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元財務官僚「消費税引き上げは本当は必要ない」

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消費税の引き上げが来月に迫った。政府は「国債返済のために増税が必要だ」と説明している。しかし、元大蔵省の髙橋洋一氏は、「政府のBS(バランスシート)を読み解くと、実は増税の必要はないことがわかる」という――。

※本稿は、髙橋洋一『武器になる数学アタマのつくり方』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。


iStock.com/7maru

■「国の借金1000兆円」を冷静に読み解いてみると

「日本はいま1000兆円の借金を背負っている。国民一人当たりに直すと800万円になる。みなさん、こんな借金を自分の子や孫に背負わせていいのか。借金を返すためには税が必要だ」といった話は誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。財務省(かつての大蔵省)が1980年代から繰り返し言い続けてきていることである。

1000兆円の借金とは何を指して言っているのだろうか。

その正体と、実はここには大きなウソがあるということも、政府のバランスシートを見ればすぐにわかる。経営者が企業を運営するように、政府は国を運営する。当然、政府にもBSとPLがある。

政府の財務書類は財務省のウェブサイトで簡単に入手できる。まず、このことを知らない人が多すぎる。

政府のBSを最初につくったのは私である。単に実際の政策運営上、必要だったからで、1994年、大蔵省にいた時のことだ。その時には大蔵省内部で、「そんなものは出すな!」という話になり公表は見送られた。2004年頃、小泉純一郎総理(当時)に、「政府のバランスシートはこのようになります」と私が話すと、「すぐに出せ!」ということになって今に至っている。つまり、政府のBSは2005年からずっと公開されている。インターネットで閲覧できるようになっている。

政府のBSを読むうえでまず知っておく必要があるのは、「企業は負債よりも資産のほうが多いほど安泰だが、政府のBSの場合は資産よりも負債のほうがちょっと大きいくらいでも健全だ」ということである。

つまり政府には「利益剰余金」は存在しない。政府のBSの「純資産」は多くの場合マイナスである。これは世界のどの国も同じことだ。

それでもよほど大きなマイナスでなければ破綻しない。これは歴史の事実だ。

■際立った数字だけを拾い、細かい数字は読まなくていい

2019年(平成31年)1月29日に財務省のウェブサイトで公開された平成29年度の国の財務書類(一般会計・特別会計)から、政府のBSを見てみよう(図表1)。

BSには細かい数字が並んでいるが、際立った数字だけを読んでいき、その意味がわかればよい。

財務書類を読みこなすには、数字を正しい単位で声に出して読むのがコツである。

BSやPLに書かれている数字は億単位、兆単位であり、キリのいい位以下が切り捨てられて書かれていない。

(単位:百万円)とあれば、数字の最後の位が「○百万円」となる。「123、456」とあれば「1234億5600万円」のことである。「この項目の数字が大きいな」というだけではだめで、「この項目の数字が大きい、約1235億もある」と言えて初めて数字が読めたことになる。これに慣れるには、数字を正しい単位で声に出して言うのがいちばんだ。

平成29年度の政府のBSにおいて、負債の部で際立った数字は「公債」である。966兆8986億2800万円。これが悪名高い「借金1000兆円」の正体だ。

ひとつ上に「政府短期証券76兆9877億9300万円」がある。これと合わせることで堂々と「借金1000兆円」と騒いでいるのである。借金ということで言えば、さらに「借入金31兆4434億4900万円」を足したものが日本政府の借金である。

■重要なのは「資産」と「負債」のバランス

「借金の額だけを見て批判するのは的はずれである」ということはすでに述べた。重要なのは負債総額ではなく、“資産と負債のバランス”である。

先の日本政府のBSから、資産合計を見てみよう。670兆5135億2200万円だ。負債合計は、1238兆8753億1100万円である。資産合計から負債合計を引いた資産・負債差額を出せばバランスがわかるが、この数字は計算するまでもなくBSに書いてある。568兆3617億8800万円である。

資産・負債差額がすでに書いてあるのだから、それだけ見ればいいではないかと思われるかもしれない。しかし、大きく際立った数字の勘定項目を確認するクセはつけておいたほうがいい。そうしたからこそ、「政府の負債のほとんどは公債だ」ということもわかったのだ。

「借金1000兆円」と騒ぐ人たちは、「資産・負債差額568兆3617億8800万円」が見えていない。何度も言うように負債の額が問題なのではない。「日本政府の純資産は約マイナス568兆円」が正しい言い方なのである。

■「子会社」である日銀のBSも連結させてみると

問題は「日本政府の純資産は約マイナス568兆円」をどう見るかということだ。

568兆円は、一般人の感覚では途方もない額だが、政府の話として見れば問題のないレベルの数字だ。さらに政府はいろいろな、いわば「子会社」を持ち、グループ企業となっている。日本銀行はその代表的なものだ。つまり、日銀のBSを連結させていいのである。

そこで、本書執筆時点で最新である2019年2月10日現在の営業毎旬報告による日銀のBSを見てみよう(図表2)。日銀は10日おきにデータを公表している。

日銀のBSは(単位:千円)だ。「123、456」は「1億2345万6000円」である。ここでも数字を声に出して読むクセをつけておこう。

日銀にはいろいろな「資産」があるが、際立って大きい数字は「国債」の473兆877億9235万8000円である。

■「お金」が日銀にとって負債である理由

日銀の「負債」で最も大きいのは「当座預金/376兆8004億9798万円」、次に大きいのが「発行銀行券/106兆5571億5865万3000円」だ。

当座預金とは「民間金融機関の日銀当座預金」、銀行発行券とは「発行された日本銀行券つまり紙幣」のことである。両方とも、言うまでもないが「お金」のことだ。

「お金がなぜ日銀の負債になるのか」といえば、「お金」は、会計的に言えば「日銀が発行する債務証券」だからである。会計の用語はこのように、普通の人々が日常生活の中で使っている言葉のイメージを超えている。だから、学習が必要なのだ。

日銀は、民間金融機関が保有している国債を買い、その代金を民間金融機関の当座預金に振り込むか、日銀券つまり紙幣を発行して渡す。その価値を保証するのは発行元であるところの日銀である。

つまり、「お金」は日銀が発行する「証文」である。したがって「発行銀行券=日銀券=紙幣」も「当座預金」も日銀の「負債」となる。

このように、BSが読めると日銀がどんな仕組みの金融機関であるかということも理解できるようになる。凡百の評論家の解説を読むよりも明解にわかるはずである。

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