日本攻撃 - 古森義久

 日韓対立の激化に対して韓国側がアメリカ向けの広報を強化するなかで、韓国の与党現職国会議員がアメリカの首都ワシントン地区の有力新聞に日本を全面的に非難する投稿文を載せた。この長文の投稿は今回の日韓対立はすべて日本側の非であり、日本が朝鮮半島を不当に占領し、住民を弾圧したことを悔いも謝りもしないことがいまの対立の原因だとも断じていた。日本側としても同盟国のアメリカの世論を動かしかねない韓国側のこの種の対米プロパガンダへの対応が必要だろう。

 この投稿文は「日本が悔悟も謝罪もしないことが韓国、アメリカ、日本の間に摩擦を起こしている」という見出しの記事としてワシントン・タイムズ9月13日付に掲載された。筆者は韓国国会の与党「ともに民主党」所属の林鍾聲(イム・ジョンソン)議員だった。

 ワシントン・タイムズは首都周辺地区に読者を持つ中堅の保守系新聞で、同じ首都圏の最大紙ワシントン・ポストがリベラル系民主党支持媒体としてトランプ政権を一貫して批判しているため、同政権とはわりに近い距離にある。

 林議員の投稿文はその見出しの通り、日本に対する一方的な糾弾に徹していた。その内容は以下の骨子だった。

・日本が韓国への特定製品の輸出を一方的に制限したことが韓国による日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄につながった。韓国政府としては不可避の措置であり、日本が自らその原因を作ったのだ。

・韓国大法院が最近、日本の企業に戦時強制労働の犠牲者への賠償を命じたが、その背景には日本政府が日本軍の残虐行為を認め、謝ることをしていない事実がある。日本政府は朝鮮半島の侵略、併合、搾取、女性たちの「日本軍の性的奴隷」としての徴用または強制連行などを謝罪せず、韓国に経済制裁を科したのだ。

・日本は加害者として日本の植民地占領の苦痛をなお感じている韓国国民の傷に塩を塗った。

 だから韓国人はいま怒りの反応を示すのだ。日本はG20でも自由貿易の効用を説きながら、その直後に韓国に対して自由貿易を否定する措置をとった。

・日本が韓国との信頼や友好に基づく関係を壊したうえで、重要な軍事情報の交換の継続を求めることは自己矛盾である。とくに最悪なのは日本が韓国に対しての輸出規制を発表した後に韓国側が多数のチャンネルで対話を求めたのをすべて拒んだことだ。

 以上のように林議員の投稿はいまの日韓対立について、悪いのはすべて日本なのだという一方的な主張を情緒的な表現で、これでもか、これでもか、と記していた。その一方、今回の日韓対立の原因となった韓国側の日韓国交樹立の際の条約や協定の違反についてはなにも触れていなかった。

 林議員の投稿文はさらに日本叩きをエスカレートさせていた。

・日本は北東アジアに平和と安全を保とうと努めるアメリカの真の同盟国なのかどうか、疑わしい。なぜなら日本のためにその平和と安定に寄与するGSOMIAが破棄されたからだ。日本がアメリカ主導の国際貿易秩序やグローバルなサプライ・チェーンに復帰することを望む。

・昔から朝鮮半島の住民は島国の日本に文字をはじめとする文明の所産の多くを伝えてきた。だが日本は何千年もにわたり朝鮮半島を侵略し、略奪した。近年では日本は朝鮮半島を植民地にして、多数の朝鮮人女性を日本軍の性的奴隷にしたが、日本は誠意ある謝罪をしていない。

・韓国民がいま日本に求めるのはドイツのように自国の残虐行為に対してその犠牲者側に誠意をこめた罪の自認と謝罪をすることなのだ。だが日本政府はその残虐行為があったこと自体をも否定している。

 このように金議員の日本叩きは留まるところを知らないのだ。そして最後にとくにアメリカに対して、訴えていた。

・アメリカ政府に告げたいのはアジア太平洋で起きた不幸な戦争の再発を防ぐためのアメリカの役割がいま強く求められているということだ。戦争はまず歴史的な事実を否定することから始まる。歴史をゆがめ、否定する者は過去の間違いを繰り返すのだ。

 金議員のこんな主張はまるで現代の日本が戦争を始めようとしているかのような誹謗だといえる。事実にも反する政治プロパガンダだともいえよう。韓国の与党議員のこんな主張がアメリカの首都圏の新聞に出てしまうのである。日本政府はさあ、どうするのか。

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古森 義久(こもり よしひさ)
1963年、慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞入社。1972 年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1981年、米国カーネギー財団国際平和研究所上級研究員。1983年、毎日新聞東京本社政治編集委員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。国際教養大学客員教授。麗澤大学特別教授。
著書に、『憲法が日本を滅ぼす』『なにがおかしいのか?朝日新聞』『2014年の「米中」を読む(共著)』(海竜社)、『朝日新聞は日本の「宝」である』『オバマ大統領と日本の沈没』、『自滅する中国 反撃する日本(共著)』『米朝首脳会談と中国、そして日本はどうなるのか』(ビジネス社)、『いつまでもアメリカが守ってくれると思うなよ』(玄冬舎新書)、『「無法」中国との戦い方』『「中国の正体」を暴く』(小学館101新書)、『中・韓「反日ロビー」の実像』『迫りくる「米中新冷戦」』『トランプは中国の膨張を許さない!』(PHP研究所)等多数。

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