記事

【福島から考える大臣の資質】垣間見えた〝カンペ〟の中身。「『東電さん』と言うな」から「『自己責任』と〝自主避難者〟を突き放すな」まで。大臣は自分で考え言葉を発せよ

2/2

【言葉ばかりの「寄り添う」】

 カンペは、廃炉作業で取り出した後の燃料デブリや使用済み核燃料の福島県外での最終処分についても言及。

「まず安全な保管と併せ取り出し方法を検討し、その後、処分方法を確定。国としては、最後まで責任を持って対応。地元は県外を要請するも現時点で確定できる段階にない」

「使用済み燃料の県外搬出は、事業者である東京電力の責任において行われるもの」

 避難指示解除や避難者支援についても触れられている。

「×政府は解除されたら帰還してもらいたいと考えている→解除をすることは、帰還を強制するものではない。帰還するかどうかは被災者一人一人のお考えに基づくもの」

「×避難指示区域の状況を過度にネガティブな言葉(死の町)で表現する発言→ふるさとを思う避難者の気持ちに寄り添う」

「×自主的避難者等が帰還しないことを『自己責任』と突き放すような発言→国は避難者に寄り添って生活環境の整備に全力を挙げる」

 「一人一人に寄り添う」は常套句だが、現実の施策はあまりにも違う。〝復興五輪〟が開催される来年3月には大熊町と双葉町以外の帰還困難区域から避難している人々への住宅提供が打ち切られる。政府の避難指示が出されなかった区域からの〝自主避難者〟に対してはもっと冷たく、福島県が国家公務員宿舎への入居者に家賃2倍請求を続けている。
 9月県議会には5世帯に対する「追い出し訴訟議案」も提出。被災県が避難県民を訴えるという異常事態になっている。しかし、国は「福島県の判断」、「福島県の意思を尊重する」として主体的な動きに否定的だ。

 先の伊達市の男性は「今回のカンペは経産大臣ですが、復興大臣向けのカンペも環境大臣のカンペもほぼ同じ内容だと思います」と話す。つまり、カンペはあくまでも「公式な言葉」であって、本音では無い。
 政府交渉を続けてきた瀬戸さんは、官僚の用意した言葉だけを大臣が棒読みしている現状に「要するに、福島の被害や避難者の事は既に課題にすらなっていないのだと思います。心を痛めたり、申し訳ないと思う心が無いから考える事もしない。そんな人たちが支援策を講じるとは思いません」と語った。

田中和徳復興大臣も会見中は手元に用意した〝カンペ〟に何度も目を落とした。福島県知事との会談中、事務方の用意した文章をひたすら棒読みする始末。「現場主義」、「被災地に寄り添う」と繰り返したが、この言葉は歴代復興大臣がいつも口にしていた決まり文句。田中大臣の言葉では無かった=9月13日、福島県庁で撮影

【「期待しないが、ここまでとは…」】

 原発事故後、大臣発言が福島県民の反発を招いた事がたびたびあった。
 石原伸晃環境大臣が2014年6月16日、中間貯蔵施設建設を巡る地権者などとの交渉について、官邸で記者団に対し「最後は金目でしょ」と発言。翌17日の記者会見で「住民説明会の結果、最後は、用地の補償額や、生活再建策・地域振興策の規模、金額を示すということが重要な課題だということを申し上げたものです。誤解を招いたことについては心からお詫びを申し上げたい」などと陳謝した。

 記憶に新しいところでは今村雅弘復興大臣が2017年4月4日、閣議後の記者会見で〝自主避難者〟に対する住宅提供打ち切り問題について問われ「福島県が中心になって寄り添ってやる方がいいだろう」、「(避難者)本人の責任でしょう。本人の判断」、「裁判だ何だでもそこのところはやればいいじゃない」などと述べた上に「出ていきなさい。もう二度と来ないでください」と怒鳴ったのが問題視された。今村大臣はその後、「(大震災は)東北で良かった」という趣旨の発言をして辞任した。

 今年4月には、桜田義孝五輪担当大臣が東京都内で行われた衆議院議員のパーティーで、この議員を「震災復興以上に大事」と発言。それまでの失言も合わせて責任を取る形で辞任した。

 就任したばかりの田中和徳復興大臣に至っては、福島県知事との会談中もカンペを棒読み。記者会見でも具体的な事は答えられず、挙げ句には、13日の定例会見で原発事故による自主避難者の住宅問題について問われ、「復興庁は担当ではない」と述べる始末。早くも資質を疑う声が噴出している。

 「福島原発かながわ訴訟」原告団長・村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、「役人の書いたカンペを手に会見をする。これが現政権の現実なのです。就任時に官僚からレクチャーを受けているだろうけれど、原発事故の全体像は頭に入っていない。だからカンペが必要なのでしょう。まあ、今回の内閣改造に何ら期待出来ないというのは当たり前の事だけど、大臣というのはこれほどまでかと思いますね。再来年には丸10年になるというのに…。事態は悪くなる事を覚悟しなければならないと思いました」と落胆した。

 飯舘村に暮らしながら放射能汚染の測定を続ける伊藤延由さんは「一番目の『ちょう→まち』はやむを得ないと思いますが、その他の項目はカンペを読みながら発言するのはあまりにもみじめですね。大臣は自分の言葉で話せるようになってから出て来い!と言いたいです」と話す。

 大臣とは何か。福島の復興とは何か。国が果たすべき責任とは何か。様々な事を考えさせられるカンペだった。

(了)

あわせて読みたい

「福島第一原発事故」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    安倍首相 ヤジの原因は憲法改正?

    メディアゴン

  2. 2

    コロナ検査 医師が不利益を指摘

    名取宏(なとろむ)

  3. 3

    銀座商店「震災時より人少ない」

    田中龍作

  4. 4

    韓国の肺炎感染者 4日間で11倍に

    木走正水(きばしりまさみず)

  5. 5

    新型肺炎めぐる過剰な報道に苦言

    かさこ

  6. 6

    北の病院で12人死亡 新型肺炎か

    高英起

  7. 7

    告発した岩田医師の行動は成功

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    みずほ銀行描いた本 衝撃の内容

    キャリコネニュース

  9. 9

    父逮捕で娘が「お嬢様」から転落

    幻冬舎plus

  10. 10

    検事長の定年 口頭決裁あり得ぬ

    大串博志

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。