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曺国任命のウラに金正恩の影

法務部長官に就任した曺国氏(2019年9月9日) 出典:韓国法務部ホームページ

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・文大統領が民意を無視して疑惑まみれの曺国の任命強行。

・曺国を批判していた北朝鮮が一転、曺国を高く評価する論評。

・奇妙な一致に「曺国任命強行の裏に金正恩の意向」との分析も。

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不適切な奨学金受給と不正入学、息子の兵役逃れ、妻の私文書偽造と親族の資産隠し、家族ぐるみの不透明な投資ファンドなど、さまざまな疑惑が玉ねぎの皮をむくように飛び出すことから“タマネギ男“と称されたソウル大学教授・曺国(チョ・グク、54)を文在寅大統領は9月9日午前、法務部長官に任命した。今回の任命で文大統領が国会聴聞会を無視して任命した長官級以上の高位公職者は22名となった。

■曺国強行任命の狙い

従北政権20年執権南北連邦制の実現、そして大統領退任後の身の保全、これが文大統領を動かしている行動指針だ。この指針に従って彼は、自由民主主義を死守しようとする保守勢力を壊滅させ、国家保安法の撤廃南北連邦制を合法とするための改憲を推し進めている。 

そのために去る4月29~30日の国会政治改革特別委員会と司法改革特別委員会において、①選挙制度改革案(準連動型比例制)②高位公職者非理(不正)捜査処法(公捜処法)、そして③検察・警察捜査権調整のための刑事訴訟法改正案迅速処理対象案件(ファーストトラック)に指定された(ファーストトラックに指定された法案は、一定時間が過ぎると、必ず本会議で表決をとらなければならない事になっている)。

この諸法案実現のための人事として、朴槿恵政権潰しの1等功臣、尹錫悦(ユン・ソンヨル、58)を「ごぼう抜き人事」で大検察庁(最高検察庁)トップに据え、体制転換を主導するキーマンとして社会主義革命を主張する曺国(チョ・グク)を法務部長官に任命した。

文大統領は、任命強行について「私は原則と一貫性を守ることがもっと重要だと思い任命した」と述べ、「本人(曺国)が責任を負わなければならない明白な違法行為が確認されなかったのに、疑惑だけで任命しないならば、悪い先例になるだろう」と説明した。

民意の無視を「原則と一貫性を守る」と表現し、不条理な任命を「疑惑だけで任命しないならば、悪い先例になる」などとするこの厚顔無恥な発言は、多くの良識ある人々の怒りを買った。文大統領の「野望」はいま多くの国民の強い抵抗に遭遇している。

3大テレビ局の一つSBSテレビが世論調査機関の「カンタコリア」に依頼、全国満19歳以上の男女1026人を対象に9月9〜11日に調査した世論調査では、曺国への検察捜査が「正当な捜査」という回答は60.2%、「無理な政治介入」という回答は、35.6%だった。曺国への検察捜査を圧倒的多数が支持している。

こうした中で14日早朝、検察は海外から帰国した「曺国私募ファンド」のキーマンである曺ボムドン氏(曺国の甥)を仁川空港で逮捕した。また犯罪容疑は認められたもののソウル中央地方裁判所(担当メン・ジェゴン判事)から逮捕令状を棄却された2名の人物(イ・サンフンチェ・テシキ)に対しても再び出頭させ調査を始めている。

■任命強行支持の世論操作部隊早くも稼働

だが曺国任命強行翌日の9月10日には従北勢力の「任命支持世論操作チーム」が早くも稼働し始めた。ポータルサイト「DAUM」の20秒の記事映像に対する「文大統領の決断を強く支持します。曺国ファイティング」とのコメントで「推奨」と「非推奨」の数字が異常な動きを示したのである。

映像開始時「非推奨」は669個だったが、10秒の間に推奨が7664個、非推奨が685個とカウントされた後、約束でもしたかのように同時に上昇が停止した。推奨対非推奨比率は映像開始と終了の両方とも正確に91対9を維持した。映像を見た「DAUM」の関係者は、「おかしく見えるがありえること」としたが、電算専門家は「マクロ(自動入力の繰り返し)プログラムを利用した可能性が高い」とした(朝鮮日報韓国語版2019・9・11)。

この動きについては「ドルーキング一味」(文大統領を当選させるために組織されたコメント捏造隊。頭目と見られる金ギョンス慶尚南道知事は一審有罪)のような組織が再組織され稼働されたという分析も出ている

任命強行した文政権にとって最悪の事態は、どこかの時点で曺国が刑事責任を問われるような状況になることだが、世論操作プログラムを稼動させ、検察に対する圧力を加えることで巻き返しを図ろうとしているようだ。

■曺国任命強行決断の裏に金正恩の意向?

文大統領が、国民の強い反対があるにも関わらず、疑惑まみれの曺国をなぜ法務部長官に任命したのだろうか?

その背景としては、任命強行による一般国民の批判世論も怖いが、それよりも法務部長官任命見送りによる支持勢力の離反が怖かったとの見方が一般的だ。また政治・経済・外交と何をやってもうまくいかない中、任命見送りで野党を勢いづかせ、政権のレイムダック化を加速せることにも危機感をつのらせたようだ。

こうした文大統領の「中央突破決断」には、北朝鮮のシグナル、すなわち金正恩の意向が関係したとの分析も出ている。

北朝鮮は当初「曺国スキャンダル問題」を批判的に見ていた。北朝鮮の対韓国扇動媒体である「わが民族どうし」は「今月に入って発生した南朝鮮の曺国ゲートに関して」という論評(8月28日付)で、「南朝鮮の曺国という者が司法長官に任命されようとしているが、この者は勉強もできない自分の娘を不正な方法で有名な医学大学に進学させ、ソウル大で“最も恥ずかしい卒業生1位”に選ばれているなど、非常にお粗末な人だ」と曺国司法長官候補者を批判していた。

しかしどうしたことか、国会聴聞会を終えた直後の9月8日に、もう一つの対韓国宣伝媒体の「メアリ」が、「大混乱の“曺国政局”の出口」との見出しで「わが民族どうし」とは正反対の論評を出した。

そこでは曺国について「曺国を進歩民主陣営(従北陣営)の有望な“大統領候補”と見ることに異議をとなえる人はいない。この有力な人物が法務部長官になり、誰も手をつけなかった司法改革まで完遂すれば、彼の人気がさらに急騰し保守陣営の再執権戦略に暗い影がさすというのは自明の理である」と高く評価し、「一度踏み出した道が正しい道であることを確信するならば、とどまってはならない。果敢に前進し歩みを速めてこそ出口により早くたどり着くだろう」(「メアリ」2019・9・8)と主張した。このような主張の大転換は、金正恩の指示なくしては考えられないことだ。

「メアリ論評」と文大統領の「任命強行」の奇妙な一致から、「文大統領の曺国任命強行は金正恩の指示ではなかったのか」との推測がなされているのである。

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