記事

「西川社長辞任」で日産のガバナンスは根本的に改善するのか

1/2

日産自動車の西川廣人社長が、今週月曜日(9月9日)の定例取締役会後の記者会見で、とうとう社長辞任を表明した。

SAR(株価連動型インセンティブ受領権)報酬の不正受領の事実が社内調査の結果明らかになったと報じられた時点で、社長辞任は不可避だと指摘していたように(【役員報酬不正受領で日産西川社長辞任は不可避】)、西川社長の辞任は全く当然だったが、その「当然の辞任」までの経過は、混乱を重ねた。

記者会見の開始が1時間も遅れたこと、同じ取締役会についての記者会見なのに、取締役会議長ら4名と社長の西川氏の会見は別個に行われたこと、取締役会議長らの会見でも、当初の予定の発表文とは別に、西川社長辞任の発表文が配布され、二つが別個の発表となったこと(それぞれの発表文に「本日取締役会を開催した」という言葉が含まれた)など、異例ずくめの記者会見だった。

1時間遅れで始まった取締役会議長らの会見

取締役会後の記者会見が、午後8時から開かれるということで、報道陣が集まり、ネットの中継も始まっていたが、予定時刻を過ぎても、会見者はなかなか現れない。映像には、待ちくたびれた記者達の様子と、会場内の時計の数字が交互に映し出される。

ようやく木村康取締役会議長ら4名の取締役が現れた時には、時計の数字は9時になっていた。

木村氏が、「本日取締役会を開催いたしました。」と述べた後に読み上げた内容は、概ね以下のようなものであった。

(1)監査委員会より、元会長カルロス・ゴーンさんらの重大な不正行為に関する社内調査の報告を受け、不正によって会社が被った被害総額がおよそ350億円規模に上る。

(2)SARの事案についても併せて調査し、違法性のないことを確認した。

(3)SARの行使日を恣意的に操作することで行使益を不正に増額することが可能であった点は、ガバナンス上の問題として重く認識している。

(4)西川CEOから返納の意思を確認している。

(5)行使日を恣意的に操作することが可能であったなど社内ルールに適合していない面もあることから2020年度より本制度を廃止することとしている。

(6)指名委員会のもと後任の選定の重要な段階に入っていく旨報告があり、また西川CEOからも、大きな節目を迎え会社として次のステップへ大きく一歩を進める段階に入っており、新たなガバナンスのもと次の世代へのバトンタッチを着実かつ早急に進めるため指名委員会の検討を加速してほしいとの旨の発言があった。

木村氏は、このようなことを述べた後、「今後も取締役会としてやるべきことをしっかりやり、会社の発展、成長に向けてその使命を果たしていきたいと思っております。この件につきましては本日関係委員長3人揃っておりますので、皆様からのいろいろなご質問、ご意見を伺いたいと思います。」と述べた。

通常、ここで、会見冒頭の発言は終わり、そこから、質疑応答に移ることになる。誰しもが、注目されていた西川社長の問題については、その日の取締役会では「西川氏が後任の人選を加速するよう要請した」だけで終わり、「西川社長は辞任せず」ということなったと思っただろう。

ところが、そこから、さらに木村氏の発言が続いた。「以上が報告の件でありますが、これを受けましてもう一件皆様にご報告がございます。」と述べ、そこで、木村氏が、1枚の紙を手渡された。

そして、その紙を読み上げる形で、

西川CEOの辞任についてであります。当社日産自動車株式会社は、本日定時取締役会を開催しました。西川廣人氏は代表執行役CEO職を辞任する意向を近時表明していたところでございます。取締役会の議論ののち、取締役会は代表執行役CEO職から9月16日付で辞任することを要請し、西川廣人氏はこれを了承しました。

と述べた。

そして、その「社長辞任」が明らかになった西川氏は、取締役会議長らの会見には同席せず、木村議長らが会見場から退場してしばらく経ってから壇上に現れ、単独で会見を行ったのである。

西川氏の単独記者会見での説明と取締役会側の説明との齟齬

西川氏は、9月16日付けで社長を辞任することを明らかにした後、以下のように述べた。

(ア)社長就任以降、完成検査の問題、ゴーン事件、業績不振、残念ながら過去の膿が噴き出した。本来は、すべてを整理して次の世代にお渡ししたかったが全部やり切れず、負の部分を全部取り去ることができずに道半ばでバトンタッチをすることをお許しいただきたい。

(イ)しかし、定時総会の段階で新たなガバナンスを立ち上げて、新しい取締役会ができて指名委員会等設置会社に移行したことは非常に大きな節目だったし、社内調査が終わって次のステップへ進んだことも大きなステップとなった。ある部分、私が果たすべき宿題は、ある程度道筋をつけられた。

(ウ)業績にしても、おそらくこの第一四半期が底ということで、皆様に申し上げたとおり少しずつ回復する道筋に乗っている。

(エ) SARの件についても調査の結果、私が本来貰う分ではなかった分について返還をすることを申し入れたので、ある意味区切りはついた。

(オ)できる限り速やかに指名委員会で後継体制を作り、どこの段階で私がバトンタッチをするかは、会社の状況、諸々のできごとのなかで判断をすべきだろうと思っていた。今回やや早いタイミングではあるが、ある部分のステップは踏めたと思うので、取締役会の皆さんで議論して頂いて、9月、今月ということで決めて頂いた。

「社長辞任の経緯」についての西川氏の虚偽説明

取締役会の会見の冒頭説明の(6)は「西川社長が指名委員会の検討を加速してほしい旨発言した」ことで、「社長辞任に向けて後任選定が加速」というだけの内容だったが、実際には、それに加えて「西川社長辞任」が決定されていた。木村氏が、(1)~(6)の発表の後に別個に読み上げた発表文では、「取締役会は代表執行役CEO職から9月16日付で辞任することを要請し、西川廣人氏はこれを了承した」と書かれていたが、その後の単独会見では、西川氏は、「やや早いタイミングではあるが、ある部分のステップは踏めたと思うので、取締役会の皆さんで議論して頂いて、9月ということで決めて頂いた」と、説明した。

翌日以降の報道によると。取締役会では、SAR報酬の問題で批判が高まっていることから、西川氏の早期辞任論が噴出したが、西川氏は早期辞任に抵抗し、3時間にわたって議論した上、最終的には西川氏が退席した後に、取締役会が全員一致で、西川氏にただちに辞任することを要請し、西川氏が了承したという経過だったようだ。

「西川社長辞任」が決定されたが、そのことについてどのように説明するかについて、「取締役会の主導性」を示したい取締役会側と自らの判断を強調したい西川社長との立場の違いが、説明の違いにつながったのであろう。

あわせて読みたい

「日産自動車」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ナイキ多様性広告 日本で大反発

    BBCニュース

  2. 2

    行政批判した旭川の病院に疑問点

    中村ゆきつぐ

  3. 3

    扇動行為ない周庭氏を封じた中国

    新潮社フォーサイト

  4. 4

    渡部会見に厳しい声 児嶋も重圧

    女性自身

  5. 5

    秋篠宮さま誕生日に職員2名辞職

    文春オンライン

  6. 6

    欧米との差 医療崩壊は政府次第

    青山まさゆき

  7. 7

    ガソリン車新車販売 禁止へ調整

    ロイター

  8. 8

    「鬼滅の刃」米で成功の可能性は

    田近昌也

  9. 9

    科学軽視の感染症対応変われるか

    岩田健太郎

  10. 10

    竹中氏「菅首相の突破力は見事」

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。