- 2019年09月17日 18:15
文在寅氏の「歪んだ正義感」に振り回される日韓
2/2文政権による「司法」の恣意的運用だ
盧武鉉氏と文在寅氏の年齢は7つほど違う。だが、2人ともほぼ同郷で貧困の中で生まれ育ち、弁護士として民主化運動に力を注いで国会議員となり、大統領に当選している。
こうした歴史を振り返ると、韓国の大統領経験者は検察の捜査を受けて刑事被告人となるケースが多いことが分かる。検察の権限が強すぎるのか。それとも大統領の権力が強すぎるのか。
産経新聞の社説(主張、9月10日付)は「韓国の法相任命 『法の支配』の原則に還れ」との見出しを掲げ、こう訴える。
「韓国国民の多くが法相任命の強行に反発しており、来春に総選挙を控える文政権の運営にも多大な影響を与えそうだ」
「この混乱を招いたのは、文政権による『司法』の恣意(しい)的運用であり、その意味ではいわゆる『徴用工』問題の理不尽と同根である。文政権は『法の支配』の原則に還る必要がある」
三権分立を自らに有利に使っている
文政権の運営に強く影響すると、沙鴎一歩も思う。しかし「法の支配の原則に還れ」という主張はどうだろうか。問題は韓国という国家の三権(立法、司法、行政)の分立が機能していないところにある。
徴用工問題に絡んだ日本企業の資産差し押さえについて、文氏は三権分立を口実に、「政治は判決に口出しはしない」という趣旨の発言を繰り返していた。三権分立を自らに有利に使っているだけなのだ。
徴用工問題はすでに日韓の協定で解決された問題だ。本来、文政権は政治判断によって、日本企業ではなく韓国政府による“賠償”を決定できたはずである。日本政府もそれを求めていた。
根底に横たわる「三権分立」の機能不全
産経社説は書く。
「一方で曺氏の妻の起訴などを指揮したとされる尹錫悦検事総長を抜擢したのも文氏だ」
「尹氏は李明博、朴槿恵の元前大統領の事件を指揮したことで文氏に高く評価され、ソウル中央地検検事正から高検検事長を経ずに検事総長に引き上げられた。任命に際して文氏は『生きている権力に対しても厳正に対処しなくてはならない』と指示したとされる。皮肉なことに尹氏は現在、これを忠実に守っていることになる」
まさに文氏は「生きている権力」である。文氏はかわいがっていた尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に手を噛(か)まれた格好だ。産経社説が皮肉を書くのもよく分かる。
さらに産経社説を読んでみる。
「人事への介入で司法を政権の意のままに動かそうとするのは、保守、革新陣営にかかわらず、韓国政治の悪弊である。大統領の多くは退任後に捜査の対象となってきた。文氏の師、盧武鉉氏も悲劇的な最期を遂げた」
沙鴎一歩が前述した指摘と同じだ。その根底には三権分立の機能不全が横たわっている。
最後に産経社説は「法の支配はまた、民主主義や基本的人権などとともに普遍的価値を共有するための主要な要素である。文政権は、この原則から大きく逸脱している」と指摘する。この指摘には同感だ。
日本政府は「悪いのは韓国だ」という立場を貫くべきだ
次に東京新聞。9月14日付の社説は冒頭のリードで「日韓関係の悪化による影響が、各方面に広がっている。両国は市民レベルでは助け合い、学び合ってきた。交流を断つのではなく、成熟、拡大させたい。それが関係改善の糸口にもつながるはずだ」と理想主義者のように書く。
「交流を断つのではなく、成熟、拡大させたい」は分かるが、戦後最低レベルと言われる日韓関係の悪化をどう解決しようと、東京社説は言うのか。そう考えながら読み進めると、こうある。
「東京と大阪で今月七日、差別反対を訴える集会『日韓連帯アクション』が開かれた」
「若者らが日本語や韓国語で、『差別や憎悪よりも友好を』と書かれた紙やプラカードを掲げた。日韓関係への危機感の表れだ」
「こういった動きを受け、菅義偉官房長官は記者会見で、『両国の将来のため、相互理解の基盤となる国民間の交流はこれからも継続していくべきだ』と述べた」
「交流の重要性を認めながらも、政府レベルでは、相手側に責任を押し付けるだけで、打開の動きが見えない。残念な事態だ」
若者たちが日韓の友好を求める話を書くのはいい。だが、それをテコに日本政府を批判するのは間違っている。日韓関係を悪化させたのは韓国だ。悪化のきっかけである徴用工問題は、1965年の日韓請求権協定ですでに解決済みだ。これが現実である。
それにもかかわらず、韓国が文句を付けてきた。日本政府は「間違っているのは韓国だ」という立場を貫き、これを国際社会に訴えていくべきである。
「知恵を出し合え」と逃げの社説に終始する東京新聞
東京社説は最後にこう書く。
「今後、国連総会や天皇陛下の『即位の礼』、日中韓首脳会談など首脳クラスが顔を合わす機会が続く。市民の交流に水を差さないためにも、関係修復に向け、知恵を出し合ってほしい」
「知恵を出し合う」というのは、社説を書く論説委員が困ったときの常套(じょうとう)手段である。逃げの社説だ。「即位の礼」で外交問題を持ち出すのも良くない。
東京社説には日韓関係の悪化を解決する具体策を示してほしかった。
韓国政府は9月11日、日本政府による対韓輸出規制の強化についてWTO(世界貿易機関)に「協定違反だ」と提訴した。対韓輸出規制の強化とは、半導体材料など3品目の輸出管理厳格化措置(7月4日発動)のことで、ルールに基づいた規制強化の第1弾である。韓国は第2弾のホワイト国(輸出優遇国)外しについても、提訴をにおわせている。
今後始まるWTOでの審議は、日本の正当性を国際社会にアピールする絶好の機会である。
自国の利益を最優先に交渉を進める。これが外交の基本だ。時には優しく謙虚に、時には狡猾(こうかつ)に激しく。日本政府はWTOの審議の場で、日本の正当性を毅然(きぜん)と主張してほしい。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
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