- 2019年09月17日 10:03
【福島から考える大臣の資質】垣間見えた〝カンペ〟の中身。「『東電さん』と言うな」から「『自己責任』と〝自主避難者〟を突き放すな」まで。大臣は自分で考え言葉を発せよ
1/2そんな基本的な事までカンペを用意してもらわないと答えられないのか─。
就任のあいさつで福島県庁を訪れた菅原一秀経産大臣が手にしていたカンペから、官僚たちが新大臣にどのような発言を求めているのか、その驚きの一端が垣間見えた。台風15号による甚大な被害の中、強行された内閣改造。
しかも、新大臣に手渡されたカンペには「東電には『さん』付けしない」など、まるで子どもに言い聞かせるようなものばかり。それでも中身のある言葉を発せられない新大臣に、福島からの避難者、福島在住者、支援者いずれの立場の人も、怒りを通り越して呆れ果てている。

【「感想を言う気にもならない」】
「感想を言う気にもならないです」。原発避難者の住宅問題などに奔走している「避難の協同センター」事務局長・瀬戸大作さんの言葉が全てだった。
筆者が垣間見たカンペには、「避けるべき発言の例」がバツ印とともに書かれていた。福島県知事との会談後に県庁廊下で行われた囲み取材。菅原大臣が官僚から手渡されたカンペを仰々しく広げる。そこには、就任して2日と経っていない菅原一秀経産大臣が記者たちに揚げ足を取られないためか、あまりに基本的な言葉が並んでいた。
「福島県は全て『○○町』は『ちょう』ではなく、『まち』と読む」
「『東電さん』と『さん』付けで呼称しない。単に『東電』と言う」
「『トリチウム水』という表現」→処理水にはトリチウム以外の核種も含まれていることから、トリチウム以外の核種は全て除去されているという印象を与えるような呼称は避け『ALPS処理水』と呼称」
これらの言葉に、福島県伊達市の60代男性は「驚きですね。このようなことは大臣は知らなくて良いレベルということなのでしょう。このレベルを教えてもらえないといけない大臣が福島県民に寄り添えるはずがありません」と呆れた。
この男性は、反対が多い「ALPS処理水」の海洋放出について、経産省の官僚がカンペに「福島第一原発の処理水を海洋放出するかの発言→漁業者等から強い懸念があるため、技術的な観点に加え、風評被害などの社会的な観点も踏まえて対応を検討」と書いている点にも着目した。
「官僚はここまで分かっていて、日頃から注意を払っていたでしょう。それなのに前環境大臣はあえて『海洋放出』を口にした。変だなと思いました。国や東電は汚染水を海洋放出したい、海に流しても安全性に問題無いというのが本音でしょうから、前環境大臣に言わせたのではないか。伊達市の被曝リスクのように『低線量なのだから大丈夫』と言われているようで悔しいです」
原田義昭前環境大臣は今月10日の会見で「やっぱりそれ(原発の今保管している水)を思い切って放出して、それを希釈すると、こういうことも、いろんなことを、選択肢を考えると他にあまり選択はない」などと発言。後任の小泉進次郎環境大臣がさっそく福島県漁連を訪れるなど火消しに躍起になっている。
原田前大臣は14日、「『原発処理水放出』のその後」と題したブログで「誰かが言わなければならない、自分はその捨て石になってもいい」などと書いている。

- 鈴木博喜 (「民の声新聞」発行人)
- フリーライター