- 2019年09月13日 09:38
「日本一の子育て村」の秘密
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地元には、石見和牛をはじめ、放牧酪農の牛乳、キャビアなどおいしい食材がそろっている。「ここでしか味わえない」食体験を提供すべきだ。カリスマ公務員として知られる寺本英仁がA級グルメの言い出しっぺとなった。本当においしいものは地方にあるという信念に基づいた行動だ。
2011年には町営のイタリア料理のレストランがオープンした。「はやるはずはない」という懸念はすぐに吹き飛んだ。メニューは決して安くはないが、客は絶えない。
レストランが引き付けたのは、観光客だけではない。自ら料理をしたいという若者たちも集った。また、町営の農園も整備され、有機野菜の栽培のノウハウを学べる。さらに、新設された起業家塾では、事業計画のつくり方なども習得できる。自分の店を持ちたいという人には、うってつけの環境の整備だった。

2017年までの3年間で、3000人近くがレストランで働いたり、農業を学んだりした。そして、400人ほどが移住したという。
役場の関係者によれば、A級グルメを銘打つ際には、食材を選ぶ作業が必要にある。おのずと選ばれない食材もある。「この食材が選ばれ、これが選ばれないのはおかしい」などの批判も出たが、町長の石橋良治は、顧客本位に徹した。
今ではA級グルメの店は10軒あり、年間80万人が訪れる。過疎の町が「グルメの町」に変身したのだ。
邑南町は「日本一の子育て村」も標榜している。中学卒業までの子どもの医療費の無料化、2人目からの保育料の無料化、さらに高校・大学進学の奨学金制度といった政策を提示した。こうした政策は今では珍しくないが、いち早く取り組んだことから、成果が表れた。出生率も高水準で推移し、昨年度は2・61だ。30代、40代の子育て世代が次々に移住している。

人口1万人の邑南町。目立った産業もないが、知恵を絞って、政策を打ち出せば、地域は踊る。どんな過疎地もあきらめてはいけない。
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