記事

文在寅政権を頑なにさせる韓国の「歴史的事情」

1/2

日本による一連の輸出管理強化措置以来、日本を「不法な加害者」として激しく批判し続ける韓国の文在寅政権。著述家の宇山卓栄氏は「文在寅政権は、歴史的に属国であることを強いられた『被害者の伝統』に自ら進んで依拠しているようにも見える」と指摘する——。


1000年以上にわたって大国に支配され続けてきた歴史を克服すべく、中国とアメリカに二股外交を仕掛ける北朝鮮は、韓国にとって「希望の光」なのか——地下鉄駅のテレビで、北朝鮮のミサイル発射のニュースに見入るソウル市民(2019年9月10日) - 写真=AP/アフロ

なぜ韓国にとって日本は常に「加害者」なのか

経済産業省が2019年7月1日に「韓国向け輸出管理の運用の見直し」を発表して以来、韓国は日本を激しく批判しています。さらに8月2日、日本政府が韓国を輸出優遇対象であった「ホワイト国」から除外する政令改正を閣議決定すると、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「加害者である日本が、盗っ人猛々しく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」(*1)と応じました。

文大統領は8月15日、「光復節」の式典で「日本が対話と協力の道に進むなら、われわれは喜んで手をつなぐ」(*2)と演説しました。これは軟化ではなく、一種の恫喝(どうかつ)ととらえるべきです。「徴用工問題や慰安婦問題で、日本が誠意を見せれば対話してやる」と言っているわけです。国内世論のバランスを取りながら、「悪いのは日本」というイメージを国際世論にも訴える格好になっており、巧みな誘導感覚も見て取れます。

文大統領はいつものように、「日本の朝鮮統治が不法」とする捉え方に固執し、日本を不法な「加害者」と決め付けています。その上で、日本の輸出管理の一連の措置を徴用工問題の「明白な経済報復だ」と断じています。市民のデモも連日催され、「100年前に加害者だった日本が再び韓国を対象に明白な経済侵略を犯している」(*3)などという主張が繰り返されていました。

韓国は自分に不都合なことがあると、「日本の不法な植民地支配のせい」というところにすべての問題を帰結させようとします。結局、自分たちが属国支配されていたという被害者意識や甘えの構造から抜け出せないのです。

朝鮮半島にはまず、7世紀に唐の冊封を受けた新羅が半島を統一して以来、千数百年にわたって中国の属国として支配されてきた歴史があります。中国による支配は、日清戦争の講和交渉の末に調印された下関条約(1895年)によって、清が李氏朝鮮に対する宗主権を放棄し、その独立を承認するまで続きました。

しかしその後は日本とロシアが、朝鮮半島の支配権をめぐって対立。日露戦争中から戦後にかけての3次にわたる日韓協約で日本は韓国の保護国化を進め、1910年に「韓国併合に関する条約」によって、日本は韓国を併合しました。第2次大戦で日本が連合国に降伏した後、朝鮮半島は日本の統治下から離脱。38度線から北はソビエト連邦、南はアメリカによる占領統治を経て、1948年に現在の北朝鮮と韓国が誕生しました。

それから70年を経た今も、韓国は歴史的に属国であることを強いられた「被害者の伝統」に、自ら進んで依拠しているようにも見えます。8月1日、韓国の与党「共に民主党」の李仁栄(イ・インヨン)院内代表は、日本の一連の輸出管理強化措置に対し「第2の独立運動となる経済・技術の独立運動に火がつくだろう」と発言しました。国際的なサプライチェーンの中では、国ごとの役割分担があります。それを「属国」的構図としてとらえ、「独立運動」という言葉でナショナリズムをあおる姿勢は、あまり穏当とは言えません。彼らの被害者意識に対して毅然とした態度を取らず、甘やかしてきた日本にも責任はあると思います。

北朝鮮にはひたすら融和的

奇妙なことに文政権は、北朝鮮に対しては自ら進んで「属国」的な態度をしばしば見せています。核開発問題をめぐって国際社会が同国への制裁圧力を高める中、文大統領は輸出規制や開城工業地域の再稼働などの問題で、常に北朝鮮に融和的な態度を取り続けてきました。欧米メディアには金正恩の「エージェント(スパイ要員)」や「スポークスマン(広報担当者)」だなどと言われる始末です(*4、*5)。

8月5日に青瓦台で開かれた首席秘書官・補佐官会議で、文大統領は「南北の経済協力によって平和経済が実現すれば、われわれは一気に日本経済に優位に追いつくことができる」と述べました(*6)。北朝鮮に追従する文大統領のホンネが出た形です。

一方、北朝鮮の報道官は8月16日、「韓国当局者とこれ以上話すことはなく、再び対座する気もない」と述べました(*4、*7)。このことから、「文在寅は金正恩からも見放された」ととらえる見方がありますが、そうではないと思います。北朝鮮は米韓軍事演習を行う韓国の名を借りて、アメリカを間接批判しているわけです。文政権との蜜月は一切変わりません。韓国の裏支援がないと、北朝鮮は生きていけないからです。

さらにこの間接批判も、「制裁は緩和されず、軍事的圧力も続いている」という被害者としてのポーズを北朝鮮が取るためのものにすぎず、彼らはこれで時間稼ぎをしながら着実にミサイル実験等を繰り返し、兵器技術の水準を高めています。いずれは、日本への恫喝も強めてくるでしょう。

いずれにしても、文政権と北朝鮮はズブズブの関係です。国連安全保障理事会の専門家パネルの報告やアメリカ財務省の報告からも明らかなように、韓国は海上で北朝鮮との「瀬取り」による不正輸出などを繰り返し、北朝鮮を裏で支援しています。そのような韓国に対し、日本が輸出管理を厳格化しようとするのは当然です。

韓国は今、国内総生産(GDP)で約100分の1しかない北朝鮮の言いなりになっているように見えます。日本の輸出管理厳格化に反発しつつ、北朝鮮と経済協力して危機を克服しようと主張する文大統領の発言は、日本から見ると意味不明ですが、彼らにとっては民族が共に「悪辣(あくらつ)な日本」と戦うためのよい機会であり、こういう苦しいときこそ、民族統一の理想へと近づいていけると考えているのでしょう。

文大統領は8月15日の「光復節」の式典で、「2045年までに朝鮮半島の和平と統一を目指す」と表明しています。北朝鮮に追従する「文在寅現象」とも呼ぶべき姿は、属国意識の変種症状と言ってよいものかと思います。

明治時代、陸奥宗光は、朝鮮が中国の属国でありながら、属国としての被害者意識がなく、中国や中国文化をあがめることを道徳的使命と感じているとして、「中国と朝鮮は奇妙な宗属関係にある」(陸奥宗光『蹇蹇録』より)と指摘しています。何を言われても北朝鮮への融和的な姿勢を崩さない文大統領は、北朝鮮や主体思想をあがめることを道徳的使命と感じているのかもしれません。陸奥宗光の言葉を借りるなら、北朝鮮と韓国もまた「奇妙な宗属関係にある」と言うべきでしょう。

あわせて読みたい

「韓国」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    立民議員の官僚叩きに批判が殺到

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  2. 2

    上野千鶴子氏 任命拒否に危機感

    女性自身

  3. 3

    机叩き…橋下氏語る菅首相の会食

    ABEMA TIMES

  4. 4

    悪質な収集家に裁判官怒りの一言

    阿曽山大噴火

  5. 5

    国に従わず支援求める朝鮮学校

    赤池 まさあき

  6. 6

    ピアノめぐり上皇后様に感銘の声

    BLOGOS しらべる部

  7. 7

    日当7万円 公務員と比較したのか

    橋下徹

  8. 8

    高級車雨ざらし カーシェア破産

    SmartFLASH

  9. 9

    「LGBTで滅びる」削除要請に非難

    女性自身

  10. 10

    移動しなくても良い新しい社会

    ヒロ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。