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内閣についての韓国紙からのインタビュー

内閣改造のあと、韓国TBS放送局のキム記者から書面でのインタビューがあった。
小泉進次郎について韓国メディアも注目していることが伺える。

最近、日本の日経新聞の世論調査によると、11日に行われた内閣改造と党人事について、日本内では肯定的に見る世論が優勢でした。先生は新しい内閣をどのように評価しますか?

「滞貨一掃内閣」「お友達内閣」などと野党は評していますが、私はそれ以上に問題なのは、党内に80人いる「大臣待機組」を、首相に対する忠誠度だけによって格付けして、採否の基準にした点だと思っています。

 あきらかに能力に問題がある政治家や、スキャンダルで政治生命を失いかけた政治家をわざわざ選んで登用しているのは、そのルールを周知させるためです。政治家として「食って」ゆきたければ、ボスに対して徹底的なイエスマンであればよい。他には何も求めないという官邸のルールを誇示してみせた。

 このルールが適用されるのは政治家だけではありません。今の日本では、官僚も、ジャーナリストも、学者も、芸能人さえも、その個人的な能力ではなく、首相に対する忠誠心によって格付けされています。私は個人的にこれを「安倍マイレージシステム」と呼んでいます。

 現在の政権は「忠誠心の査定」がきわめて迅速かつ正確です。「首相に逆らったけれど出世できた」とか「首相におもねったけれど『いいこと』がなかった」というような「バグ」がほとんど起こらない。その点ではすばらしく効率的に作動しているシステムだと思います。

次期首相に適した人物としては小泉進次郎が挙げられています。なぜ小泉さんが人気があると思いますか? 私はまだ彼の能力が発揮された分野がないと思います。

 個人的にお会いした人たちは口を揃えて「たいへん感じのよい人物」だと言います。僕も二度お会いしたことがありますが、たいへん感じのよい人物でした。おそらくその場において向かい合っている人との親密性を維持することを対人関係の基本的なマナーとしているのだろうと思います。

 かたくなに自説を曲げないとか、人の話の腰を折るとか、異論を完膚なきまでに論破する・・・とかいうことを決してしないタイプの政治家です。こういう「場の親密性を優先し、もめごとを嫌い、誰の意見に対してもにこやかに応接する」というのは、実は日本の古い村落共同体における大人のふるまいに通じています。

 この一種の「先祖返り」的な美質ゆえに、小泉進次郎に対して日本の有権者たちは「若いのに、人間ができている」とか「話を聞いていると、なんだかほっとする」という漠然とした印象を抱いているのではないかと思います。

 彼には「政治生命をかけても実現したい」という政策は特にないと思います。それよりは集団内部の対立をおさめ、合意形成のためのおだやかな口調での対話の場を立ち上げるという「技術」の洗練にこれまで政治家としての自己陶冶努力を集中させてきた。

 これからの日本は先が見通せません。あらゆる指標は日本の国力の劇的な劣化を示しています。どうしたら日本は救われるのか、誰も正解を知りません。こういうときには「自分への忠誠心で他人を格付けする政治家」と「場の親密性を重視する政治家」のどちらを選ぶか訊かれたら、私は後者の方が好ましいと思います。

小泉進次郎は小泉元首相と比較したときにどんな人だと思いますか。

 父小泉純一郎元首相は周りの意見にあまり耳を貸さず、自分の政策(しばしばきわめて非現実的と思われたもの)をたからかに宣言し、そのうちのいくつかを実現してみせました。しかし、小泉進次郎はそういう「宣言型」政治家ではなさそうです。

 村落共同体の合意形成は、難問について全員が賛同してくれるような解を誰も思いつかず、時間をかけてぐずぐずしているうちに、いろいろな変数が消えて、「もう、これ以外に選択肢はない」というところに落ち着いて、全員がひとしく諦め顔で話が終わる・・・というものです。小泉進次郎はたぶんこの「もうこれしか解がない」というあきらめ顔に全員がなるまで待って、それを見切って「とまあ、そういうことでよろしいですね」とまとめる人をめざしていると思います。

 CEOがすべて決定して、下はそのアジェンダに従うしかない・・・という株式会社型の組織に慣れ切った現代日本人からすると、「従業員や取締役や株主や消費者の顔色をじっと観察することを主務として、なかなか経営方針を決めないCEO」というのはある種「新鮮」に映るのかも知れません。違うかも知れないけど。

福島は、小泉環境相が一番最初に訪ねた場所です。彼を環境相に任命したのは東京オリンピックを勘案した措置と見ますか。しかし彼は脱原発を示唆しました。

 原発問題は政権にとって「アキレス腱」です。原発問題を解決する「正解」も「秘策」も存在しないからです。この問題は誰が担当しても泥をかぶるだけです。安倍政権は、この問題を棚上げ、先送りして、五輪が終わるまでは、できるだけ話題にならないことを願っています。

 小泉進次郎の選任もその文脈の中でのことだと思います。

 彼はおそらく原発にかかわる難問に遭遇するたびに、顔を暗くして、「難しい問題です」とつぶやくだけで、特段の解は示さないでしょう。そして、時間が経って、変数が減って、「もうこれしか選択肢がない」と見切れるまで政策的なイニシアティヴは発揮しないだろうと思います。

安倍首相は任期内に改憲を約束しています。戦後世代が改憲問題に積極的な理由は何だと思いますか。改憲が意味するところは何だと思いますか。

 安倍首相の改憲へのこだわりにはいくつもの理由があります。戦後日本の憲法論争と対米関係の全体を俯瞰しないと説明は尽くせませんので、申し訳ないですけれど、私の他の書物をご参照の上、そちらでまとめてください。憲法についての講演録を添付しましたので、そちらもご参照ください。

 と書いて送ってから、ちょっと不親切だったなと思った。

 話が尻切れトンボになったので、一応最後まで答えてみる。

 韓国のメディアから何度かインタビューを受けたましたが、アメリカから押し付けられた憲法を廃棄しようとすることと、アメリカに徹底的に従属することがどうして整合するのか、なかなかわからないようです。たしかに説明が難しい。わかりやすくご説明します。

「対米従属を通じての対米自立」というのは戦後自民党政治の基本戦略でした。この場合、「手段としての対米従属」「目的としての対米自立」は経時的に配列されているので不整合は生じません(「面従腹背」という熟語で言い表すことができました)。

 しかし、今の安倍政権では、対米従属そのものが自己目的化しており、対米自立は目的から降ろされました。ですから、安倍「改憲」は「アメリカから押し付けられた憲法から自主制定憲法へ」を意味しません。安倍政権がめざしているは「さらなる対米従属を国民の反対を押し切っても滞りなく実行できるように全権を官邸に集中させる」という日本の脱民主化です。

 対米従属システムを永遠化させるための手段としての改憲です。

 アメリカに「属国の代官」として信認されることによって日本の為政者はその地位を保全されてきました。情けない話だけれど、それが現実です。日本国益よりもアメリカ国益を優先的に配慮する政治家がアメリカにとって「最も望ましい日本の統治者」であることは誰にでもわかります。

 問題は、日本国民自身が「アメリカに属国の代官として信認されることが、日本国の総理大臣として最も重要な条件である」と信じていることです。属国民マインドがそこまで深く内面化してしまったのです。日本の対米自立、国家主権の回復は果てしなく遠い課題となっています。私が生きている間には実現することはないでしょう。

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