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  • Willy

数学のできない大学生を見て思うこと

先日、「大数の法則と中心極限定理を恋愛小説風に語ってみる」というおちゃらけ記事を書いたが、それにはきっかけがあった。
それは、数学のできない大学生のことだ。

私がいるWS大(学部)は入学が易しい。
出願者の母集団は米国のごく平均的な高校生だと思われるが、その約80%に入学許可を与えている。
大学は入学した全ての学生に対して数学を最低1科目履修する事を義務付けているので、かなり数学が苦手な学生も何らかの科目を履修することになる。

私は昨年、そうした数学が苦手な学生向けのコースを受け持った。
学生の数学的知識は、日本の公立中学3年生と同じくらいであったように思う。
公立中学と同じように、できる子は結構できるし、できない子は平面上の直線の式も覚束ないという感じで、バラツキも結構大きい。
ちなみに、日本では「分数ができない大学生画像を見る」というのが昔話題になったことがあったが、アメリカの簡単な数学の授業では 1/2 + 1/3 は、0.833で済むので話題にならなそうだ。

そのコースを教えてみた一番感じた事は、そのクラスの学生は数学が苦手だというよりも言語能力そのものが低いということだ。

先日、やはり似たようなクラスを教えた数学科のティーチングアシスタントの院生と話をしていて、そもそも問題文を図に直す事ができない学生が結構多いという話になった。例えば、「ある三角形の二つの角が30度と90度で、その2角に挟まれる辺の長さが1の時、残りの2辺の長さをそれぞれ求めなさい。」というような問題があったとき、そもそも1行目の状況を図に書く事ができないという。

もっとひどい学生になると、英語の文章を理解する事ができないことがある。
驚く事なかれ、学生は純粋なアメリカ人である。
私はある時、「期末試験の範囲は5~8章と書いてあるが、1~4章は含まれないのか?」という質問をメールで受けたので、「1~4章は明示的には含まれないが、5~8章の問題を解く時に1~4章の知識が必要になることはある。」と返答した。しかし学生は意味が分からなかったようで、「結局、1~4章は含まれるのか含まれないのか?」と再度、尋ねて来た。
試験範囲に関する質問はあらゆるコースで出るが、通常の大学2年生以上向けのコースであれば私の返答が理解できない学生はいない。

そんな学生達であるから、試験問題は、授業でやった問題と全く同じ形でないと解けない人が多い。
数字は異なっていても代入することで対応できるが、問題文の文章構造が異なるともう何が書いてあるのか理解できなくなってしまうのだ。

時々「計量的な問題は苦手だ。概念的なことは良く分かるんだけど。」という学生もいるが、これは怪しいと私は思っている。
計量的な問題では理解度を試す事が比較的容易であるが、概念的な問題では理解度を試す事が難しいからである。
おそらくこのような学生は「計量的なことが苦手なことは分かっているが、概念的なことが苦手かどうかははっきりしない。」という状態なのだろうと思う。

例えば小学生が「知識は力なり」という格言を知って、「私は「知識は力なり」という言葉を読んで感動しました。本当に知識は力だと思います。
私もたくさん知識を付けて力のある大人になりたいです。」と日記にでも書けば、小学校の先生的には二重丸だろう。
しかし、この作文は基本的に同じ事を3回繰り返して書いただけで、小学生が本当に文意を理解しているかどうかは全く分からない。

あるいは「"知識は力なり"の意味を説明しなさい」という高校生向けの現代社会の問題なら、「"知識は力なり"は、16-17世紀イングランドの哲学者フランシス・ベーコンの主張に基づく格言である。彼が1620年に著した『ノヴム・オルガヌム』第1巻「警句」において述べているように、人間の知識と力が一致するのは、原因を知らなければ、結果を生み出すこともできないからである。」とでも書けば普通の先生は大満足であろう。
ちなみにこれはWikipediaから主要部分をコピペしただけで、同じく、これを書いた学生が真意を理解しているかどうかは分からない。
実際、私はこの格言の意味をきちんと理解してコピペしたわけではない。

こうして考えていくと、数学が極端に出来ない学生というのは、実は「言語能力の低さが数学の試験によって露呈した」だけであって問題は数学力ではないのではないか、と思えてくる。
こうした学生はおそらく、他の分野の勉強をするときも、新聞を読むときも、恋愛小説を読むときも、内容をきちんと理解できていないのではないだろうか。

<余談>もちろん、数学は言語能力だけで学べるものではない。数的な感覚もある程度必要である。
数学が苦手な学生向けのコースで、私が黒板に、1 + 2 + 3 + … + 100と書いたとき、ある学生が真面目な顔をして、「3と100の間には何があるのですか?」と聞いてきた。そして他の学生からは笑いが漏れて来なかったのである。

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